宮崎県高千穂町には興味深い神社が多くありますが、時間の制約があり、全てをお参りすることができません。ただ、荒立神社には是非行ってみたいと思っていました。
荒立神社の御祭神は、猿田彦命と天細女命(あめのうずめのみこと)のご夫婦です。
この両神は、三重県の椿大神社と、同じ境内にある別宮の椿岸神社にも祀られていますね。
天細女命は瓊瓊杵尊の天孫降臨の際に随行員と参加しますが、途中で、道案内を買って出た神様が現われます。そのときに天細女命が「Who are you?」と問うた相手が猿田彦命で、これが両神の馴れ初めになります。
天照大神が天岩戸にお隠れになった時に、困り果てた八百万の神々は合議をした結果、一計を案じ、宴会を行うことにします。そこで、天細女命が乳房をあらわにした、ほとんど全裸に近い姿でエロチックな踊りを舞います。宴会はそれで大いに盛り上がるのですが、不審に思った天照大神が、ちょっと外の様子を覗いた瞬間に、天手力男命(あめのたぢからおのみこと)が引き連れ出しに成功し、世の中に光が戻ります。
天細女命の踊りが作戦遂行のうえでキーとなったわけで、現在でも「芸能」の神様として広く崇拝されています。
ところで、「全裸に近い姿」で踊ったと古事記にわざわざ記載されている理由は何だろうと以前から興味がありました。
天細女命は巫女だと思われています。巫女には、ときに神様が乗り移りトランス状態となります。神をその身に宿すこの「託宣」というのは、「性交」を含んだものではないかという説があります。
天照大神が岩戸の外の様子を覗うときに、天細女命は「あなたより尊い神が生まれた」と言うのですが、もしかしたらその辺りが関係しているかもしれません。
実はギリシャ神話にも似たような話しがあります。
豊穣の神様であるデルメルは、娘のベルセポネが冥界の王であるハデスにさらわれたことに失望し、神界を捨て神殿に引きこもるようになります。そうなると、作物が育ちません。
ある時、バウボという女性が、デルメルが悲しみのあまり何も口にしない姿を見ると、何を考えたか、衣をまくりあげて性器をデルメルに見せつけます。すると、デルメルは思わず失笑し、ついに断食をやめさせることができたという話しです。
以前、TBSラジオ「大沢悠里のゆうゆうワイド」という番組のなかで「お色気大賞」というコーナーがありました。
エロチックな内容の投稿を面白おかしくアレンジしたもので、その卑猥さに批判もありました。しかし、リスナーで真剣に自殺を考えていた人が、たまたまこのコーナーを聴いて、あまりの馬鹿馬鹿しさに笑ってしまい、自殺を諦めたということがあったらしいです。
天照大神もデルメルも一種の鬱状態にあったと思うのですが、エロはときにこれを打破する原動力になり得るということではないでしょうか?
高千穂町には、ちょっと薄暗い感じの神社が多いのですが、この荒立神社には他とは違う明るい雰囲気があります。
境内に吊り下げられている板木を7回叩くと、いろんなご利益を授かることができるそうです。



