ロベール・フルカド(ブブ)元シャンソン・プリュス・ビフリュオレ… [66号 05.6.15] | ビフリュオレ通信<BIFLUORESQUEMENT VOTRE>

ロベール・フルカド(ブブ)元シャンソン・プリュス・ビフリュオレ… [66号 05.6.15]

…その日はつい空ばかり見上げてた。だって「天に」旅立つ、って言うものだから。白い雲を浮かべた5月の空は穏やかに笑っているかのよう。あの時のあなたのように。
 1996年3月23日、ランブイエ文化センター「ニケロデオン」ホール。見終わったばかりのライヴの興奮と、憧れのアーティストをテーブルひとつ隔てて目の前にした緊張感で、顔を引きつらせながら黙って差し出すしかなかったチケットにペンを走らせた後、あなたはそれを返しながら、まっすぐ目を見てにっと笑ってくれたのだった。何も言わずに、でも何という素敵な微笑み!Merciしか言えなかったけど、きっと気持ちは通じた、そう信じさせてくれるような微笑み。"Amitiés(友情), Boubou" と書いてくれた青い小さな紙片は、もちろん宝物中の宝として大切にしまってあります。そしてあの微笑みも心の中に。あのチケット共々、あれから何度取り出して眺めたことか。
 あなたがシャンソン・プリュス・ビフリュオレを去ると知った時はパニックでした。あなたの低音とブラッサンスマニアぶり、のっぽで縮れっ毛のシルエットなしのシャンソン・プリュスなんて想像できなかった。あの頃のラジオ番組の録音が手元にあります。メンバー脱退という事態にあるのに、このひとたちときたら何て陽気なんだ!冗談まじりの話題がたまたまエリック・カントナ(有名なサッカー選手で俳優)に及んだ時、他のメンバーとアナウンサーが盛り上がっている背後であなたは不意にジャック・ブレルの有名な歌の一節を… "Quand on n'a(カントナ)que l'amour" …思わず吹き出すアナウンサー。トリオとなったシャンソン・プリュスが今やっているギャグ Dis donc toi はきっとこの時生まれたんでしょう?("やあジャック・ブレル、好きなサッカー選手は?" "♪カントナ…") あなたは多分そうやって、いつも少し離れたところから他の3人をじっと見ていて、肝心のところで一言口を開いていたんだろうなあ。
 幸いシャンソン・プリュスはトリオとしての再出発に成功し、私は相変わらず追っかけをしています。一方ソロとして色々な仲間と出会い、毎回違ったことをやりたいと言っていたあなたのニュースは、殆ど入ってこなかった。けどいつかまたあなたの舞台をみる機会があるに違いないと、そしてもしかしたら元の仲間のステージでスペシャルゲストとして、一緒に何か面白いことをやってくれるんじゃないかと、そう信じてた。
 それが叶わなくなったのですね。
 でもまだ実感できない。あまりにも突然で、あなたの年齢からいっても、そんなことは全く予期していなかった。あの日、いつもどおり訪れたシャンソン・プリュスのサイトに、何故か現れたあなたの写真をクリックした時も、あなたの活動について何か伝えてくれるものとばかり思ったのに。
 ブブ、あなたのソロをみに行けなかった。ごめんなさい。でもあの日私にくれた笑顔と、シャンソン・プリュス・ビフリュオレでのあなたのこと、決して忘れない。
                          Amitiés, R***