-その2-
レストランの中に入ると、ピンクの 可愛い内装が女の子なら誰もが喜び そうだった。
窓際の席に通され、テ-ブルには、 綺麗な赤い薔薇の花束が置いてある 。
「はい。これは、オレから楓にプレ ゼントだ。いつも、おまえの母さん にな、こうやって花束をプレゼント していたんだぜ。」
得意げに虎徹が言うと、楓は両手を 挙げて大喜び。
「うわぁ-。お父さん、ありがとう 。お母さんとロマンチックに過ごし ていたんだねぇ-。」
「ヘヘっ。こう見えてもオレはロマ ンチストなんだ。」
カリ-ナは虎徹の意外な一面を知っ て、嬉しい半面、寂しくもあった。
「虎徹さんは、奥さんを大切にして いたんですね。どんな、馴れ初めだ ったんですか?」
バ-ナビ-が口を開いた途端に、カ リ-ナはビクッと肩を震わせた。
聞きたいような、聞きたくないよう な、複雑な心境だったが、静かに目 を閉じると深呼吸をして、決心を固 める。
きちんと、虎徹の話しを受け止めよ うと思った。
「話してよ。タイガ-。私も聞きた い。楓ちゃんも聞きたいでしょ?」
にっこりと笑ったカリ-ナの顔は、 どことなく寂しそうだった。
「うん。聞きたい。」
楓の凄く嬉しそうな満面な笑みに、 虎徹は優しく微笑み、話しを始めた 。
「オレと嫁さんの友恵が出会ったの は、高校生の頃で、一目アイツを見 た途端に好きになったんだ。長い黒 髪の美人でな、オレにとって、初恋 でよ……。」
目を細めて、遠い昔を愛おしそうに 語る。
楓は、ずっと父の顔を見ながら、真 剣に聞き入っていた。
バ-ナビ-は、優しい眼差しで、黙 ったまま、聞いている。
楓が産まれた時の事。 友恵が亡くなった時の事。
虎徹は時間を忘れ、夢中で話した。
タイガ-と奥さんは、凄く素敵な夫 婦だったのね……。
カリ-ナは、虎徹の言葉を一言も聞 き漏らさないように、ずっと夢中に なっていた。
……タイガ-は、奥さんが初恋で、 それから一途で、今も奥さんを想い 続けているんだ……。
……タイガ-の奥さんへの、想いは 凄く深い。
……ダメかも。
私の想いは、タイガ-へ届かない。
泣きそうな思いを必死に堪え、虎徹 の顔をじっと見ては、深い溜め息を 付いた。
「なんだ?カリ-ナ……ちゃん。や けに今日は元気ないなぁ。どうした ?」
「別に、何も……。」
誰のせいだと思っているのよ?!
本当、一々、腹が立つ!
何で、アイツの為に私がこんなに悩 まなくちゃいけないのよ!!
本人は、凄く鈍感でぶっきらぼうで 、いいとこなんて1つもないのに。
……でも、 ……でも、 ……それでも、 やっぱり……好き。
好きな気持ちは、 どうしようもないんだ。
タイガ-を好きなら、奥さんの事や 楓ちゃんの事を受け止めなくちゃ。
今にも折れそうな心を必死に耐えて いた。
「あ……、これは。」
店内を流れる曲に虎徹は耳を傾けた 。
「何です?虎徹さん。」
バ-ナビ-が不思議がり聞くと、「 うん。この曲な、友恵が好きだった んだ。曲名がいつも思い出せなくて 、友恵に何度も教えられたんだが、 結局、覚えてないんだよ。」
優しい眼差しでそう答えた。
「お母さんの好きな曲だったんだ。 」
楓は、自分の両親の話に涙目になっ ていた。
「何だよ、何だよ、辛気臭いな、オ イ。俺の話を聞いて、おまえは泣い てるのか?楓。」
「泣いてないよ、お父さん。」
楓の頭を撫でながら、思いきり温か い笑顔を見せた虎徹の顔を、眩しそ うにカリ-ナは見つめていた。
[その3へ続く〕