ヨーロッパ地球化学協会誌に月のマグマオーシャンの年齢は44.6億歳であると発表されました。今まで43億歳と言われていましたが、原始地球が出来て直ぐにジャイアントインパクトが起きて月が出来た事になります。
ウラン→鉛年代測定は試料がクラスター化して原子同士が結合していると正確に測定出来ません。そこでアトムプローブトモグラフィー(APT)を使って、試料の原子が均一に分布している事を証明しました。

概要

月のサンプルの結晶化年齢は、月の最小形成年齢とその初期の進化に重大な制約を与えます。アポロ 17 号の月面衝突による融解角礫岩 72255 からのジルコン結晶は、4460 ± 31 Ma という一致する平均ウラン鉛放射年代を持つ古代領域を保存しており (Zhang et al., 2021)、これまで報告されている最古の月ジルコンである。 ウラン-鉛 年代の偏りを引き起こす可能性のある 鉛原子の再分布とクラスター化につながる可能性のあるジルコン中の放射性鉛の移動度を評価するために (Valley et al., 2014)、我々は Zhang et al. のジルコン粒子を調査した。 (2021)アトムプローブトモグラフィー(APT)による。個々の鉱物粒子の原子空間分解能分析は、鉛のナノスケールクラスタリングが存在しないことを実証しており、これは、サンプル 72255 の月のジルコンの古代形成年齢は 4.46 Ga です。この年齢は、最初に保存された月の地殻の年齢を約 4,000 万年遅らせ、太陽系の形成後 1 億 1,000 万年以内の月の最小形成年齢を示しています。


クラスター (英語:cluster) は集合体や塊を指す英語であるが、物質科学においては同種の原子あるいは分子が相互作用によって数個から数十個、もしくはそれ以上の数が結合した物体を指す。それぞれの原子や分子同士を結びつける相互作用は、ファンデルワールス力静電的相互作用水素結合金属結合共有結合などが挙げられている。


紹介

地球 - 月系の形成に関する主要な仮説は、火星サイズの物体が成長中の原始地球に衝突したというジャイアント インパクト仮説 (Cameron and Ward, 1976; Canup, 2004) です。月のマグマオーシャンとして知られる世界的に溶けた月 (LMO; Wood et al., 1970; Warren, 1985)。 LMO モデルは、マントル (玄武岩の源) を形成する高密度の苦鉄質物質、地殻を形成するフェローン斜長岩、および高濃度の不適合元素カリウム、希土類を含む残留液体による、月内部の提案された構造を説明しています。リン (KREEP) が 2 つの元素の間で結晶化します (Warren、1985)。一部の地殻物質(イルメナイトを含む堆積物)とマントル物質との間の密度差により、いわゆるマントル転倒が引き起こされ、マグマが斜長岩地殻に侵入して深成マグネシウムスイート岩を形成することが可能になった(Shearer et al., 2015)。


図1 ジルコン Z14 の二次電子像。 a) SIMS ピットを示す上から見た画像、 b) 55°に傾けた画像。Pt 堆積物を伴うジルコンが浮き上がっているのが示されています。成功した APT 実行のサンプリング位置 (赤色で示される A ~ D) のおおよその位置にラベルが付けられます。スケールバーを示す。


図 2 ナノチップの APT 再構成。 a) 存在する主要なイオン種を、各イオンを個別の点として識別して色分けして示します。b) は 208Pb++のみを赤色で示します。


アトムプローブ・トモグラフィーは、試料の構造および構成元素の原子分解能解析を可能にします。この手法は試料表面から個々の原子をイオンとして取り出し質量分析計で同定します。そのためこの測定の試料は分析用にイオン化しやすい鋭い先端形状になっている必要があります。

優れたAPT試料を得るために、基本となる基準は以下のとおりです。

  • 加工位置精度が要求されるもの、またされない試料の作製機能
  • 試料先端半径が通常50 nm未満のニードル状試料
  • 均一な円形の先端断面により、放射状に対称な電界を形成
  • 十分な電界蒸発現象が発生するように、テーパー角度を修正可能
  • 試料作製中にチップに生じるダメージを最小限に抑制(ニードルの先端領域は、オリジナルの試料の微細構造を代表している必要あり)


ジルコンはウランを含有していますが、鉛を含有していないので、ウラン→鉛年代測定に使われます。ジルコン中の鉛は全てウランが変化した物です。

ウランはベータ線(電子)、アルファ線(ヘリウム原子核)を出しながら鉛に変化し、半減するのに45億年掛かります。