シングルアームパンタグラフの動作が分かる特許6027450号を見つけたので、紹介します。

 図1~図3を参照して、PGは、本実施形態のシングルアーム式パンタグラフである。
シングルアーム式パンタグラフPGは、図外の鉄道車両の屋根上に碍子を介して配置され
る台枠1を備える。台枠1には、下枠21が主軸21aを介して揺動自在に連結されてい
る。下枠21の上端にはヒンジ22を介して上枠23が揺動自在に連結され、これら下枠
21と上枠23とが枠組2を構成する。そして、上枠23により集電舟3が支持されてい
る。上枠23の下端と台枠1との間には釣合ロッド24が連結され、ヒンジ22と集電舟
3との間には、枠組2が昇降するときに集電舟3の水平姿勢を保つ舟支えロッド25が連
結されている。集電舟3としては、公知のものが利用できるため、ここでは詳細な説明を
省略する。(つまり、シングルアームパンタグラフでは靡きバネが必要ない。)

 台枠1には主バネ4が組み込まれ、この主バネ4の圧縮力が主軸21aに外挿固定した
第1のカム部材21bに作用するようになっている。これにより、常時は、主軸21aに
時計周りのトルクが作用して回転することで、枠組2が上昇し、図外の架線に集電舟3が摺接する展開姿勢となる(図1参照)。また、主軸21aに外挿固定した第2のカム部材21cには、エアーシリンダ5の駆動ロッド51が連結されている。これにより、主軸21aに、主バネ4の圧縮力に抗してエアーシリンダ5により反時計周りのトルクを作用させて回転することで、展開姿勢にある枠組2が下降し、集電舟3が図外の架線から離隔した折畳姿勢となる。
 また、台枠1には、枠組2を折畳姿勢に保つ鉤手段6が配置されている。鉤手段6は、
集電舟3に設けた鉤受31に係合可能な鉤部材61と、この鉤部材61が鉤受31に係合
した状態から、時計方向に鉤部材61を揺動させて鉤部材61と鉤受31との係合を解放
する駆動手段62とを備える。駆動手段62としては、空気シリンダや電磁式鉤外し等、
公知のものが利用できるため、ここでは詳細な説明を省略する。
 ここで、降雪時に、枠組2に積雪した状態でも折畳不良が発生し難い構造にシングルア
ーム式パンタグラフPGを構成する必要がある。本実施形態では、図4(a)に示すよう
に、下枠21と上枠23とを断面円形の輪郭を有するものとし、下枠21と上枠23とを
車幅方向にオフセットした状態で下枠21と上枠23とをヒンジ22を介して揺動自在に
連結することとした。そして、下枠21と上枠23との車幅方向の内側端210,230
を上下方向でオーバーラップさせた。この場合、オーバーラップさせる幅Wは、下枠21
及び上枠23の径等に応じて適宜設定することができる。(つまり、最低作用高さと折り畳み高さを低くでき、高尾以西のトンネルを通れる。)
 上記実施形態によれば、降雪時に下枠21の外表面に積雪していても、積雪が、下動す
る上枠23と干渉せず、鉤部材61が係合する位置まで枠組2を確実に下降させることが
できる。その上、上枠21と下枠23との輪郭を断面円形としたため、下枠21の外表面
に着雪する面積が小さくなることで、下枠21と上枠23との内側端210,230を上
下方向でオーバーラップさせていても、積雪が、下動する上枠23と干渉し難くすること
ができる。この場合、枠組2の車幅方向の幅を小さくできるため、設置スペースを小さく
することができ、有利である。


尚、靡きバネが不要な「シングルアームパンタグラフの揚力調整方法」が特許3924660号に載っています。

・下枠(1)長さ=980mm

・上枠(2)長さ=1100mm

・釣り合い棒(3)長さ=1004.5mm

・接合リンク(4)長さ=65mm

・下枠(1)と釣り合い棒(3)の各取付位置の水平方向間隔g=125mm

・下枠(1)の取付位置の車両屋根からの高さh=26mm

以上の説明から明らかなように、本発明は、車両の進行方向を変えたときに、標準作用高さ(5000mm)においてシングルアームパンタグラフに作用する揚力の大きさをほぼ等しく調整することを可能にしたものであるから、異なる走行方向における集電性能を安定させることができる。また走行中、パンタグラフに多少の上下動(4900~5150mm)が生じても、本発明では舟体の移動軌跡を垂直方向に近づけてあるから、揚力の変動幅が非常に小さく抑制され、実用上、悪影響が及ぶおそれがない。


 

中央東線201系の更新用に使われたシングルアームパンタグラフです。◆マークが付いて、高尾以西のトンネルを通れる様になりました。

 

東海道新幹線のN700Sに採用された撓み式集電舟(新幹線用シングルアームパンタグラフの舟支えロッドはパイプ状の上枠の中にある)

車外から電気を取り入れるために必須な屋根上のパンタグラフ。25000Vの交流電流が流れる架線とパンタグラフを接触させて走行しているわけだが、新幹線の場合これを高速下で行わなければならない。しかも、パンタグラフが架線から一瞬離れかけると「アーク」と呼ばれる火花が散ってしまう。

そこで、従来1枚の板状だった「すり板」(架線と接触する部品)を、いくつかのブロックに分け、架線の位置に合わせてたわむ「たわみ式すり板」に改良。これにより、集電性能向上とすり板の長寿命化を図った。また、パンタグラフ自体を支える部品も3本あったものが2本となり、1台のパンタグラフあたり約50㎏の軽量化を実現。

①擦り板が分割されている

②従来は擦り板が一体になっていた


尚、特開平7-336802に中空上枠構造が載っています。

パンタグラフの主枠を構成する平行リンク11において、2本のア-ムの内1本(主枠主ア-ム4)を中空構造にし、他の1本(主枠補助ア-ム5)をその中を通して平行リンク11を構成したシングルア-ムパ ンタグラフである。空気流にさらされるア-ムを1本にすることにより、走行中に発生する空力的騒音を抑制することができる。