魔裟斗vs佐藤嘉洋戦の試合後のパーティーで業界のお偉い方が堂々とみんなの前で 「あれで佐藤が勝っていたらK-1は潰れていた」 と言ったらしい。 …どっちにしろTVはなくなったし、潰れかけているじゃねえか。酷い言い方。選手への愛がない。
私もその試合後のパーティーには大会スポンサーさんへの感謝も込めて怪我を押して参加していた。 業界のお偉い方達からは口々に 「物凄い試合をありがとう」 と言われた。 でもその言葉の最後には僕には聞こえないようにみんな心で口々に呟いていたわけだ。 (でも負けてくれてありがとう)
ちなみに魔裟斗戦の翌日、渋谷のスクランブル交差点にわざと立たされて、私に気付く人が何人か数えられていたのを告白しよう。 そして「魔裟斗やKIDなら人だかりができる。これが今のあなたの現実だ。あなたにはスター性がない。もっとスター性を身につけろ」 と言われた。
試合のことも 「相手は魔裟斗だから仕方ないんだよ。彼はスターだから。君はスターじゃない。」 と言われた。 自尊心は著しく傷つけられたが、これも叱咤激励と思い、心に留めておいたが…パーティーであんなことを言われているとはね。 あまり人には言わなかったけど、ついポロリと呟いてみる。
しかし、その後与えられた大事な試合(キシェンコ戦、ドラゴ1戦目)で負けているのも事実。 それが自分の弱さである。 スターはそこでキッチリ勝てるからスターなのだ。 私の人生の山は今のところ2008年が頂上で、選手としてはそこから転げ落ちている。
正直なこと言うと、あの日自分の人生は狂わされたと思っている。 だけど 周りが仕方ない、仕方ない、と言うから、自分で自分を納得させるしかなかったんだ。 ある記者は「魔裟斗は本当に苦労して来たんだから仕方ない」と言った。 じゃあアンタは俺の本当の気持ちを理解できるのかと言いたかった。
試合翌日は試合を観に来てくれた友人宅に泊まった。 友人は判定に大変怒っていた。大変…怒っていた。 私は 「俺が悪かった。俺が悪かったんだ。俺が弱かっただけなんだ」 となだめた。 3年以上経ったが改めて君に伝えよう。 「茂樹、俺は何も悪くなかったし、あの日の俺は人生で一番強かった」
(実業家として走り始めた有名格闘家のつぶやきより)