風邪をひいてしまいました。38℃台後半の熱が2日前から始まり、最初の1日目はとても辛かったです。


咽頭痛と関節痛、倦怠感、食欲不振があり、リンパ節も腫れていないし、咽頭所見も軽微だからウイルス性咽頭炎と診断して解熱剤も内服しないでいました。


最近はずっと風邪などひいたことがなく、ひいたとしても自然に良くなるケースがほとんどでしたが、今回は別でした。


高熱と関節痛のためにうなされて眠れず、解熱薬を使用してようやく眠りにつくことができました


以前にブログ内で『発熱と解熱薬』についてお話させて頂きましたね。今回のように発熱のためにぐったりしている、熱のせいで症状が出ている場合は解熱薬を使用したほうが良いと自分の経験で理解できました。


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研修医の先生は咽頭炎の患者さんを診察した際には『centor criteria』を覚えておくと良いでしょう。


咽頭炎の患者さんのそのほとんどはウイルス感染によるもので、細菌感染は10-15%程度と言われています。抗生剤の不必要な投与をさけるための基準がcentor criteriaです。


特にこの基準が重要な理由の一つとして次の事が挙げられます。咽頭炎での起炎菌で最も多いのはグループA連鎖球菌(group A streptococcus:GAS)です。


他に咽頭炎の起炎菌にはどのようなものがあるでしょうか?



救急医の挑戦 in 宮崎
(急性咽頭炎の起炎菌)


口腔内の嫌気性菌であるFusobacterium属はβラクタマーゼを産生しLemierre's syndrome扁桃周囲膿瘍の起炎菌になります。→GASと思って治療しても軽快しない場合には、こうした起炎菌を想定することも大切です。


嫌気性感染症』について

http://ameblo.jp/bfgkh628/entry-11459975515.html


GAS咽頭炎は実は放置しておいても数日で自然軽快(self-limited)するのですが、それでも長く持続する場合にウイルス性咽頭炎もしくは扁桃周囲膿瘍を形成していないかを確認する必要があります。


抗生剤を内服すると臨床症状は1-2日で軽快することが多いですが、それで抗生剤を中断しないようにしましょう。リウマチ熱や糸球体腎炎を起こす可能性もあり、抗生剤の投与期間はペニシリン系抗生剤の10日間が推奨されています。


糸球体腎炎は抗生剤投与でも予防できないと言われています


しかしながら何故10日間なのでしょうか?

おそらくリウマチ熱の予防のためにペニシリン10日間はしっかり抗生剤を投与して菌を完全にいない状態(根絶)にしようという事なのでしょう。しかしながら例え、10日間きちんと内服したとしても15%程度の症例で菌が残存し、再発の原因となるとも言われています。


ある報告でセフェム5日間でも培養陰性となると聞いたことがあります。培養陰性=菌がいないではないです。培養はあくまで優位な菌を繁殖させているだけですから、陰性といっても菌がいないことにはなりません。しかしながら再発率も5日間の3世代であるセフゾン投与にて7%程度の再発率(旧世代は14%)に減少すると言われています。 http://www.medicalnewstoday.com/releases/35136.php


原文を読んだ訳ではないので、比較したアモキシシリンやペニシリンの投与量や投与期間は分かりません。3世代セフェムはbioavailabilityが低いとか言われていましたが、旧世代よりも成績はいいようです。


青木先生の本でもセフゾンであれば5日間投与と記載してありますね。(それでも青木先生はペニシリンを第一選択にすると記載があります。セフゾンでは広域だからです。)



※米国感染症学会のGAS咽頭炎のガイドライン(2012)

http://www.uphs.upenn.edu/bugdrug/antibiotic_manual/grpastrepidsa.pdf


現時点ではセフェム5日間を推奨するだけのエビデンスは十分でないとしています(10日間を推奨)また、アモキシシリンは(50mg/kg max:1000mg)を1回/日×10日でもいいようですね。


※GASがキャリアなのか活動性をもっているのかの判断はなかなか困難で抗体価の上昇をみて確認することもあります。GAS再燃再発の場合(慢性)はペニシリンで根絶できないため、クリンダマイシンなどの異なった治療レジメがありますのでご確認を。



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さて、『centor criteria』ですが、


以下の項目をそれぞれ1点としてカウントします。


  1. 38℃以上の発熱  
  2. 咳がないこと
  3. 扁桃腺の部分が白くなっている(滲出性扁桃炎、白苔の付着)  
  4. 圧痛を伴う前頚部(首の筋肉の前方)のリンパ節の腫れ
  • 0-1点:溶連菌感染症の可能性は低い。→抗生剤は処方しない
  • 2-3点:溶連菌迅速抗原検査を行って判断する。
  • 4点:40%以上の可能性があるので、抗菌薬の投与を考慮する。
  • なお、年齢を考慮して、15歳以下はプラス1点、45歳以上はマイナス1点でカウントすることを推奨している文献もある。

伝染性単核球症の患者にアモキシシリンを投与すると皮疹が出現する可能性が高いこともお忘れなく。

溶連菌迅速検査の特異度は95%程度と言われているが、感度は80%程度です。

咽頭培養に関してはキャリアの関係で偽陽性が問題となることがある(小児では10%程度でキャリア

 

 以上。