フクアリでの選手権は1点を争う好ゲーム(その2) | Purely Belter

フクアリでの選手権は1点を争う好ゲーム(その2)

■選手権2連覇を目指す青森山田は2回戦で大勝

青森山田はこれが21年連続23回目の選手権出場。県内では無敵の強さを誇り、今予選の決勝も八戸学院野辺地西高等学校サッカー部相手に11-0と大差をつけての勝利でした。

 

今季も青森山田は安定した強さを見せました。高円宮杯U-18サッカーリーグ プレミアリーグWESTでは3位。最終節に敗れたためリーグ2連覇は逃しましたが、東日本の強豪を相手に素晴らしい戦いを披露しました。インターハイでは3回戦敗退でしたが、冬の選手権では優勝を目指します。

 

昨年の選手権で圧巻の初優勝を飾った青森山田。GK廣末陸選手(FC東京所属)、MF高橋壱晟選手(ジェフ千葉所属)などを擁し、決勝でも前橋育英を5-0と大差で下しました。守備陣は相手の攻撃をしっかりと封じ、1トップにボールを当ててからの攻撃も見事でした。やっているサッカーは比較的シンプルなものでしたが、攻守両面で非常にハイレベルなチームでした。

 

この試合に臨む青森山田のスタメンは以下の通り。GKは坪歩夢、DFは鍵山慶司、蓑田広大、小山内慎一郎、佐藤拓海。MFは檀崎竜孔、堀脩大、田中凌汰、浦川流樺、郷家友太。FWは中村駿太の1トップとなりました。ベンチにはGK飯田雅浩、DF住田将、三國ケネディエブス、MF佐々木友、東城雅也、安藤駿、天笠泰輝、高田怜旺、額川賢哉が入りました。

 

郷家選手はヴィッセル神戸入団が内定している選手。足元の技術のみならずロングスローも武器とします。また、2年生の壇崎選手は、昨年からコンスタントに出場している選手。来年の今頃はJリーグ入りが内定していることでしょう。ベンチに入った三國選手は、昨年の選手権で活躍したDF三国スティビアエブス選手(順天堂大学蹴球部所属)の弟。昨年7月にセンターバックにコンバートされました。

 

■名将が率いる長崎総科大附 目指すは初優勝

長崎総科大附は2年連続5回目の出場。県予選の2回戦では長崎県立国見高等学校サッカー部と対戦し3-1で勝利、新旧の強豪校対決を制しました。決勝戦では長崎日本大学高等学校サッカー部を延長戦の末2-1で下し選手権出場を決めました。

 

高校サッカーで素晴らしい実績を残す小嶺忠敏監督に率いられるチームは、今年も九州で強さを見せつけました。全九州高等学校サッカー競技大会では2回戦敗退でしたが、プリンスリーグ九州ではサガン鳥栖U-18に次ぐ2位。プレミアリーグ参入戦には敗れましたが、強敵相手に勝ち星を重ねました。インターハイはベスト8に進出しており、選手権ではそれ以上の成績を残したいところです。

 

長崎総科大附のスタメンは以下の通り。GKは湊大昂、DFは武井佑介、諸石一砂、嶋中春児、小川貴之。MFは岩本蓮太、別府尊至、田中純平、西原先毅。FWは安藤瑞季と荒木駿太の2トップとなりました。ベンチにはGK甲斐健斗、DF栁谷拓実、柏木澪弥、大切達矢、MF田﨑友佑哉、大津元晴、FW中村聖鷹、竹森海、朴倍漌が入りました。

 

長崎総科大附の注目選手はU-19日本代表にも名を連ねる安藤選手。あらゆる大会でゴールを量産するストライカーは、セレッソ大阪入団が内定しています。しかし、チームは安藤選手のみならず、攻守にタレントが揃っています。登録メンバーには昨年の選手権を経験した選手も多く、特に守備陣は昨年のメンバーが軸となっています。嶋中選手や田中選手は、昨年の選手権でも素晴らしいパフォーマンスを見せました。

 

■エースの一発を守り切った長崎総科大附がベスト8進出

この試合で長崎総科大附は、青森山田のキーマンに密着マークを付けました。郷家選手には嶋中選手が、中村選手には諸石選手が付き、彼らが低めにポジションを取った際は、別府選手や田中選手が最終ラインに下がってカバーに入りました。

 

長崎総科大附は積極的な立ち上がりを見せます。1分には右サイドのロングスローから西原選手がシュートを放つも、これはクロスバー直撃。ゴールはなりませんでしたが、青森山田ゴールを脅かしました。その後も、長崎総科大附は相手に厳しくプレスをかけ、ボールを奪ってからは積極的に前へ出ました。

 

試合が動いたのは25分でした。敵陣左でボールを受けた安藤選手が反転して前を向くと、中へ切れ込んでミドルシュート。地を這うシュートがネットに突き刺さり、長崎総科大附が先制しました。これで勢いがついた長崎総科大附は、さらにギアを上げます。青森山田は、長崎総科大附の厳しいチェックに苦しみ、良い形を作ることができませんでした。

 

後半は青森山田が見せ場を作ります。6分には右サイドのスローインから郷家選手にボールが渡るもシュートを打てず。直後には壇崎選手の左からのクロスに郷家選手が合わせますが、シュートは枠を外れました。決定機を逃しましたが、良い崩しでゴールに迫りました。また、10分には中村選手にシュートシーンがありましたが、枠を捉えることができませんでした。

 

同点ゴールが欲しい青森山田は24分に三國選手を投入。身長195cmの三国選手を前線にターゲットマンとして置き、攻撃の選択肢を増やしました。26分には三國選手に見せ場が訪れます。右サイドからのクロスをヘッド、シュートは素晴らしいコースに飛びましたが、これはGK湊選手がスーパーセーブを見せゴールなりませんでした。ここからは青森山田のペース。ロングボールを主体に、長崎総科大附ゴールに迫りました。

 

セットプレー時には、小山内選手まで攻撃参加し同点ゴールを目指すも、ネットを揺らせず、時間が経過していきます。自陣からロングボールを放り込み、何度もシュートを試みましたが、長崎総科大附の粘り強い守備陣に阻まれました。ロスタイムには中村選手がシュートを放つも枠外。これがラストプレーとなり、試合は0-1で長崎総科大附が勝利しました。連覇を目指した青森山田でしたが、1点が遠くその夢は散ってしまいました。

 

■素晴らしい2チームによる、素晴らしい戦い

選手権の組み合わせが発表された際、3回戦で青森山田と長崎総科大附が対戦することをとても楽しみにしていました。試合は期待通りの素晴らしいゲームで、千葉県まで観戦に行った甲斐がありました。両チームの良さを随所に観ることができ、あっという間の80分でした。

 

長崎総科大附は、青森山田の郷家選手と中村選手にマンマークを付け、相手の攻撃を封じました。前半は見事に策がハマり、田中選手のミドルを除いては殆どピンチがなく、崩されるシーンもありませんでした。前線からしっかりとプレスをかけ、中盤でボールを奪ってからは素早く攻撃に転じていました。安藤選手や荒木選手は、自陣からのクリアボールをしっかりと収め、中盤の選手もトップにボールが入った際は一気にポジションを上げてボールを受けに来ていました。

 

後半、特に試合終盤は青森山田の猛攻を受ける時間が続きましたが、そんな中でも機会があれば一気に敵陣に入る場面もありました。安藤選手はいち早く落下地点に入ってボールを受け、荒木選手、西原選手、岩本選手も安藤選手の近くにポジションを取り攻撃にシフトしていました。彼らが必死にボールを収めたことでクリアが簡単に相手ボールにならなかったため、長崎総科大附は守備陣形を整えて、青森山田の攻撃を待つことができたのでしょう。

 

連覇を目指した青森山田でしたが、ここで敗退となってしまいました。長崎総科大附の厳しい守備に苦しみ、前半は攻め手がない状況でした。後半は敵陣に入るシーンも増え、様々な形で同点ゴールを目指しましたが、1点が遠かった。残念な結果ですが、青森山田はピッチ内外で素晴らしいチームでした。開会式では大声で足並みを揃えて入場行進し、試合中の応援席は素晴らしい雰囲気を作りました。そしてイレブンは気持ちを見せ最後までゴールを目指しました。

 

昨年の選手権から青森山田と長崎総科大附に注目していますが、いずれも本当に良いチームです。両チームは、個人の能力は勿論、チームとしてもしっかりと組織されており、さらにピッチ外での振る舞いも素晴らしい。できればこのカードを決勝で観たかった…というのが率直な感想です。

 

■エースを欠いての戦いとなる準々決勝…インターハイ王者に挑む!!

長崎総科大附は、5日の準々決勝で流経大柏と対戦します。両チームはインターハイで対戦しており、流経大柏が2-1で勝利しています。長崎総科大附にとってはリベンジマッチとなります。

 

長崎総科大附は安藤選手が累積警告により出場停止。ここまで3試合連続ゴール中のエースを欠いての戦いとなります。安藤選手はボールの受け方、シュート、キープどれを取っても素晴らしい技術を持っています。この試合でも見事な反転からゴールを決めましたし、自陣からのボールをキープして攻撃に繋げていました。彼の不在は長崎総科大附にとって大きな痛手です。

 

しかし、長崎総科大附は、安藤選手以外にも素晴らしい選手が揃っています。荒木選手や西原選手も強さと巧さがありますし、代役に入るであろう中村選手も高い決定力を武器とします。プリンスリーグ九州や選手権予選の試合でも貴重な場面でゴールを決めており、出場機会があればチームを救うゴールを決めるでしょう。また、チームとしては、安藤選手が不在であることで、いつも以上に一致団結するはずです。安藤選手の欠場をプラスに捉えたいですね。

 

長崎総科大附の守備陣は非常に堅い。嶋中選手を中心とするバックラインは相手攻撃を跳ね返す力を持っていますし、GK湊選手も抜群の反射神経でピンチを防ぎます。ですが、唯一の懸念材料はGKとDFの連携でしょう。この試合では、青森山田の長いボールに対して、GKとDFがお見合いをしてしまう場面がありました。流経大柏は、DFラインの裏にボールを送り2トップを走らせる攻撃を得意とします。GKに任せるのか、DFがクリアするのか…ハッキリとしたプレーが大切になるでしょう。

 

流経大柏も長崎総科大附も、共に個人・チームの両面においてしっかりとしたチームです。選手たちは足元の技術のみならず、競り合いでの強さもあります。流経大柏はがっしりとした選手が多く、バックにはヘディングの強い選手がいます。一方の長崎総科大附も空中戦での強さが印象的でした。また、両チームとも厳しいプレスをかけてきますから、中盤の攻防にも注目です。最後まで目の離せない好ゲームになるでしょう。

 

王者を下してベスト8に進出した長崎総科大附。次はインターハイ王者と対戦する。

 

 

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