大切なもの | Between The Sheets ~夢への抒情詩~

Between The Sheets ~夢への抒情詩~

寝る前にちょこっと読んでほしい、素敵な物語をあなたにお贈りします。

 「あれ、サザンのライブ録画したテープ、どこやったっけ?」
 ダビングしたビデオテープの列をかき分けながら、俺は彼女に尋ねる。
 探しているテープは数ヶ月前にとったもの。いつか見ようと思いながら、なかなか見る機会がなかった一本だ。
 ふと、今日見ようと思いついて、わざわざレモンを絞ったコーラを用意してからテレビの前に腰を下ろしたのに。

 「ああ、あれ? いつまで経っても見ないから、上から映画をダビングしちゃった」
 「え! 何でだよ?」
 とんでもないことをしらっと言ってしまう彼女。俺は思わず目をむいて、彼女に向き直る。
 キャミソールと短パンというきわめてラフな格好で、椅子の上で体操座りをして、プリンを食べながらファッション雑誌を見ている。
 「だって、他に使えるテープがなかったんだもん」

 ウソだろぉ・・・。
 そう呟いたけど、彼女の耳には届かない。
 「何の映画とったんだよ?」
 「ローマの休日」
 そんなのビデオ屋でレンタルしろよ。
 ・・・と言いたいところだけど、言葉にならなかった。


 

 彼女は徹底した合理主義だ。
 使わないものは持たない。使わないものは買わない。使わないものは捨てる。
 だから、いつか見るだろうというビデオテープなんて、金を出して買ったものじゃなければあっさりと別のことに使用する。
 それは彼女の美点でもあるけれど、時々、こういう困ったことになるんだよな。




 「ねえ」
 がっくりきている俺の背中に、彼女の声が届く。
 「何・・・?」
 「サザンじゃないけど、今度、アルフィーがライブに来るって。行かない? あたしがチケット取るから」
 スプーンを唇に当てて、彼女は笑う。

 「・・・いいよ」