そらで言える、言い立ては凄い? | きるろいの快刀乱麻

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温故知新 

主に近世日本と落語ネタを綴っていくことを目標にして開設。最近は食いもん系が多いです。2024年はちょっと慎重に動きます(`_´)ゞ

年末年始にテレビ番組📺の録画を取り溜めておいたもの。少しずつ見ている。三連休でやっと笑点正月🎍特番を見終えた。


そんな中、特によく観る旅番組や地域情報系の番組にテレ東の夕方の番組『よじごじDays』で江戸情緒が残る街、浅草と日本橋散歩🚶‍♂️の放送があった。


レポーターはコメディアンの渡辺正行氏と、ナビゲート役に江戸文化に造詣が深くYouTubeでもその方面の発信をしているタレントの堀口茉純さん。

途中、日本橋で元文年間に創業されたという店の前を通った時、それってどのくらい前なの?


という渡辺さんに対し、なんと江戸時代の元号を最初から数えながら確認し始めたのだポーン

凄〜いびっくり元号を数え始めたよ。なんでも江戸時代の元号はすべて暗記しているとか。


後で確認したら慶長(1596-1615)〜慶応(1865-1868)まで36あったよ。凄い‼️おいらなんて徳川歴代将軍の名を言えるくらいだ。つまりせいぜい15人。元号はその倍以上だアセアセ


尤も戦前は教育勅語の一部と歴代天皇を全部暗記させられたらしいので私の父母はソラでそれらを言えた。呪文みたいなものだとも。意味もわからず、おそらく多くはそれらの字を正確に書けなかったろう。


私だって「神武・綏靖・安寧・懿徳・孝昭・孝安・孝霊・孝元・開化・崇神・垂仁・景行・成務・仲哀・応神・仁徳」くらいまでは言える。あ、やっぱり十数人だね汗笑い泣き

でも、あれれ!?ショック

最後が腰砕けだった。それはいつの頃か渡辺氏に聞かれて元文年間(1736 - 1741)が「江戸時代の前期」とはてへぺろ

江戸264年のうち、開府から130年も経っている。前半と後半に分けるなら、確かに前半ではあるかも知れない。


しかし一般的に前期と後期に分けるだろうか。八代将軍吉宗が改革を始めたとされる享保よりも後なんだから、前期とは言わないでしょう。表現としては「中期」が正しいでしょうね。事実、吉宗は「幕府中興の祖」なんても言われますよね。


凄いのか、そうでないのか。この方はディテールにお詳しいかも知れない。しかし、江戸時代を大局的に見てないのが残念。


ええと、ここからが本筋なのですが。

暗記もの、スラスラ言えることは言語学的には高度ではないとされています。チンパンジーでも発話は訓練次第で出来るらしい。但し質問などは出来ない。


私の好きな落語では、前座噺に「言い立て」と称する長いセリフ(といってもただソラで何かをベラベラ喋るだけなのですが)がよく出て来ます。『寿限無』がその代表ですかね。


こういう暗記ものをスラスラと演ると前座でもお客さんから拍手喝采を受けることがある。まるで講談師が長いセリフを一気に言い終わった時のように。


それに対して知り合いの真打の落語家さんが、

『ああいうのは別段高度でもないし、ああいうので前座をあんまり称賛するのも勘違いさせてしまうから困るんだよね〜😷』

と言っていました。


なんとなく言ってる事は分かるような気がします。前座噺で『寿限無』『たらちね』『金明竹』など言い立てが多いのは単純に口慣らしを徹底的にやるためであるらしい。噺家第一歩としては必ず通る道だが、それがスラスラと出来るようになると逆に自信にも繋がる。


まったく意味のない事ではないけれど、セリフをスラスラ誦じるだけでは人に響かない。前座はやっぱり真打の芸とは違う。


よく前座が演るような噺は「前座噺」といってつまらない噺だよ、という人がいる。しかし同じ前座噺でも前座が演るのと、上手い人が演るのとでは大違いだ。例えば柳家さん喬師匠の演る『道灌』を観たことがある。それはそれは全然違ったものでしたよ。照れ