それは、私の祖父が戦前、小豆島の醤油屋で作り方を学び
その後に小豆島から本州岡山側の玄関口である宇野で
醤油屋を始めたのだ。
戦後は醤油屋から酒類販売の小売店と変わり、
実家を立て直す前までは、座敷の板を外すと
醤油作りの大きな瓶が埋まっていた。
実家は大正時代に祖父が建てた家を増築、改築したもので、
父が継ぎ酒屋をやっていたが、
すでに私の代で、酒屋も閉店してしまった。
さて、瀬戸内国際芸術祭の作品を見に、
小豆島の醤の郷エリアへと車を走らせて来た。
まず、パーキングに車を駐めてすぐに、
島田陽:作「大きな曲面のある小屋」
作品は、、、トイレです。![]()
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そこから路地を歩いて斜面を登って行く。
ある家の前に居たおじさんが、「醤油トマト植えてみた。」
と言って話しかけて来てくれた。
見てみると、醤油トマトと書かれた立て札。
「醤油作りで使ったもろみを肥料にしたら、
美味しいトマトができるかと思って。」
どうやら試作段階らしい。
「へ~。醤油トマトね~。美味しいトマトが出来そうですね~。」
「ここらへんは昔みんな醤油工場やったんよ。」と、おじさん。
(方言はちょっと関西風だけど、私の記憶が曖昧で言い方違うかもしれません。)
「お醤油工場多いんですね~。
こんなにいっぱいあってびっくりしました。
うちのおじいちゃんが小豆島で醤油作りを習って、
岡山で醤油屋やってたんですよ。
戦後はお酒の小売になったんですが、
きっとここらへんで修行したんだと思います。
もう亡くなって50年以上経ちますから、聞くことができず
どこのお醤油屋だったかわからないんですけどね。」
「うちも昔からの醤油屋やったんよ。
18xx年にはやっとったから、おじいさんがおった頃には
ここで醤油作ってたはずやわ。今はもう作ってないけど。」
「どこかでおじさんのお父さんとうちのおじいちゃんは
会ってたかもしれないですね。」
などとお話。
そんな話をしながらなだらかな坂道を登って行くと、
オリーブ畑の中にでっかいリーゼントのモニュメントが。
清水久和:作 <オリーブのリーゼント>
あははは。これがいきなりどーん。
確か初回の瀬戸内国際芸術祭からある象徴的な作品で、
インターネットで何度か見たことのあるものだった。
おじさんが、リーゼントになる?ってまた突然!
何だかわからず「はい!?」
箱に入ったリーゼントを持ってきてくれた。
「以前、子供がかぶってイベントやったやつよ。」
箱のなかには何だかデッカイたわし状の物体が並んでいる。。。
「このゴムを。顎からまわして、、、そうそう、、、」
と、着付けを手伝って頂き、、、
「ここでこの方向、あ、もっと右、ちょっと後ろ」
と、場ミリしてくれ、写真を撮ってくれた。
ゲラゲラ笑いながら、カメラにおさまる。
「ウンコ座りは?」と提案も頂きまして。。。
「こうですか~?!?!」(笑)
この上に次の作品があるからどうぞ。と、おじさん。
そこは、昔の醤油工場を会場にしていた。
どうやら、この会場は
おじさんが持っていた醤油工場を提供したものらしい。
自宅を案内するように、おじさんが引き続き案内をしてくれた。
「ここは、もろみを置いておく倉庫で、
上の方の木が白くなっとるんは菌が着いてなったんや。」
ちょっと上がった所に作品があるから、こっちにどうぞ。」
と、一旦倉庫を出て、裏庭の坂を登る。
「ここはみかんを置いとったところや」
黑﨑香織さんの作品<Follow the rules>が飾られていた。
「若い作家さんで、見ていると真ん中が立体的に見えるやろ。
飛び出したいという気持ち込めて、この絵を書いとるんやて。」
私としては、作品よりも醤油の話の方に興味が湧き、
作品鑑賞は若干おざなりに。。。スミマセン。![]()
「この上に上がって景色見てみて下さい。
なかなかええ景色ですよ。」
ちょっと話し込み過ぎて帰りの時間が気になり始めた。
もっと話を聞きたいと思いつつ、
小高くなった所から見た景色。
黒い瓦屋根が続き、昔もこんなふうに
きっと沢山の醤油工場があったに違いない。
赤穂の塩を作っていた職人が小豆島に塩作りを伝え、
昔は船で色んな物が運ばれて、塩もあちこちに運び出され、
引き換えに、小麦や大豆が運び込まれて、
その後小豆島は醤油を作る工場が沢山できた。
おじさんの説明で、小豆島と醤油作りについて知ることができた。
「ウチは小豆島で佃煮を作った最初の醤油屋やったんやで。」
時間的にもう行かなきゃ船の時間が迫って来ていた。
「これがウチの醤油屋のマーク。」
と言って、醤油工場のロゴマークを指さし、
「ウチは名前に石がつくから、このマークの中に石の字が入っとんや。」
びっくりした。![]()
(私の祖父は石一という名前で、同じ石が付く!!!)
と、思ったのだけど、時間があまりにも迫っていて、
「おじさん、色々ありがとうございました。」
とお礼を言って、急いで駐車場に向かった。
おじさんは真っ黒に焼けた肌に白い歯を見せて、
笑顔で手を振ってくれた。
振り返って見ると、まだ手を降ってくれていたので、
私も大きく手を振り、路地を下っていった。
何だか
おじいちゃんが天から見ていてくれているような気がした。
私が単身一人でNYでマッサージセラピーを学んだように、
おじいちゃんも一人でこの小豆島で醤油作りを学んだんだ。
写真に写るおじいちゃんしか知らないけれど、
ここに来て、とても近くに感じることができた。
私はおじいちゃんの血を引いているんだな~って思った。
また小豆島に来よう。![]()
瀬戸内国際芸術祭 http://setouchi-artfest.jp/
春(3月20日~4月17日/終了)
夏(7月18日~9月4日)、秋(10月8日~11月6日)






