Le Grand Casting [2014] | ビフリュオレ通信<BIFLUORESQUEMENT VOTRE>

Le Grand Casting [2014]

Le Grand Casting [2014, EPM/Chanson Plus 3785727]
CD14

レコーディングの資金をクラウドファンディングで集めてリリースされたこのアルバムは、同タイトルのショウの演目をスタジオ録音したもの。その趣向は、明日のスターを夢見る無名の芸人達のオーディションというもので、メンバー3人が出場者も審査員も演じている。「出場者」1人1人にも,趣向を凝らした名前がついているが、その意味についてはこちらの記事 に少し書いていて、いずれ加筆する予定。また、クラウドファンディングの経緯についてはこちらの記事<1> <2> <3 >をご覧下さい。
01 Je viens twitter ce soir 今夜ツイートするよ
60~70年代の超人気アイドル、クロード・フランソワ Claude FrançoisのJe viens diner ce soir(今夜夕食を食べに行くよ)の替歌。歌うのはクロード・フランソワの大ファン、クロード・ガズー(ミシェル)。ツイッターで世界のトレンドになりたい、と歌う。
02 Grosse chignole de mes amours わが愛の大錐
オペレッタの大スター、ルイス・マリアーノ Luis Marianoの Rossignol de mes amours(我が愛のナイチンゲール)の替歌。歌うのはリュカ・スタフィオール(シルヴァン)。rossignol(ロシニョル=ナイチンゲール)に g をつけて発音すれば、 grosse chignole(グロスシニョル= 大きな錐)に限りなく近くなる。リュカは歌の勉強にかかるお金を稼ぐために、ホームセンターでバイトしていたという設定で、大錐は電気も使わずどんな壁でも穴をあける、と讃える。
03 Jedy Style ジェダイ・スタイル
Psyの「江南スタイル」の替歌。歌うのは宇宙から参加の Marc Vador、英語読みすればマーク・ベイダー(シルヴァン)。『スター・ウォーズ』登場人物の名前がうまく織り込まれていて、ノリがいい。
04 Label Bio オーガニック・チキン
トニー・ベネットやフランク・シナトラの歌で知られる The Good Life の替歌。フランス語版は作曲者サシャ・ディステル Sacha Distel自身の歌う La Belle Vie(ラベルヴィ=美しき人生)で、これをもじって Label Bio(ラベルビオ=有機認証ラベル)。オーガニック・チキンの素晴らしさを讃えるこの歌を、オーディションで歌うフランシス・ナトラ(ミシェル)は農家の生まれで、母親が平飼いの鶏を呼び集める声を聞いて育ち、歌手を目指すようになった。
05 J’aime les Rösti レシュティが好き
本作唯一の完全オリジナル曲。レシュティはハッシュドポテトに似たスイスのジャガイモ料理。歌うのはヨーデルの得意なリュディ・スカウント(ミシェル)。フランスでは国の顔ともいえる大物スター達が、税金対策で次々国外に逃れて社会問題になっており、歌はそれを軽く皮肉っている。逃避先のひとつがスイスで、歌手ジョニー・アリディの例が有名。
06 Carla KIKI la Cocotte 可愛いカーラ・キキ
カ行の入った単語を連発する早口言葉の漫談として有名な作品に、サルジ元大統領と夫人でモデル・歌手のーラ・ブリュニ、所得隠しなどで失職した政治家ジェローム・ユザックなどを登場させた、いわば「替え漫談」。オリジナルはCDリーフレットではPaul Henryとなっている。語るのはカルロ・ブリュノ(グザヴィエ)。
07 Avoir du Sopalin キッチンペーパーがあるならば
1930年代のヒット曲で、映画『恋するシャンソン』でも使われた Avoir un bon copain(よき友がいるならば)の替歌。百歳の誕生パーティーでお婆ちゃんがソースをこぼしても、洗礼の儀式で司祭が赤ん坊を落っことしても、キッチンペーパーがあれば大丈夫。CMソングという設定で、トリオが歌う。
08 Voilà la Voix これが声だ
モーツァルトの「トルコ行進曲」にのせて、審査員の3人が歌う、大切な声のためにすべきこと・してはいけないことの数々。中に政治家やポップシンガー・作曲家の名前も忍ばせてある。
09 La régimelle ダイエット
シンガーソングライター、イヴ・デュテイユ Yves DuteilのTarentelle(タランテラ=南イタリアの伝統的舞曲)の替歌。歌う減量法を考案したトム・ウェットウォッチャー(シルヴァン)が歌う、ダイエットの極意。チョコレートを断り、パーティーは避けましょう。エクササイズを欠かさず、ガゼルの乳や燕の腎臓をとりましょう。でもやり過ぎると倒れて医者にグルメなヴァカンスを処方され、元の木阿弥ですよ。
10 François le Corrézien コレーズ県人フランソワ
アコーディオンによる陽気なフォークダンス曲、Un p’tit gars corrézien(コレーズの男)の替歌。作曲者のひとりジャン・セギュレル Jean Ségurelは、調べてみると仏中部に位置するコレーズ県出身の名アコーディオン奏者・作曲家。コレーズ県出身のフランス大統領フランソワ・オランドに対する失望を、テュル・シンガーズ(トリオ)が歌っている。テュルはコレーズの県庁所在地。
11 Le p’tit chansonnier 無名のシャンソニエ
「真実を最初に語る者は処刑される」と歌うギ・ベアール Guy BéartのLa Vérité(真実)の替歌。べアールは「河は呼んでいる」で知られるシンガーソングライター。オーディションで歌うのは、メディアから無視され続ける社会派シンガー、エドモン・ヴァレリアン(グザヴィエ)とPafの怒れる者達(シルヴァン、ミシェル)。真実を口にするからテレビに出られない、と歌う。
12 Y’a pas d’boulot 職がない
スタンダード曲「ティコ・ティコ」(ゼキーニャ・ジ・アブレウ作曲)のメロディにのせて、セラファン・ドゥドロワ(シルヴァン)が歌う。大学を出ても出なくても、あっちに行ってもこっちに行っても職がない。せめて仕事が見つかった夢でも見て歌おう。
+13~24 Bonus : 全タイトルのインストゥルメンタル・ヴァージョン

本作はショウの性質上、替歌が殆どで、元歌情報など調べるのに時間がかかった。それに加えて、いつも以上に時事的な話題が盛り込まれており、なおかつ「出場者」の名前にまで仕掛けがあり、解読するのに一苦労。けれどおかげで、知らなかった楽曲やネット上の話題なども新たに知ることができた。
いつもなら、曲のつなぎに、いくつかちょっとしたスケッチが入っているが、本作ではそれはなし。その代わりなのかどうか、ボーナストラック全12曲にはびっくりしたが、ジャケットに書いてあるように「シャワーを浴びながら歌」わなくても、単に聴いていて楽しく、気に入っている。
あとは生のステージが一刻も早く見たい。2015年春には何としてでも!