①導入

システムコンポーネントオーディオは、非常に難しいものだと私自身体感しています。

数万円規模のものからウン千万円のオーディオシステムまで、今回ご紹介するSBIRの調整はオーディオの音質のカナメになる所で、これを行うだけで数万円規模や100万円規模のオーディオは100万円規模から数千万円規模のオーディオに引けを取らない音へと変化します。

これは、読者様が実際に行なってそれを現実に体感して貰えるものと私自身感じています。


 SBIRとは

SBIRは、スピーカーから直接来る音と壁・床などで反射して戻る音が干渉し、

特定周波数にディップ(谷)を作る現象です。


主に

  • 床
  • 前壁(スピーカー背面壁)
  • 側壁

の関係性によって発生します。


WindowsやMac OSではSound ID reference RTA(リアルタイムアナライザー)や、システムコンポーネントではdriverack PAなどのユニット型のハードウェアをライン信号に介して、音響調整により帯域特性と位相特性を整えることは可能ですが、根本的な調整にはならない事も多く、やはりスピーカーの設置と部屋の特性を物理的に調整する方法は整った音質を求める上で非常に重要だと私自身体感しています。


③より詳しくSBIRについて


特にSBIRによる影響は低域において重要になります。

例えば、中低域が鳴らないシステム、低域の量感がなぜか出ないシステム、ローエンドの低域が出ないシステムなど、

これらの原因がスピーカー直下の足元対策(スピーカースタンドやインシュレーター、ボード、床の素材)によるものでない場合、SBIRは多くの場合においてこれらの原因となっています。


これは、部屋とスピーカーの設置場所(スピーカーの高さ、部屋の広さ、スピーカーと壁の距離など)によって、部屋の音の位相特性が乱れることによって生じます。



④SBIRの計算式


SBIRの基本式は

f ≒ c / (4d)
(c ≒ 343m/s、d=壁までの距離)で表されます。



例えば

⑴ スピーカーと背面壁の距離が58cmであった場合、

f=343[m/s]  /   (4×58cm)

 =148Hz


となり、この場合、低域の148Hz付近にディップ(帯域の穴となりこの帯域の音が極端に落ち込む)が生じることになります。


⑵スピーカーのウーハーユニットと床との距離(高さ)が

63.5cmであった場合、

f=343 / (4×63.5cm)

 =135Hz

となり、低域135Hzにディップが生じることになります。


⑶部屋の縦長さ(音の進行方向)の長さが439cmの場合、

f = 343 / (4 × 4.39)
  =39Hz

となり、この倍音成分が39Hz×2=78hzと39Hz×3=117Hzです。

⑷部屋の横長さ(音の広がり方向)の長さが394cmの場合、

f=343 / (4×3.94)

=22Hz

となり、この倍音成分がが22Hz×2=44Hz、22Hz×3=66Hzです。


⑤計算からわかること

 ④の⑴から⑷によって、アコースティック環境として音質上重要となるSBIRの順に、

⑴床SBIR  148Hz

⑵スピーカーの背面壁SBIR  135Hz

⑶部屋の縦モードSBIR  39Hz 78Hz 117Hz

⑷部屋の横モードSBIR  22Hz 44Hz 66Hz

となりました。

これらのSBIRは117Hzから148Hzの間においてディップが重なっていることが分かります。(これらは異なる帯域に思えますがディップは実際にはある程度のQ範囲で起きますので実質ディップが複数重なり、この場合、総合的にこの帯域近辺がとても強いディップになってしまいます。)


⑥ディップを埋める方法

ディップを埋める方法は、全く同じ方法でSBIRの原理に基づき調整する事でできます。

具体的には、まず1番重要となる床SBIRから取り掛かります。

先ほどの公式から、

f ≒ c / (4d)

(c ≒ 343m/s、d=壁までの距離)


スピーカーの高さを

  • 63.5cm → 55cmに下げる
    → ディップ約156Hzへ移動
  • 63.5cm → 70cmに上げる
    → 約122Hzへ移動

今回の場合はディップ帯域が117Hzから148Hzなのでこの帯域にディップが被らないようにするためには70cmではいけませんね。55cmに下げることでディップ帯域は156Hzとなり様々なSBIR箇所で重なってしまっているミッドバス帯域のディップを床との関係で動かせます。


⑦まとめ+α


このような手法により、空間のサイズやスピーカーを中心とした様々な距離で生じるディップ帯域をズラし、ディップが重ならないように設定します。


また、ディップ帯域の調整は床→背面壁→縦モード→横モードに重要になってくる事は先に述べましたが、この時スピーカーと背面壁との距離が左右で異なる事は何よりも先に対策するべき事です。例えば5cmズレるだけでも左右で10Hz以上違うディップとなり左右スピーカーの出力が異なる帯域となり低域に重大な悪影響を及ぼします。


まずは、⑴左右スピーカーの背面壁との距離の一致を行ってから⑵床SBIR ⑶背面壁SBIR ⑷縦モードSBIR ⑸横モードSBIRと対策する事が良いでしょう。