私は仕事帰りなどの際、民家の窓から漏れる光に癒されます。
~あの灯りの下に家族がいて、ご飯を食べたりテレビを見たりして生活してるんだなぁ~ と
本当に、灯り一つ一つが愛おしくて愛おしくて・・・
1988年、山下達郎氏が9作目のアルバムを発売しました。
「僕の中の少年」というタイトルでした。
そのころ「週刊FM」「FMFan」などFMを冠した雑誌が数誌発売されていて、ミュージシャンはアルバムを発表するとこれらの雑誌にインタビュー記事が掲載されるのです。今で言うテレビの番宣のようなものです。
ファンである私は、山下達郎の記事が載っている雑誌を書店で手に取り読みました。
その中の1曲に「蒼氓」という曲があります。蒼氓とは無名の民のことだそうです。つまり私のような普通の人間のことを歌ったものです。
私は生来の音楽好き。そういう人間は一度は音楽で身を立てたい、音楽で世に出たいと思うものです。私もそうでした。
しかし好きなだけでは音楽で生活していけない。才能も当然ながら氏の何十分の一だろう。でもそれらは言い訳で、ガッツがなかっただけでした。
そうして人は名もない普通の人になります。
そんな人のことを暖かな目線で歌っているのです、この曲は。
私は好きなアーティストから図星を食らい、かつ市井の一人として陽を当ててもらった感謝とのないまぜな気持ちで、雑誌を持ったまま立ち尽くしていました。