「外旋時の小円筋とテニスサーブについて」という論文を見つけたので、紹介します。

JPTA日本理学療法士協会

【目的】
投球動作やテニスのサーブ動作など,オーバーヘッドスポーツの選手は小円筋にスパズムがある場合が多く,運動痛や内旋制限の原因となっている.小円筋が傷害される理由は未だわかっていない.今回は肩関節最大外旋時に着目して,解剖により最大外旋したときの小円筋の形態変化を調べた.さらに表面筋電図により肩関節外旋時の小円筋活動量とレベルの異なるテニス3選手のサーブ動作における小円筋活動量を調べたので報告する.

【結果】
1)小円筋は末梢で上下2つに分かれており,上部線維は大結節後面へ,下部線維は大結節下端部へ付着していた.2nd外旋から上腕骨を水平内転,外旋,挙上しながらゼロポジションに近づけていくと,小円筋の上部線維は緩んだままだったが,下部線維は伸張された.特に挙上角度を大きくすると伸張度合いが高まった.

2)自動外旋時は水平内転30.2±12.2°,外旋
119.2±11.1°で,小円筋活動は28.8±23.1%であった.脱力外旋では水平内転9.5±8.7°,外旋132.5±6.1°となり,自動外旋より水平内転が有意に小さく,外旋が有意に大きかった.小円筋活動は非常に少なく1.5±0.3%であった.

3)通常サーブと脱力サーブの球速は,S級137.3±0.6km,145.0±3.0km,A級151.0±1.7km,152.7±1.2km,B級152.7±5.5km,136.0±3.0kmであり,S・A級は脱力サーブの方が速かった.通常サーブと脱力サーブのHD期の小円筋活動は,S級18.2±2.5,16.3±0.9%,A級41.4±8.2%,35.1±0.1%,B級99.7±47.4%,54.7±31.6%であった.
【考察】
サーブ動作では体幹の回旋初期にHD期となる.そのとき意識的に肘から先に出すようにすると自動外旋が起こると考えられるが,今回自動外旋では小円筋活動が28.8%あった.小円筋が活動すれば,小円筋下部線維は収縮しながら伸張されることになり傷害される危険性がある.セラバンドによる脱力外旋では小円筋活動はほとんどなく外旋角度も自動外旋より大きかった.したがって,体幹回旋時に小円筋活動がなくてもラケットの慣性により肩は十分外旋すると考えられ,小円筋の脱力は傷害を防ぐこと,球速を上げることの両方に有利である.球速の測定では,通常サーブでB級が最も速かったが,脱力サーブではS・A級は球速が上がり,B級は球速が大きく下がった.これはB級のサーブに手打ちの要素が大きいことを示唆しており,B級の筋活動の大きさからもいえる.脱力サーブで球速が下がる場合は,サーブ動作について小円筋傷害を防ぐために下肢からの運動連鎖を見直すよう指導すべきと考える.

 

つまり、脱力サーブの方がサーブスピードが速いので、私は小円筋は筋トレではなく背泳ぎ体操をしています。