昨日の続きです
1925年の展示会のポスター
1920年代のドイツでは
ダダの社会権力への批判精神を受け継いだ
新即物主義(ノイエ・ザハリヒカイト)
の作家たちが精力的に活動します
新即物主義とは
第一次世界大戦で
敗戦国となったドイツで起こったもので
インフレや労働争議など
社会的な現実を告発して
人間の不安や孤独を
客観的に表現した絵画傾向のこと
写実的 具象的に表現され
過激な人物描写が見られます
作品はこちらで確認を
《技師(ハートフィールド)》
1920年 水彩・インク・鉛筆・コラージュ・紙
ニューヨーク近代美術館
ドイツ出身で
20世紀最大の風刺画家といわれます
荒れた現実を直視し暴く意図から
人物をコミカルで醜悪にデフォルメして
戯画的な作品を描いています
1932年ナチス台頭を受けてアメリカへ亡命
6年後に帰化しています
他の作品はこちらで
その他 新即物主義の作家として
マックス・ベックマン(1884-1950)
退廃的な都市生活を描いています
《キリストと罪人》 1917年
オットー・ディックス(1891-1969)
生々しい形態の人物描写
展覧会プログラムの表紙 1937年
Otto Freundlich, CC BY-SA 4.0 , via Wikimedia Commons
1930年代に台頭してきたナチスは
当時のあらゆるアバンギャルド芸術を
排除しようとしました
新即物主義の動向も
キルヒナーらの表現主義も
カンディンスキーの抽象絵画も
シャガール(ユダヤ人)らによる芸術も
美術学校のバウハウスも…
古典芸術の秩序を絶対とするナチスによって
すべて抑圧されていきます
ナチスは各地の美術館から
彼らの作品を没収
1937~1941年にかけて
「頽廃芸術展」として各地を巡回し
観客に前衛美術の劣等性や頽廃性を
植え付けようとしました
第二次世界大戦の末期に
ナチスが倒れるまで
ドイツではこれらの芸術家たちが
自由に制作することはできませんでした
1938年 ミュンヘンで開催された退廃芸術展を訪問するゲッベルス宣伝相
Bundesarchiv、Bild 183-H02648 / CC BY-SA 3.0 DE, CC BY-SA 3.0 DE , via Wikimedia Commons
https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/9/90/Ausstellung_entartete_kunst_1937.jpg
左側にエミール・ノルデの作品
ノルデは1052点の作品を押収され
制作まで禁じられています
右側はゲルハルト・マルクスの彫刻
表現を奪われた芸術家たち…
苦しいですね…
出題:美術検定2級問題集ー応用編:アートの知見を広げる 美術出版社 2019
参考図書
改訂版 西洋・日本美術史の基本 美術検定1・2・3級公式テキスト (株)美術出版社 2019
続 西洋・日本美術史の基本 美術出版社 2018
増補新装 カラー版 西洋美術史 美術出版社 2021
芸術教養シリーズ7 欧米のモダニズムとその後の運動 近現代の芸術史 造形篇I 林洋子編 幻冬舎 2013