五年後の吾輩は五十四歳になり、第一子である愛美が二十八歳で末の蓮々が八歳になっている。
しかし吾輩が生きてその日を迎えているかどうかを、もちろん知る術はない。

   生存していたにしろ、どんな生活をしているのか創造もつかない。
大体にして、五年後の自分などというものに興味を持ったことがないのだ。
明日の朝に目が覚めて
「今日も生きているな」
と解ったら、その日一日のことを考えればよいではないか。
   典型的な刹那主義者だが、決して体たらくな生き方だとばかりは思ってもいない。
「今日を愉快に生きよう」
という気持ちだけは日々確認している。



  そんな吾輩がもし……
五年後の自分に取り次げる電話でもあったとしたら、何を言いたくなって何を聞きたいと思うのだろう。
   まずはやはり、まだ生きているのかどうかが知りたい。
そして、生きているのなら
「子供達に迷惑を掛けるような生き方をしてないか」
と、聞くと思う。
それで安心できる返答が貰えたら、吾輩が吾輩にだが
「それは本当に、ありがとう」
やっぱり、そうお礼を言うのでしょうね。

   心の底から……