おふたり様のお通りだい−関所手形 | きるろいの快刀乱麻を断つ

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温故知新 

主に近世日本と落語ネタを綴っていくことを目標にして開設。最近は食いもん系が多いです。2024年はちょっと慎重に動きます(`_´)ゞ

『きるろいの古文書入門』第十七回

今回も近世史料からです。
差上申一札之事

一、 此弐人江戸より野州芳賀郡

小貫村迄 罷越候間 御関所

無相違御通可被下候 為後日 依

如件

天明八申年四月四日
湯嶋天神門前町  
家持  各右衛門 (印)

関宿 御関所
御番衆中様

(読みくだし)

差上げ申す一札の事

この二人、江戸より野州芳賀郡
小貫村まで罷(まか)り越しそうろう間 御関所  
相違無くお通し下さる可(べく)そうろう
後日の為、依って件(くだん)のごとし

【解説】関所手形と言ってよいのでしょうか。
「此の二人」
で、済んじゃうんですねびっくり
途中、人が入れ替わってもいいの!?

野州は、芳賀郡とありますので下野の国(今の栃木県)です。「野」のつく国はお隣り「上野(こうづけ)の国」今の群馬県もありますが、あちらは「上州」ですね。なぜか下野(しもつけ)を「下州」とは言いません。

また、関西の方は滋賀県野州(やす)と思われるかも知れませんね。しかし上記の理由で下野の国と判断できます。

「依如件」よって件の如しの「依」は
人偏に「乃」ですが私のiPad のキーボード入力で変換出来ませんでしたてへぺろ

「家持」は江戸ならほぼ間違いなく大家さんのことと思ってよいでしょう。

「関宿」も馴染みのない方は東海道五拾三次の内、関宿「せきじゅく(現在の三重県)」と思われるかも知れません。これは下総国の「せきやど」です。私は現在、たまたま昔の下総国に当たる地域に住んでいるため分かりました。地名はある程度土地勘がないと読めないですね。

現在では合併して千葉県野田市の一部になってしまいましたが、近世に於いては重要な交通の要所でした。これについてはまたの機会に書きたいと思います。