残り「 幻想系 」と「 マンガ 」の2冊。
「 その昔、N市では
カシュニッツ短編傑作選 」
マリー・ルイーゼ・カシュニッツ
訳:酒寄進一
「 幻想系 」ほか含む、全15編の 短編集。
かなり前の『 アメトーーク 』、「 読書芸人 」の回で 書影だけ紹介されたうちの1冊ですね。
個人的には その放送の前から 図書館で見かけて気になっていて
「 読むリスト入り 」してた作品だったりします。
著者は 1901年 生まれの ドイツの作家で「 脚本 」や
「 詩 」も書いてるみたい。
内容としては 主に「 幻想・奇妙な味 」系ですが「 戦争 」を
背景にしたのや「 心理スリラー 」的なのもありました。
全体を見ると「 家族の繋がり、希求 」みたいなのが 浮かんでくる作品が多かったかな。
「 幻想 」としては「 現実と非現実が 曖昧 」みたいのが多く、
私が好きな 足元が崩れていくような 不穏感、不条理感の強い
作風ではありませんでしたが、
「 浅く刺さった 」のは 結構あったので “まあまあ” 楽しめました。
ちなみに どの作品も だいたい 20ページ前後くらいなので
「 短篇 」より「 ショートショート 」に近いかもしれません。
( 総ページ数も 200ページくらい )
何作か紹介。 ( 軽い ネタバレあり )
「 精霊トゥンシュ 」
農業大学から派遣された、放牧地の山小屋の番人。
退屈している番人のため 牧童たちは パン生地で作った、
“しゃべる人形”・トゥンシュを 彼に作らせる。
だが後日、その番人が殺される事件が起き……。
山小屋で起こった「 番人殺人事件 」の聞き取りを 刑事が行う
内容なんですが、
刑事が出した「 現実的な結論 」が 最後に ひっくり返る展開となっていて「 怪奇性 」が高めで好きでしたね。
人形・トゥンシュよりも 危険性を知りながらも 人形を作らせた 牧童たちが 一番 怖いような。
「 船の話 」
他国に帰る妹を 別の船に乗せてしまった兄。
想定日を過ぎても 連絡が来ず 心配する兄の元に 妹からの手紙が届き……。
あの世と 此の世の間を 船がさまよう…みたいな「 幻想譚 」。
ある種の「 幽霊船モノ 」とも言えるかも しれません。
本書は「 存在 」や「 時の流れ 」が気薄、曖昧になる話が多いんですが、
こちらも そういう内容で 読んでいて 不穏感が 心地悪かった
( 良かった )ですね。
あと「 生と死の狭間 」みたいな印象を持ったんですが、作中に ダンテの『 神曲 』が 出てくるので もしかすると「 煉獄 」※が モチーフかもしれません。
〔 ※『 神曲 』の「 煉獄篇 」
何回か書いているけど、カトリックでは 天国と 地獄の間に
「 煉獄 」というのがある。
簡単に言うと「 自分で 自分を浄化する 」( 自罰する )場所 〕
「 六月半ばの間昼どき 」
アパートに帰って来た カシュニッツ夫人は 住人から 見知らぬ女が「 夫人は亡くなった 」と吹聴していた事を聴かされる……。
「 死 」を吹聴する女が まるで 死神のようで 結構 不気味。
女が「 死 」を吹聴していた時間、当のカシュニッツ夫人は…
のくだりで 不気味さが もう一段 上がったりで 面白く読めましたね。
「 長距離電話 」
婚約予定の アンゲーリカ と 上流階級・パウルの カップル。
だが、パウルの父親は 身分の違いを理由に 婚約に反対していて……。
すべて「 電話 」での「 語り 」で構成されている、人間ドラマ。
パウル家族による 遠回しの「 婚約妨害 」が なんだか 現実的
( リアル )。
「 嬉しさ 」と「 悲しさ 」が入り混じった「 皮肉な顛末 」は
まさに “奇妙な味” でしたね。
「 その昔、N市では 」
人々が「 介護 」などの労働をしなくなった N市。
市は「 死体を 蘇生させた 」 “灰色の者” に それらを任せる事にするが……。
死者に労働をさせる、という『 恐怖城( ホワイト・ゾンビ )』(32年)みたいな内容。
という事で ゾンビ的な展開を期待していたんですが、そこらへんは あっさり。
しかも、その教訓から 唐突に「 SF的 」な結末になるんですよ。
「 人と人との 繋がりが 途切れた 」みたいな ブラック・オチは
好きだけど さすがに 飛躍し過ぎか。
その間に もうひと展開 欲しかったかも。
「 四月 」
ブルッタが席に戻ると 花束が。
周りに聞くと 支配人が ブルッタに当てて持って来たらしい。
まだ昼休み、支配人を探しに公園に向かった ブルッタだったが……。
結構 イタイタしい「 夢想( 妄想 )」の話。
しかも それにより「 時空が歪む 」、浦島太郎的な展開にも
なるんで 二重に 切ないんですよね。
ちなみに この話が 最後の作品「 人間という謎 」に 効いてくる仕掛けになってます。
「 いいですよ、わたしの天使 」
年老いた女性が「 間借り人 」を募集。
多くの応募の中から 美しい娘、エヴァを選ぶが……。
家族( 娘 )を持たない寂しさ(?)から「 目が曇って 」
しまう、心理ドラマであり、心理スリラー。
「 徐々に 家を乗っ取られる 」という、すごく憤りを覚える話
なのに 老女自身は 幸せそうで、
それにより 哀愁感や 悲劇性が さらに強まるんですよね。
…とまあ、こんな感想を持ちましたが「 詩 」を読まれている方なら もっと細やかに、深く読めるのかもしれません。
何故か コレだけ 図書館に入荷されてました。
まあ、今の若い人が読んで どう思うかは わかりませんけど…。
「 二人狸 」
化け狸の退治を請け負った ねずみ男。
だが、化け狸は ねずみ男に化けていて…というような話。
ねずみ男が 大ピンチに陥る、手に汗握る(?)展開をみせるんですが、顛末が ヒドイんですよ。
まあ、それでも オモシロかったですけど。
「 影くい猫 」
猫神博士が エジプトから持ち帰った「 影を食う猫 」が 逃げ出し「 影 」を食べ始める……という「 少し・不思議 」系の話。
「 影 」がなくなり「 日を遮る 」事ができなくなったり、
「 影 」を食いつくし「 闇 」を食べ始めるなど、
地味に 不条理・ホラーな内容で 好みでした。