ボルスタレス台車用軸はり式軸箱支持装置
軸箱支持装置(特許第 5771107 号)が特許査定されて 2015 年 7 月に登録になったので、簡単に解説をしたいと思います。
最近のJR電車や私鉄電車の多くはJR東日本傘下の総合車両製作所新津事業所で製作されていますが、そこで生産されている車両はボルスタレス台車を履いており、そこに使われている軸はり式軸箱支持装置についての特許です。

軸はり式軸箱支持装置は、ウイングばね式など他の方式の軸箱支持装置に対して、部品点数が少なく軽量であり、かつ組立時の位置決めが容易で摺動箇所もなくメンテナンスが容易であることから、広く使用されるようになっています。
軸はり式の軸箱支持装置は、軸箱と一体になった軸はりを、軸はりゴムと称されるゴムブッシュ及び軸はりゴムに挿通されたピンを介して台車枠に結合して構成されています。軸箱は軸はりゴムのピンを中心として回動することで上下に動くことができ、また、前後左右方向の支持剛性は主に軸はりゴムの特性に依存しています。
鉄道車両の高速化に伴い、直線走行時の走行安定性を確保するためには、軸箱支持装置による輪軸の支持剛性を向上することが好ましいです。しかし、軸箱支持装置の支持剛性を向上すると、曲線走行時における輪軸の鉛直軸回りの回転が困難となって操舵性能が低下し、曲線通過性能が低下してしまいます。そこで、軸はりゴムで軸箱を前後左右方向へ少し動くようにしています。

輪軸の自己操舵機能によって、軸箱側支持部と台車枠支持部との距離は、外軌側では伸び、内軌側では縮むことによって、輪軸の操舵性能を発揮しやすくし、曲線通過性能を向上することができます。
【発明が解決しようとする課題】
従来の軸はり式の軸箱支持装置において、上下、左右、前後方向の支持剛性は各々独立し、特に上下方向の支持剛性は軸ばねに依存しているように考えられている。しかし、台車枠と輪軸が上下方向に相対変位することによって、軸はりの支持部に設けられた軸はりゴムがピッチ方向にねじられ、これが上下支持剛性に影響を与えている。つまり、実際には設計時の想定に対して、これまでの経験からは1.5~2倍程度に上下支持剛性が大きくなっていたと考えられる。軸箱の上下支持剛性が設計時の想定に対して過度に大きいと、軌道の平面変化への追従性が低下し、不要な輪重変動を生じる場合がある。

【課題を解決するための手段】
上述した課題を解決するため、本発明の軸箱支持装置は、輪軸を支持する軸受を有する軸箱を台車枠に対して相対変位可能に支持する軸箱支持装置であって、軌道長手方向にほぼ沿って配置され、一方の端部に前記軸箱が設けられ、他方の端部が前記台車枠に対して揺動可能に連結された軸はりと、前記台車枠と前記軸はりとの連結箇所に設けられた弾性体と、前記軸はりの前記弾性体側の端部と前記台車枠の前記弾性体との連結部との少なくとも一方に設けられ、前記軸箱が前記台車枠に対して上下動する方向の前記軸はりの回動を許容する回動許容機構とを備え、前記弾性体は、実質的に枕木方向にほぼ沿った中心軸を有する円筒状に形成され、前記回動許容機構は、前記弾性体と実質的に同心に配置された転がり軸受を有することを特徴とする。
【発明の効果】
本発明によれば、軸はり支持部に設けられた弾性体の剛性が軸箱の上下支持剛性に与える影響を低減した軸箱支持装置を提供することができる。
【図面】

つまり、軸はり40の端部41にベアリング70を設け、その中に軸はりゴム60を設けることにより、曲線通過性能を向上させたまま、高速で直線走行している時も走行安定性を確保した台車にすることができます。

 

209系用TR249台車の軸はり