3. 不意打ち
そんなこんなで、雨の日雪の日風の日以外、ほとんどの昼休みを渋谷くんは屋上で過ごしていた。
私もそれに従うように、雨の日雪の日風の日以外、ほとんどの昼休みを、屋上の扉の前で過ごしていた。
我ながら、気づかれないのってすごいと思ってる。
あ、これ自虐ね。

あっと言う間に、一年は過ぎ。
次の春がまたやって来た。
今度のクラス替えは、三馬鹿くんたちとは離れてしまった。
その時の崖から突き落とされた感はスゴイ。東尋坊レベル。
なんだかんだで、あの三人が教室で絡んでいるのを見るのが大好きだから。
なんか不思議な魅力があるのよ、あの三人には。
あーーー、二年で一緒のクラスじゃないって痛恨の極み。
修学旅行の楽しみが…。
理美とじん子とも、やっぱり別クラスで。
でも部活は毎日あるし、帰りも一緒だから、中学の時と生活リズム変わってない感ある(笑)。
理美はサンチェのしごきを愛ととらえ、メキメキと腕を上げていった。
じん子と私は、その足元にも及ばないけど、球拾い要員からの脱却を図り、部活の方も(!)まあまあ頑張っていた。ちなみにいうと、ここのテニス部めちゃくちゃすごい。来年3年になって、レギュラー取れたら御の字だわっていう状態。
そんなはちこーテニス部に、超大型新人が入部してきた。
松本潤くん、通称マツジュン。
サンチェが中学から目を付けていて、引っ張ってきたとの噂。
通常、2年以降の春に出場する地区大会の一番手を、入学早々かっさらい、しかもストレート勝ちをおさめた。ルックスも良く、マツジュン目当ての見学者が後を絶たない。
ただし、ウルトラスーパーストイックメンなので、やや近寄り難い印象ではある(…いや、だいぶ近寄り難い)。
女テニの方でも、新入部員がたくさん入ってきた。その中でも秀でる存在は、はるはるまんちゃん。走り込みが得意で、もろ後衛タイプな子。最初の乱打ストロークを見ただけでも、理美の後を追う子だなって予感した(上から)。
毎日、毎日。
ボールを追う日々。
♪~~~、♪♪♪~~~
♫~~、♬~~♪~~~
本校舎4階、一番奥の音楽室から聴こえる音。
あー、
青春だーーーーーーーッ!!!!!!!
(但し、自己満100%)
気がつけば、周囲ではカレカノの話ばーっかりになってるけど!
私はこれで満足ナンデス…。
そして、
あっという間に、夏休みになって。
あっという間に、お盆が来て。
渋谷くんの音と歌が、聴けないという状況に、ただただくすぶっていたら、久々中学のメンツで遊びに行かないかと誘いの連絡が入った。
集合はバイパス沿いのボウリング場。
特におしゃれしていく要素のない集まりなので、テキトーな格好で出かけた。

「おー、ウタマロー、久しぶりじゃんか!」
懐かしい面々が次々とやって来て、近況報告に花が咲く。
もちろん、理美じん子もいる(笑)。
グー・チョキ・パーでグループ分けして、ボウリングをやることになった。
靴を借りて、レーンに向かう途中。
自動ドアの先に、まさかの…。
まさかの…。
まーさーかーのー!!!!!!!
渋谷くんがいるんですけどーーーーーーー‼!!!!!!
伸びた髪をポニテ位置で纏めて、アロハシャツ。
ちょ、ちょ、ちょーー、待ってくれ。
(深呼吸)
くっっっっっっっっっそ
カッコよすぎるんですけどーーーーーーー!!!!!!!
(阿鼻叫喚in my Heart)
そして、知らない男の子と一緒に、ボウリング場に入ってきた。
色が黒くて、一言で言って「男前」なコ。誰だろ?
貸靴持ったまま固まってる私に気がついたみたいで、ぱっと視線があった。
ひぃ!
目はあったものの、連れのコと話してるもんだから、私に声かけるとか、そーいうのなくて。
バクバクバク…心臓うるさい!
ひー、こっち来るんですけどー?!
固まってる私に。
何も言わず。
すれ違う。
その瞬間、頭頂部に何かの感触を感じた。
それが、所謂
「頭ポン」
だったなんて信じられます??奥さん!!
あの萌きゅん設定に欠かせない壁ドンと双璧をなす「頭ポン」ですよ?!
し、ん、じ、ら、れ、な、い _(´ཀ`」 ∠)_
しかも!
頭ポンの衝撃から、5秒あと
振り返ってみたら、、、
後ろ手で、バイバイって感じで手を振ってる。
バイバイって、
声に出さないバイバイって…。
こんなにも殺傷能力高いワザだって、初めて知りました。
それも、「後ろ手」っすよ?!
コッチのこと、ノールックなんですよ?!
お客様の中で、お医者様はいらっしゃいませんか?ってアナウンスしてもらいたい、今すぐ。
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「え?すばるくん、あれ誰っすか?知り合い?ツレ?友達?彼女じゃないっすよね???うちの学校のヤツでしたっけ?!
なんか固まってますけど、あの女…。えっていうか、すばるくんって頭ポンとかするタイプでしたっけ???」
(↑ノンブレス)
「、、、りょお〜、オマエ何キョドってねん笑。
ツレ言うか、まー、ツチノコ発見したよーなモンで、物珍しさ、、、やな」
「ツチノコ?!(声裏返る)ツチノコって美術部の大野くん以外にもいるんですか?!うちのガッコ?!」
「、、、まぁな笑」
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そんな会話が男前くんと交わされていた事は、知る余地もなく。
ビリヤードのコーナーに消えていく二人をじっと目で追い続け。
なんでこんなテキトーな格好で来ちゃったんだろう…。
もうボウリングのピンと一緒に、ストライクで散って行きたい…。
渋谷くんの私服。初めて見たよ。
ちょーーーオシャレさん…。
「ウター!何やってんのよー!」
その声でハッと我に帰って、みんなの方に行ったけど、まぁーーー10フレ中8フレがガターで、もちろん最下位。
「なんか、調子悪いみたいで、帰るわ…」
その後のご飯も、断っちゃって。なんだよーみたいになったけど、だめだ。
きょーーーは、もうだめだ。

帰り、夕暮れの道をチャリで走ってたら、涙出てきた。
どおしてなーのー
きょうにかぎってー
やーすい さーんだーるを
はーいーてたー
Yuming先生…天才か。
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