22巻の特典DVD、ファティマの声優さんが沢城みゆきさんと知りいつにも増して楽しみが止まらない。
※以下本誌ネタばれですのでご注意願います。
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『目覚めた小吉(おとこ)の
前にいたのは――!』
20年間見続けた夢の先にあったものは、目覚めを願っていた仲間の姿だった。
誰もが生きている事を望み、そして目覚めたことを祝福する。
小吉の存在こそが、彼らにとっての燈火なのだから。
『これまでも、
そして
これからも。
俺たちの艦長は、
小吉(あなた)しか
いないのだから。』
20年という年月は、操るために植え付けられていた菌を取り除くために眠っていた時間ではなく、小吉自身が生きていながら生きていなかったその時間。
小吉は燈が言った『20年』という言葉の意味を理解したのだろう。
理解したからこそ、そして自分が置かれている状況をもまた理解したからこそ尋ねるべき事はあるだろう。
だが、それよりもまず言わなければならないことがある。
自分を助けてくれたことへの礼と、自分から『一本』を取ったことへの惜しみない賛辞。
己が積み重ねてきた鍛錬の上を行く燈の想いを込めた一撃は、あの対峙は小吉の永い夢を終わらせてくれたのだから。
その戦いから4日、小吉が目覚めたのは海老塚が勤務している病院だった。
U-NASA主要6か国の支局及び軍事施設以外で、民間施設でありながらM.O.手術を行える場所。
だからこそ小吉の手術を無事に終えることが出来た。
当然彼女自身が民間人でありながらM.O.手術を成功させることが出来る程の腕を持っているという事、その腕を支えるだけの設備が揃っているのもあるだろう。
これだけの技術と設備があるというのは、当然日本という国において必要性があるからこそのもの。
それは一警護というU-NASAとは切り離された組織がM.O.手術を受けた存在を必要としているからだろう。
そしてそのような設備だからこそ、事情を知る人間には場所を突き止めることが出来た。
イワン・ペレぺルキナという他国の人間にも。
彼の身に、彼が所属していたロシアという国に何があったのかを報告しなければならないことは確かだが、それ以上に駆けつけるべき理由がある。
彼にとって、彼らにとっての「艦長」が生きており、手術中であるというならば駆けつけない訳にはいかない。
ドルヂバーキが小吉を助けた時、例え人類を裏切った身であったとしてもそれでも彼が艦長であったと告げたことを知らないだろう。
それでも助けてくれた。
かつて火星でイワン達が他国を出し抜き、目的のものを手に入れるために本来の計画から逸脱したとしても、最終的には小吉を助けたように。
自分のために、各々が動いてくれたことに素直に、そして穏やかに礼を言う小吉の表情は、燈との戦いを経なければ得られぬものだっただろう。
だからこそドルヂバーキにとってはけじめを付けなけばならない。
既に公的には自分が処分されている身であり、今ここで小吉が火星での裏切りに対して制裁を与えたとしてもニュースになることはなく、その個人的制裁を誰かに咎められることはないだろう。
それでも制裁を与えるなど、殺す事など出来はしない。
自分の命が助けられたからというだけではなく、誰かを殺した者にも、誰かに殺された者にも、テラフォーマーに殺された者にも背負うものがあった。
背負う国が、命令が、実験が、事情が、何より覚悟があった。
そんななか小吉だけが、その全てを束ね、率いる艦長だけが自由だった。
覚悟はあった。
だが、背負うものはエゴともいえるものだったからこそ自由だったのだろう。
そしてその艦長のに彼らは集っている。
誰よりも燈が言うからこそ説得力がある。
火星という地で何よりも、誰よりもサンプルとして扱われ狙われ続け、そして今もなお狙われ続けている燈自身がそう言うのであれば、誰かがこれ以上口を挟む事など出来はしない。
火星から地球に場所を変えたとしても、国も組織も飛び越えるだけの人望を持っているのは小吉だけだというならば、火星でも地球でも共に戦った者が居ないことが逆に重要となる。
ミッシェル・K・デイヴスという存在。
そしてそれは地球における戦士でも同じことだ。
ミッシェルに似ているというサムライソードの存在。
『どこまでも美しく、
何よりつよく――
女剣士(サムライソード)、立つ!』
外見以上に似ているのは、己の目的の為であればその膝は、魂は決して屈することはないその強さ。
・居ない人
ここにいる誰もが小吉の存在を、彼が彼として生きていくことを祝福しているかのようで見ているだけで心が安らぐのも確かで。
ただ慶次くんどこいった。
舐めるように見ても慶次くんが見つからないのだけれど一体どこへ行ったというのか。
沖縄からしばらく行方不明状態なので(アレックスはちゃんと戻ってきているのに)、そのまま鹿児島の基地を監視しているのかもしれないと思いつつもしそうなら西さんとの2度目の共闘が見られるのかもしれないという期待もしているのだけれど実際のところはどうなのだろう。
本当慶次くんがいてくれたら完璧だったのに。
・パーカー姉弟
年齢差には触れないものとする。
いや、アレックスマルコスとナスチャさんがパーカーで揃っているなと。
そして覗き込むナスチャさんの可愛さがもうすぐ三十路とは思えない可愛さで本当もうこの人可愛いズルい困る。
困らない。
あとアレックスがマルコスの頭を撫でている辺り相変わらずのお兄ちゃん気質なのだなと。
もしかしたらセットした髪の毛をどうにかしようとしてるのかもしれないけれど。
・20年
小吉が20年前、アキちゃんを失ってからずっと夢を見ていた。
火星に行ったのもそこが彼にとって聖地だったからであり、更には<祈る者>が彼女の死体を持ち帰ろうとしていたのを見ていたからこそ、都合のいい夢を、ある意味幸せとも言える夢を見ていた。
けれど火星は聖地ではなく、アキちゃんに関しても本当にそれは都合のいい夢に過ぎず。
きっと、いつからか夢は悪夢へと変わっていたのかもしれない。
それでも彼女がいるならば、その夢を見ることで彼女を感じることが出来るのならば、悪夢であっても醒めたくはないと現実も悪い夢であることも全てに目を逸らして、文字通り「都合のいい夢」だけを見て、夢と現の狭間を歩いていたのだろう。
そしてようやく夢から醒めたからこそ、夢の中に居たことを改めて実感する。
・マルコス
本質的には「良い子」なのだろうなとは思うけれど今回は豪快に空回りというか。
ある意味複雑ともいえる目覚めの再会に、少しでも場の空気を和ませようとしたのだろうけれどマルコスが思っているほど複雑でもないというか。
燈と小吉に関しては既に拳で語り合ってたところがあるが、それを知らないマルコスにすれば火星から帰還した際のあの雰囲気を彷彿とさせたのかもしれない。
一生懸命ツッコミを入れたのに自分の存在をスルーされて焦るりつつ無言で訴えるマルコスと、自分に振られたところでどうにもできないからと横を向くアレックスが相変わらずのコンビで安心する。
・御見事
燈が親から受け継いだ特性があってこその勝利だと倒れる前の小吉は言っていたが、それは武術家としては本意ではないという事だろう。
自分自身も武術家というには余りに異形な姿であり、しかもその姿うぃ受け入れ、ものにしていたという立場であったことを考えればその点において2人の立ち位置は対等だった。
だからこそ特性を差し引けばそれは通常の武術家同士の勝負となり、だからこそ燈の勝利であると改めて告げたのだろう。
空手を極め、そして夢の中で生きていたのかもしれずとも、鍛錬を積み重ねていた小吉が『膝丸神眼流の膝丸燈』に参りましたと、あの時一本を取ったのはお前の方だと告げる小吉の穏やかなこの表情。
敗けたからこそ、夢から醒めたからこそできるこの表情。
個人的に武術家としての言葉ではあろうと思うけれど、燈に対して敬語になるのがまた彼の真摯な想いが表れていて胸が詰まるような気持ちになる。
・海老塚病院
U-NASAの管轄外であるにも関わらずM.O.手術が行える場所。
本来であれば極秘のその技術が民間に流出したのは、当然U-NASA内部に流すものがいたという事については地球編が始まった時に言われてはいたけれど、軍隊を持たない日本においても求められていたことには間違いない。
ただ、当然施設や知識があったとしてもそれを実践できる、手術の成功率以前にまず手術を行える腕を持つ医師が必要であることは当然だ。
そしてそれだけの実力を海老塚さんが持っていたのは幸いだったのだろう。
一警護という組織にとっても、風邪村さん個人にとっても。
しかし風邪村さん、入院中に何かこう、嫌な目にでも合ったのだろうか。
コネを繋ごうとする(仕事をしていない)政治家がしょっちゅう部屋に来たとかそういう。
・多分後悔している
華麗にスルーされてしまったというか明らかに空気が読めていなかったことを後悔してアレックスの後ろに隠れるマルコスが可愛い。
・伝えたいこと
再会が終わったらちゃんと伝えて。
ものすごく重要だから。
劉就武のみならずスミレスさんまでがその命を落としたとなれば彼らだけではなく国際的な意味でも大問題だから。
・イワン
M.O.手術を行えるほどの病院であれば当然セキュリティ的にもかなり厳しいだろうし、何よりも小吉がどれほどのVIPであるかという事を考えればかなり厳重な警備をしているのではと思う中、親戚の子供みたいなテンションで病室に入ってくるイワンくんの無敵さよ。
見舞いの品が売店で買ってきた風の飲み物というのも彼らしいというか、最年少キャラを遺憾なく発揮しているのが素晴らしい。
この間まではイワンくんとは呼べないと思っていたのに再びイワンくんに戻って嬉しい限りです。
・そういう国の挨拶
アレックスくんという呼び方に心の中がざわざわする。
というか体育会系男子が全員こういう挨拶をするわけではないと思いたい。
現に本郷さんは加わっていない……けれどもしかしたら誰かに再会したら同じことをするのだろうか。
あまり想像できないけれど。
イワンくんがしっかり足を褒めている辺り、見るべきところがわかっているというか。
ピッチャーは上半身のバネやコントロールの技術も大切だけれど、それを支える下半身が何より大切なので。
・牛肉とライス
確かにタンパク質と炭水化物に帰結するのだろうけれど。
イワンくんの場合はビーフストロガノフにライスを付けてひたすら食べていたのだろうかという少ないロシア料理の知識。
でもビーフストロガノフはどちらかと言えばマッシュポテトを付け合わせにすることが多いらしいのだけれど、結局タンパク質と炭水化物だから結果的には問題ないのか。
それで良いのか。
・ヤンキー
止めなさいそういう頭の悪い挑発をしようとするのは。
火星編の最後で何か通じ合うところがあったのか無駄に息が合っている最年少コンビと一応止めに入るお兄ちゃんなアレックスがそろそろ鉄板というかお疲れ様ですアレックス。
その前にイワンくんの態度に引いてるナスチャさんはとても可愛い(積極的に褒めちぎっていくスタイル)。
・みんな
一番見たかった、穏やかに笑う小吉のこの表情。
燈に負けを告げたあの表情は吹っ切れた感があるけれど、この表情は本当に穏やかで安らかで、きっと夢の中に居たままならば浮かべることはできない表情だったろう。
火星で死にたいと願っていた彼が生きている事に感謝の言葉を述べるこの時の表情は燈達のみならず、今まで小吉を見続けていた読者もまた待ち望んでいた表情だと思う。
生きている事に対して憂う事もなく、それを受け入れ喜ぶことが出来る。
それをどれほど待ち望んだか。
・左腕
火星で失い、アシモフさんの特性を借りることで一時的に再生はしていたものの人為変態を行っていなかったときはあまりにも頼りない細さだったその左腕。
そして燈との戦いで折られはしたものの、まだこうして治療の跡が見えるという事は少なくともまだ日常生活においては使える程度には維持されているという事だろうか。
最もこの場にエヴァが居る事、そして本多博士も海老塚さんもいるとなれば、日本における最先端の医療技術がここに集結しているとも言える。
それは小吉にとって幸いでもあり、小吉だからこそ皆が集ったのだろう。
例え夢現のはざまを生きてきたと本人が言っていたとしても、それでも彼が人を惹き付けるものを持っている、李が言う『ただ居るだけで0+1を100にすることが出来る人間』なればこそ。
海老塚さんはそれを知らずとも、これだけの面子が彼のために集っているところを見たのであれば小吉がどれほど重要な、必要な人物なのかを感じただろうし、それ故にその技術を全て注ぎ込んだのではないだろうか。
0+1を100にもできるというのは、そういう事なのではないかと思う。
あと実際にM.O.手術を成功させることが出来る当人同士、海老塚さんと本多博士の間で技術的な議論が行われたり風邪村さんの現状について何か改善すべき糸口が見つかったりだとかそういう展開の可能性も期待してしまう。
・ギブス
真面目な話の後にあれですが、空手六段うんこ五段って書いたの誰だ。
あとで怒られろ。
・ドルヂバーキ
もうイケメンすぎて辛い。
このあまりに畏まった言葉遣いと、既に自分はモンゴル軍内で処理されている人間だからこそこの場で小吉に復讐という名の制裁を加えられたとて誰に知られることもなく、誰に咎められることもない。
生き残り火星から帰還した時から、そして小吉を助けることになったその時から、この可能性は当然考慮していただろうし、それこそが彼の抱いていた覚悟。
火星で劉さんの想いに従い人類を裏切る覚悟までをも揺らぐことなく抱き続けた覚悟。
・覚悟
火星で起こったこと、己の腕の中で死んだシーラのこと、自分を運ぶためにアスリートとしての足を一部失った者が居たこと、そして知るところで、知らぬところで死んでいった者達のこと。
それでも小吉がバーキさんに制裁を加える事などないだろう。
わかっているのだ。
殺した者も、殺された者も、その背に負うべきものがありその背に追っているからこその覚悟を抱いてあの星に居たことを。
父の仇を取るために、己の信念を裏切らない自由を得るために、かつて愛した人の意志を継ぐために、愛する家族のために、そして何よりも、誰よりも高みへ到達するために。
誰もが想いを背負っていた。
誰もが覚悟を抱いていた。
助けられたから助けるのではない。
彼の、彼らの覚悟に敬意を表したからこそ殺さない。
火星で誰よりも自分の存在を物として、サンプルとして扱われていながら、それでも彼らの覚悟を知っていたからこその燈の言葉。
助けられた時にバーキさんに今更信じる信じないの話ではないと言っていたのも、この考えがあってこそだったのだろう。
赦したわけではない。
忘れたわけでもない。
それでも、人類を裏切る程の覚悟を抱いていた者達が小町小吉というただ一人のために集い、その力になろうとしている。
100人が抱いていた覚悟をまとめる男が誰よりもエゴに満ちた覚悟を抱き、それ故に重荷を背負っては居なかった。
いや、彼にとってアキちゃんの存在が決して軽かったわけではないが、既に居ない人であるからこそ他の者達とは荷物の種類が違っていたのではないかと。
その荷物はどこにもつながっていなかったから。
ただ小吉だけに繋がるべきものだったから。
だからこそ自由だった。
・大事な奴
何故ミッシェルさんがここに居ないのかを小吉は知らないだろう。
一郎がドナテロさんが死んだのは自分の、自分達の裏切りが原因だと告げたこと、そしてそれにより火星そのものがミッシェルさんにとっての仇そのものだと思っていたその人生の全てを覆されてしまったこと。
それ故に今彼女は今揺らいでいる。
彼女自身の戦力も当然重要だろうが、それとは別に国同士ではなく民間企業である一警護とシルバー・ファングス、そして米軍とのつながりを強固にするためにもその存在は重要だろう。
ただ、今の彼女にはこの戦いに向き合うだけの気力が無いのかもしれないと思っていたのだけれどこの目を見ている限りではすでに立ち直りつつあるような気がする。
そうであれば、ようやく全員が揃うことになるのではないかと。
勿論アネックスの面子だけではない、一警護にとっても1人、大切な人間がいない。
燈曰くミッシェルさんにどこか似ている、火星に来る前の彼女の雰囲気をを彷彿とさせるというのはやはりサムライソードさんがミッシェルさんの対になるキャラなのだろうかと想像してみたり。
そういえば以前サムライソードさんについてはマリークレアとの親和性というか血縁なのではという妄想と、ニュートン一族に対する苛烈とも言えるその感情に対してミッシェルさんのスペアとして作られた存在だったのではという妄想をしていたけれど実際のところどの程度関わりがあるのか、それともかかわりなど全くない、独立したキャラクターなのか少し気になるところ。
何となく関わりは無いような気がしてきているなどと。
あの、慶次くんも居ないのでその辺もお願いします(割と気にしている)。
・最低限のコンプライアンス
是非とも鉄拳制裁でも良いので身に付けさせていただきたい。
それが出来たらご褒美に良い腕時計を買ってあげるという事で。
・殺しても立ってくる
小吉に出会うまでのミッシェルさんを燈も加奈子も知らないだろうけれど、その魂が持つ本質が似ている事を見抜いているのだろう。
決して折れる事も屈することもない魂。
たとえその身体に傷を負ったとしても、目的があるのならば魂までは傷付かない。
魂に、その誇りに傷など付けさせない。
強さというには余りに美しく、だからこそ脆さをも兼ね備えているだろう。
それが彼女の本質。
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ちょっと書くのは迷ったんですけど。
燈のしょんぼりな顔が可愛いと思いつつ、個人的には燈というか作中のキャラが胸で人を判別するというか判断するようなキャラにされてしまうのはある意味女性読者からの不評を買う気がしてちょっと心配。
まあ声高に配慮しろ!というつもりでは無いけど、女性読者が少ない事を嘆く(自虐的なネタにしてる一面もあるだろうとは思ってる)のとちょっと相反しているような。
貴家先生自身が女性の胸に対してこだわりがあるのはよくわかっているので今更ではあるし、作品内で既に女性キャラからある種の制裁を受けてはいるからあまり深く突っ込むものでもない気もしますけどね。
というか本当慶次くんどこ行ったの。
どこで迷子になってるの。
個人的に彼は方向音痴な気がしてならない。
これ単行本でそっと書き加えられていたら別の意味でしょんぼりするかもしれないw
本文にも書いたけれど、沖縄からの鹿児島ルートで西さんとの共闘があれば嬉しいとは思うけれどどうだろう。
そして次号は休載。
無理しないで欲しい気持ちの方が多いので、少しずつペースを取り戻して欲しいですな。
よく考えたらバーキさんが銃を持ち込んでいるのも割と問題なのでは?