寒さも本格的な今日この頃。

我が地ではワイン農家の守護聖人の祝祭行事が続いとります。

この祭事は仏国ワイン産地でも地域によって様々で、同じロワールでさえも趣は異なりますのよ。

祭る聖人がそもそも異なるパターンもござんす。

 

 

 

 

メインイベントはミサの日に聖人像を掲げて練り歩き、持ち回りの蔵の神酒を分かち合うと言うヤツですが、この後に来年の持ち回りの蔵への引き継ぎと、その蔵が解放されて振る舞いワインを行うなど、世間的にはクレープの日で盛り上がる行事が完全に霞むレベル。
(いや、小さいお子さんがいらっしゃるご家庭では盛り上がっていると思います)
 
まあ、この祝祭の時期はうちの地方では
あっちこっちで(今年、来年、再来年と)持ち回りに当たる其処此処の蔵元さんたちのセラーで新酒を振る舞うアペリチフがあり、そこが新年の初顔合わせの挨拶場になるわけでござんすね。
昔はこの聖人の日を境目に畑仕事始めがなされたとか言うし、お正月のイベントがない仏国に住まふ邦人としては気持ち的に正月の挨拶〜新年会と云ふ気分になれるので
気持ちの切り替えとしても重要なイベントでノエルの鬱憤をここで晴らせるわけよ。
(何の鬱憤か、よう分かりませんけれども、まあ12月のストレスかしら)
 
 
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昨年は、姉さんの介護があったので、イベント事は全てご辞退状態でしたけれど
この祝祭も歴史上初めての全員マスク装着とかソーシャルディスタンス問題で振る舞い酒の中止や規模縮小などが行われておったため、実質的に3年ぶりのいつもの行事に戻った感じで、それはもう皆様大いにいつもの祝祭に戻れた喜びを分かち合っておりました。
 
ちびっ子たちの成長には(当たり前ながら)感嘆しましたし、そのうちのママンが妊娠中にジャポンから安産のお守りを持ち帰って渡したこと(本人はすっかり忘れておりましたけれども)6歳になった今もその子のベッドに飾ってくれている話など聞けて、心が温かくなったり。
少女、少年だった子たちは、今やすっかり立派に家業を担っておったり
自分がこの地に来てから干支が一周したワケですから、当たり前のこととはいえども、時の流れを目の当たりにするとはマサにこう言うことなんやねえ。
 
 
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さて、寒波の中の祭事も滞りなく終了し、今年は大司教様のミサで祝福を受けた新酒とガレットを戴くこともできました。
もうワタクシ的には、御神酒とお屠蘇、神前の鏡餅を戴く感じざんす。
異教徒ですけれども、そこは八百万の神の国から来た者なんで突っ込まんといておくれやす。
関西人的には、えべっさん(十日戎)と言わせたいと思われるところ?かもやけど
だいぶ違うねん。(当たり前やろ)
 
 
各村の教会で神事のミサは3週間くらいに渡って行われるというスタイルは多分この地方独特のような思います。
(ワタクシの知る限りの範囲では、という自分調べ)
冬至を経て少しずつ日が長くなり始めるけれど、極寒で鉛色の憂鬱な時期において
親しい人達が集うこの行事のお陰で何とか自分の機嫌をええ塩梅に保てる気がします。
 
しょっちゅう会える人もおれば、このタイミングじゃないとお目にかかれない人もおります。
実はたくさんの再会の中でも今年は実に感慨深い再会がありました。
たまたま、ワイン関係者が家族におられると言うことで、とあるワイン農家の蔵開きに顔を出していたマダム、それは昨年姉さんのケアにあたって下さった介護士さんでございました。
 
 

 

 

 
 
彼女の風貌は独特で、当然制服着用でマスクもされておりましたが
ソニア・リキエルのやうな真っ赤(オレンジ)の長髪を引っ詰めて、独特のデザインのメガネをかけているので一度あったらそうそう簡単に失念できない程の存在感。
オットも長年の知り合いで、ワタクシの事も知ってくれておりました。
 
また別の段で終末期ケアのことは書き記しますけれども
姉さんには1日置きにケアに来てくださる担当の介護士さんが総勢7人程いましたが、彼女のポップな存在感は姉さんも印象的だったのか(そらそうや)、気持ちが明るくなるようで、まだ動ける間はバスルームで笑い声も聞こえるほど楽しい会話をしながらお手入れをして頂いてたんです。
そして、赤毛マダムは地元でシャンブルドットを経営すると言うことで退職が決まっていたのですが、なんと最後のシフトが生前の姉さんだったのです。
 
挨拶をしたものの、姉さんのことをどう話そうかと躊躇していたんですが
やっぱりどうしてもお伝えしたい気持ちになって、話を踏み込ませたところ
彼女は当然というか最後のシフトの姉さんのこと(その先の事は皆さんが承知していたし)後に訃報も知っていたそうで気にかけていてくれたそう。
ワタクシは彼女が来る日は姉さんはとても喜んでいて明るい気持ちになっていたことの感謝の気持ちを今一度伝えたくて、
「貴女のおかげで、人生の最後の時期を心地よく笑顔で過ごせた姉さんに代わってお礼を伝えさせてください。」
と言った途端つい涙ぐんでしまったんだな。
そしたら、燃えるような赤毛の彼女も涙をこぼしておりました。
そして、振る舞われておる新酒の入ったワイングラスを掲げて、一緒に姉さんに献杯してくれましたん。
 
 
 
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嬉しかったなあ。
修羅の中の優しい時を共にしてくれた存在との再会ですよ。
姉さんだけやのうて、ワタクシも精神的に本当に助けて頂いておりました。
 
サン・ヴァンサンの粋な計らいに、ホンマに感謝やわ。
ワタクシも赤毛のマダムもワイン生産者ではないけれども、聖人はそんなケチ臭くなくて誰にも等しくワインを通して手を差し伸べてくれたに違いないわ。
 
外は極寒やったけど、心はホカホカでいい気分でほろ酔いになれた夜の出来事でございました。
 
 
ご拝聴(拝読)、おおきに。