運良く誰にも出会さずに冬木大橋を渡って新都に入り、目指す市民公園まで着いたところで、ウェイバーは奥にある小綺麗な近代建築を指さした。
「本なら、あそこにいくらでもある――と、思う」
 すると、ウェイバーにのしかかっていた圧力がふわりと遠のいた。どうやらライダーは霊体のまま建物の中へと入っていったらしい。
 ――そうして、ひとり取り残されて待つこと三〇分あまり。訳の解らない脅威から解放されたウェイバーは、ようやく冷静に考えを整理する猶予を得た。
「……どうして、こうなる?」
 さっきまでの自分の醜態を思い返して、ウェイバーは頭を抱えた。いかに強力な存在であろうともサーヴァントは彼の契約者。主導権はマスターであるウェイバーこそが握っている。

「な、なにこれ」
 遠子先輩が目を丸くする。
「あら、お帰りなさい、遠子、心葉くん」
「一体、なにがはじまるの?」
「屋敷を壊すのに、準備や見積もりが必要でしょう?」
 麻貴先輩がけろりと答える。遠子先輩は焦って叫ぶ。
「ええっ、開発は、住民の反対運動で中止になったんじゃないの?」
「工場を建てるのはね。けど、個人の屋敷を処分するのはこちらの勝手でしょ? いるのかいないのかわからない白雪に、いつまでもびくびくするなんてバカバカしいわ。ぱーっと壊して、祟りなんかないって証明するのよ」
「そんな……っ、もし祟りが起こったらどうするの?」
「あら、遠子は祟りも幽霊も信じないんじゃなかったの?」