LEXUS RZ350eで真夏の佐野1泊旅行へ。BEVは旅行でも普通に使えるのか?
LEXUS RZ350eの長期試乗もいよいよ終盤。
これまで早朝の秩父ドライブや都内一般道、さらに50kW急速充電器での充電性能などを試した。今回は関東圏内での旅行で使用してみた。
目的地は栃木県佐野市。大人3人での1泊旅行。
単純に高速道路を往復するだけではなく、佐野を拠点に出流山方面や栃木市、小山まで移動。さらに帰路は高速道路の渋滞を避け、一般道で東京まで戻るルートを取った。
結果として、RZ350eで行うロングツーリングの実力をかなり確認できるドライブになった。
1日目 都内から栃木へ
都内を朝6時ごろ出発。大きな混雑はなく、外環道経由で東北自動車道で館林ICをめざした。そこから、渡良瀬遊水地、小山駅、出流山満願寺へ回り、佐野で宿泊した。
高速道路での電費が優秀
まずは、羽生PAまでの区間で、時速80kmから100km程度の速度域による電費の違いを見てみることにした。
高速道路では、速度を上げるほど空気抵抗が大きくなる。空気抵抗は速度にほぼ比例して増えるのではなく、おおむね速度の2乗に近い割合で増加する。つまり、時速50kmと100kmでは、速度は2倍だが、抵抗は約4倍となる。押しのける空気の量とぶつかる空気の勢いの関係らしい。
もちろん実際の電費は、路面の勾配、風向き、気温、交通状況などにも左右される。それでも、高速道路で速度を上げるほど電費が悪化しやすいという傾向は、BEVでは特に気をつけたいポイントだ。
時速80kmと100kmとでは、速度は25%しか増えていないが、空気抵抗は約56%増える。速度の違いがどの程度電費に影響を与えるのか、できれば最初にそのモデルの特性を確認しておきたい。
結果として、瞬間電費計の具体数値までは記録できていないが、一定速度で巡航中のメーター表示を見る限り、時速80kmでは7.5〜15km/kWhの中間付近、11km/kWh以上と思われる表示。一方、時速95kmでは7.5km/kWh前後を示すことが多かった。
走行中の勾配や風の影響も含まれるため、速度だけの厳密な比較はできないが、それでも時速80kmではかなり電費がよく、95km前後まで速度を上げた場合でも7.5km/kWhと、バッテリーの減りを不安に感じるようなものではなかった。むしろ、それまでの電費平均を大きく下回らない優秀な数値と言える。それでも、わずか時速15km程度の速度差で、消費電力が明らかに増えることを実感できた。
また、今回の東北自動車道は、中央自動車道ほど上り坂が続く区間がないことは、有利に働いた。ルートの特性によって、電費に大きな違いが出るだろうから、それも視野にBEVではドライブプランを立てることも重要だろう。
羽生PAでサクッとフル充電
RZ350eは最大150kW急速充電に対応しているため、その実力を試すことも兼ねて羽生PAに立ち寄った。
充電待ちの列はなく、先客は日産リーフ1台のみ。同じ充電器を2台で同時使用すると出力が半分になる為、隣の充電器を利用。
ちょっとした朝食の買い物をしている30分程で、SOC約75%から97%、航続可能距離は527kmまで回復した。今回は充電開始時点で75%と高SOCからの充電だったため、出力は76%時点で約45kW、96%では約15kWまで低下した。
急速充電はSOCが高くなるにつれて出力が絞られることが、実際の数値からもよく分かる。充電器の出力は、バッテリー残量や温度、充電器側の状況によって変化するため、常に150kWで充電できるわけではないが、短時間の休憩でもまとまった電力量を補充できるのは大きなメリット。
BEVで旅行となると「どこで充電するか」を考えながら走るものだと思っていたが、実際には道の駅やサービスエリアでの休憩に充電を組み合わせれば簡単に解決できる。これは、BEVのバッテリーの大容量化、高速充電の対応、そして高速充電網の拡充による大きな進化だろう。この「休憩している間にサクッとほぼフル充電」という感覚は、BEVで長距離を走るうえで重要だ。BEVに対する見方を180度変えてくれる。
DONQ miniOne PaSaR羽生店でメロンパンなどを購入した。
高速道路巡航は快適。でも路面の継ぎ目は気になる
途中、追越車線で巡航速度を120km近くまで上げることもあったが、RZは至って静かで快適。風切り音やタイヤノイズが気になることは全くなかった。この辺りは、さすがレクサスという印象だ。
一方で、路面の繋ぎ目を通過したときには、BEVならではのバッテリー重量から来る大きめの上下動があった。今回のRZ350eは18インチタイヤ。大径ホイールではないので乗り心地には有利なはずだが、突き上げを受けた後の落ちる衝撃の大きさを打ち消すことはできなかった。一般道でも荒れた路面では同様の傾向を感じた。
以前試乗したメルセデスのEQE SUVは2.5トンを超える重量級BEVだったが、AIRMATIC(連続可変ダンパー+エアサス)の効果もあって、しなやかで滑らかな乗り心地を実現していたのだろう。
展望台から眺める景色とRZ
館林ICを降りて、朝の渡良瀬遊水地へ向かう。
ここは、栃木・群馬・埼玉・茨城の4県にまたがる、面積約33km²(東京ドーム約700個分)の日本最大の遊水地。
渡良瀬遊水地
利根川水系の洪水を一時的に貯めて首都圏の水害を防ぐ治水の要であると同時に、ラムサール条約にも登録された豊かな自然の宝庫。
なんと、近くでうりぼー達を見られました。こちらも驚きましたが、急に静かに現れたクルマに向こうも驚いたよう。まさにEVならでは。
展望台からの眺めと共に、クルマを上から見れることは稀なので、撮ってみた。
いい感じでキャビンが絞り込まれていて、ショルダーラインが鋭角に作り込まれていて、格好いい。Cピラー周辺のデザインは、ジウジアーロのアルシオーネのデザインを感じさせる。
RZは部分的なデザインはとても良いのだけれど、ルーフが低く、ボンネットも低めだから、やや旧型リーフのようで、ビジュアルよりも存在感が小さく見える点が、やや残念。こちらは近隣でNXと並べた際の写真だが、NXの方が立派に見える。
RZで静かに旅する
この日は終日、台風一過の晴れとはならず、梅雨のようなシトシトした雨や霧で、このようなしっとりした中での湿原や出流山の満願寺の訪問は、やや異世界に迷い込んだようで、そこにRZというアグレッシブさを表に出さないBEVが、なんともしっくり来た旅だった。
3県境
渡良瀬遊水地近くには、渡瀬川の底にあった3県境があり、3秒で3県を旅できる人気スポットにもなっている。
満願寺
出流山にある満願寺は、1764年に再建された県指定有形文化財で、本堂の脇から山道を30分ほど登った崖の上に、奥之院・出流鍾乳洞がある。大悲の滝は、関東屈指の本格的な滝行(水行)の霊場。
ゴツゴツとした水の流れる険しい沢を登って奥之院へ向かった。
水音が響く新緑や苔むした岩の景色はとても神秘的。
出流山満願寺を開山した勝道上人(しょうどうしょうにん)は、日光山輪王寺など切り拓いた日光開山の祖であり、伝承によると、勝道上人の両親が子宝に恵まれず、出流山満願寺の奥之院(鍾乳洞)に籠もって祈願したところ、授かった子そのものだそう。
その後、蕎麦を食べ、ホテル、そして今回訪問の目的だったお店で飲み会をした。ソムリエがいるので、ここでのワインが最高に美味かった。
2日目 佐野市内と栃木市観光
2日目は、佐野厄除け大師、佐野プレミアム・アウトレットを回り、佐野ラーメンをいただいてから、蔵の街の栃木市、小山へと移動した。
こうした郊外路では、RZの滑らかな加減速がとても使いやすい。アクセル操作に対する反応は自然で、低速からトルクが出るBEVなので、深く踏み込まずとも停止からの加速が楽だ。高い静音性もあって、後部座席との会話に困ることもなかった。
佐野厄除け大師
関東では年末年始にCMでよく見る代表的なお寺。広大な境内を想像していたので、実際のコンパクトな境内に驚いた。厄除け大師前の
佐野ラーメン
プレミアムアウトレットモール近くにある麺屋たかひろ。最近できたお店としては人気店。90分待ちとのことで、お店で受付を済ませるとLINEで待ち時間と組数をお知らせしてくれる。その間、アウトレットモールをぶらぶら。
麺にはかなりコシがあり、懐かしい醤油味で、飲んだ翌日の胃に優しかった。
蔵の街遊歩道
栃木市を流れる巴波川(うずまがわ)の沿岸に整備された散策路で、江戸時代から舟運で栄えた歴史ある蔵や黒板塀の街並みを眺めながら、鯉や鴨が泳ぐ川沿いをのんびりと歩いて観光できるスポット。
前日とは打って変わっての天気で、日差しが大変暑かった。
帰りは下道、低速走行も得意なRZ
覚悟はしていたが、この日は予想通り高速が20kmを超える渋滞。Google Mapsの案内も一般道を示したため、国道4号などの一般道で70km強を約2時間かけて帰ることにした。
幹線道路でありながらも、低速走行が中心で、平均車速はわずか26km/h! 一方、低速走行はRZにとって電費面で有利だったようで、旅行全体の通算平均電費は7.8km/kWhまで改善した。SOCも73%から60%への13%消費にとどまった。
こういう状況ではRZの静かさと滑らかさが助けになる。エンジン車なら発進と停止のたびに始動を伴うか、停車中のアイドリングでロスを増やすが、BEVは常にスタンバイ状態。回生ブレーキも使えるため、長時間の一般道走行との相性は良好。RZがワンペダルドライブ対応なら、尚更良かったことだろう。帰宅後には右足にどっと疲れを感じた。オルガン式ペダルは、BEVの中でも重めの設定と言える。
なお、この低速域で旧型レクサスRXに煽られる事態もあったが、システムが「後方車が接近しています」というアナウンスをしてくれ、慌てることもなく冷静さを保てた。
結局、充電の心配はしなかった
BEVで旅行する前は、「航続距離が刻々と減り残り何km走れるか不安にならないか」「途中で充電に慌てることはないか」「充電器は空いているか」といったことを想定していた。
ところが今回の佐野旅行では、往路でほぼフル充電を行ったこともあり、航続可能距離を心配する場面は皆無だった。
RZ350eのWLTCモード航続距離は18インチ仕様で733km。実際の航続距離は気温、速度、エアコン、道路状況などによって変化する。電費実績7.8km/kWhとバッテリー容量約77kWhから単純計算すると、航続可能距離は600kmだったことになる。
今回、高速道路、郊外路、市街地、山間部、さらに渋滞を避けた長距離の一般道まで、3名乗車で荷物とともに走行した。
「BEVだから」という理由で行動を制限されることもなく、普通に旅行を快適に続けられたという点で、RZを高く評価したい。
良かった点
- 滑らかな加速、高い静粛性、乗り心地
- 後席とラゲッジの余裕
- 長距離でも疲れにくいシート
- 150kW急速充電の活用のしやすさ
- 心配にならなかった航続距離と充電
気になった点
- 大きな段差では車重によるショックを受ける
- ステアリングから伝わる情報は少なめ
- 一部の運転支援や操作系には慣れが必要
- 急速充電は開始時のSOCやバッテリー温度によって速度が変わる