残りの1冊、アンソロジー。
「 著者29名 」は 作品の方で 紹介。
「 最初の一行は 全員一緒 」シリーズ 第2弾。
前回『 黒猫を飼い始めた 』と同様( 表紙も「 黒猫 」)、
「 メフィスト・リーダーズ・クラブ 」で 有料公開された
「 ショートショート 」を まとめたもの。
一応 書いておきますが、“最初の一行” は 本書タイトルの
「 嘘をついたのは、初めてだった。 」です。
著者29人( 29作品 )は「 メフィスト賞 」作家、
ベテラン から 若手、ネット系( 今っぽい )と 幅広く、
「 作品 」の傾向も 様々。
前回は「 ミステリー 」「 サスペンス 」系が 強めでしたが、
今回は「 ドラマ寄り 」の作品が多い印象。
「 特異な設定 」( 前回は 異世界もあった )も 少なかったので
少々残念ではありました。
それでも ウソを吐いた「 人物 」「 状況 」「 理由( 思惑 )」も 時に ミステリアス、「 ショートショート 」らしい オチもあったりで これはこれで 楽しめましたね。
という事で「 作品 」の方を紹介しますが ショートなんで
「 設定バレ 」に注意。
「 嘘の代償 」 須藤古都離
「 敵がいない 」北部の村で 駐屯部隊 が交戦、殲滅してしまうが、敵は “たったひとり” だったらしい。
僕たちの中隊が 救援のため その村に向かうが……。
『 ゴリラ裁判の日 』( メフィ賞 )の著者という事で
「 人間の愚かさ 」を強く感じる内容。
「 偽証の誓約 」 五十嵐律人
僕の母親と 幼馴染の茜音( あかね )の父親が 出て行ったことを切っ掛けに「 嘘を吐かない 」と約束した2人。
だが、僕と違い 人目を引く 茜音は そのせいで孤立していく…。
「 嘘も方便 」とは言ったもの。
「 本音 」も 時に残酷ですしね。
著者は 映画化もされた『 法廷遊戯 』(メフィ賞)の人って事で ほんの チョット 裁判要素あり。
「 もうすぐ死ぬ 」 柿原朋哉
20年前に「 天才超能力少女 」と呼ばれた アスカは 今は
ひとりで部屋にいて…。
幼少期、夢での「 未来予測 」が SNSでバズり TVに出演、人気者になった アスカだったが その番組で ヤラセが発覚、
アスカの「 能力 」も疑われ、積極的だった 両親も アスカへの関心を失う……。
まあまあ オーソドックスな「 能力者の悲哀 」に「 親の期待 」と なかなか切ない内容。
チョイ重めだけど しみじみする「 ウソ 」で 結構好き。
「 生まれる前から倦(う)まれてた 」 西尾維新
「 胎児が ウソを吐く 」話。
「 生まれて初めて 」ではなく「 生まれる前に ウソを吐く 」
という設定が 秀逸。
「 ミステリー 」ネタも 少し出て来るんだけど、それが オチに繋がるところも 見事でしたね。
「 最後の一頭 」 小川一水
見世物にされている、恐竜のような “合成生物” で 高い知能も
与えられている 偉大竜( メガリ・ソー )。
飼育員の僕は 偉大竜に「 いつかきっと ここから出られる 」と語り掛けるが……。
という「 SFモノ 」。
ショートらしい ミスリードが効いている オチで こちらも
良かったな。
「 みんなの家 」 櫛木理宇
寝たきりの “トトナエさま”、サチ姉を お世話している わたし。
家に出る マガ( “禍” )を “トトナエさま” が払う事で 世界の
バランスを取っていたが、最近 マガが増えたように感じ……。
“血の繋がっていない” 疑似・家族集団の家が舞台なんで、著者
らしい?カルト系と思っていたら「 オカルトもの 」でした。
年頃で 遊びに行きたい わたしと “巫女” なのに 奔放な アキ姉、
2人と 対照的な 病気で “寝たきり”の サチ姉、
そんな状況から 吐き出される “あのセリフ” が バチっと
( グチャっと )キマって ちょっと ニンマリ。
「 エミリン 」 小野寺史宜
「 浮気モノ 」。
他と比べると「 話 」は 弱め( 普通 )。
だけど 主人公の心理描写( あと男たちも )は リアルっぽくて
そこは 良かった。
「 幸せな嘘 」 赤川次郎
デパートの「 婦人服売り場 」での「 お似合いでございます 」( 似合ってますよ )ネタを、皮肉と ユーモアを 交えて書いた 人間ドラマ。
手堅くも キチッと 纏めるところは( 少々 古臭いけど )さすが 大御所といった感じ。
「 盛ってるで…… 」 柾木政宗
大阪から 東京の本社への出張。
数十年前に 通っていた 居酒屋に行き 絶品料理に 舌鼓を打つ。
昔と変わらない味に 大満足だったが……。
“しんみり” オチ? から 冒頭を受けての 2回目のオチ?へ…
( こっちが本命?)という 面白い構成。
「 グルメもの 」としても 面白かった。
「 女帝の憂鬱 」 高田崇史
鸕野讃良( うののさらら、後の 持統天皇 )の「 歴史モノ 」。
「 アンソロジー系 」の良い所は「 興味の薄い話 」に出会えることで、これも そんな感じの作品でした。
ってか「 歴史 」の内幕ってこんな風なの?
…と、思っていたところ、
その後 読み始めた『 鵼の碑 』で 東照宮での 権力&生き残り
アレコレ( うんちく )を知り、どこも似たような事やっているんだと 腑に落ちました。
「 嘘日記 」 真下みこと
学校で お母さんの ウワキを見ちゃった。
嘘を忘れないように「 嘘日記 」を書くことにしよう……
小学生の唯香は 机の上に「 嘘日記 」を 置きっぱなしにして
しまい……。
という「 子供・サスペンス 」であり「 ミステリー 」。
先が読めなくて 面白く読めました。
「 終わる日 / オワルヒ 」 彩坂美月
幼い頃は 臆病だったが 今は 人の中心にいる 冴子。
全てを奪っていく 彼女に 殺意を抱いた 由奈は……。
という サスペンス。
「 2つ表記 」は それぞれに 掛かってるんだなと納得はしたけど…。
「 二十五万分の一 」 芦沢央
「 ウソを吐くと 消えてしまい、人の記憶からも消える 」
その事を知っている「 人の消失による 整合性を 調整する 」
役目を負った 一族の 私は “ウソを避ける” ため あまり喋らなくなる。
私は 会話を避けるため 高校では「 鉱物研究会 」に入るが
先輩は よく喋る人で……。
「 少し不思議 」系の「 青春譚 」。
「 二十五万分の一 」は ちょっとヒドいけど( 前例はあるが )
「 設定 」も イイし、
「 想い 」と「 願い 」を託した あのセリフも 結構 心に響いたりで なんだかんだ 好き。
「 偽りの証言 」 大山誠一郎
幸恵の元を「 斎藤龍平 殺害事件 」を捜査する刑事が訪れる。
幸恵は ある “ウソ” を吐くが……。
チョット「 歪な愛 」…というか「 自己満足 」の話かな。
こういうの 嫌いじゃないけど、描写が少ないんで 納得感が
乏しいのが 惜しい。
「 バウンド・オーバーラップ 」 青葉悠
退屈な日々に 我慢の限界が来た 高校生の僕は 町をひっくり返す「 ある計画 」を立てる事に……。
コレは「 話 」の進め方が 巧かったね。
面白く 読めましたよ。
「 伏線 」関係も チョット面白かったな。
「 悲雨 」 阿部暁子
冷たい雨の降る日に 芳郎( よしろう )に拾われた 女性、
時雨( しぐれ )。
ほとんど 喋らない芳郎と 一緒に暮らす事になった 時雨だったが……。
「 訳アリ 」な女と「 無口 」な男の「 人間ドラマ 」。
チョット暗くて、チョット重め…だけど たまには こういうのにも 触れないとね。
「 オタマジャクシの雨 」 河村拓哉
「 あした、空から オタマジャクシが降ってくるよ! 」
冗談のつもりで ウソを吐いたのに 次の日に オタマジャクシが
落ちてくる。
しばらく経ったあと 僕は お母さんから「 あなたは 決して 嘘をついてはいけないのよ 」と言われ……。
という、チョット不穏で ちょっぴりホラーな ヘンな話。
オチが弱めに 感じたけど、何となく 楳図かずお & 伊藤潤二 チックな雰囲気で まあまあ 好き。
「 村上 」 阿月まひる
短気な先輩を 病院送りにしたため 周りから 避けられてしまう
ようになった 村上。
「 放送室 」をジャックし「 友達が欲しい 」と叫んだ 村上に
感じ入った 私は 村上の「推し」となり 彼と友達になるが……。
身近な人が「 推し 」になる話は なんか新鮮。
「 結末 」が気になるけど、あの調子じゃ、ダメだろうな。
「 サロメの香り 」 吉川トリコ
仕事中は 指輪を外している、中年の店主が営む 小さな珈琲店に美女が来店。
それ以来、平日の雨の日に ふらりと 店にやってくる 美女に
好意を抱いた 中年の店主は……。
少し捻りがある「 恋愛モノ 」。
アレは たまたま? なのか 意図的? なのか。
始めは「 オチ 」に ピンと来なかったんだけど、“アレ” を踏まえると、
「 実は 店主の方も(が?)サロメであった 」( ←白字 )※って事でいいのかな?
( ※ 人は皆、恋に落ちると…になる、みたいな? )
「 嘘コントパンケーキワイヤドテレフォン
スーサイドゴーホーム 」
矢部嵩
主に 不思議ちゃん( 便宜的に表現 )と 彼女に付き添っている 男性の「 会話劇 」で「 タイトルまんま 」で 進みます。
前回『 黒猫を~ 』の 矢部嵩 作品が 面白かったんで 期待して
いたんだけど、今回は そうでもなかったな。
ただ、結構「 深い話 」もあったりで( タイトルに「 メイズ 」も入れてほしかったぞ )悪くはなかったですけどね。
「 死神の微笑 」 夏川草介
救急外来に 運ばれてきた 問題患者。
研修医の 桂( かつら )は 指導医・谷崎から ある助言を受けていた。
その谷崎は「 死神 」という不吉な あだ名を持っていて……。
『 神様のカルテ 』の人でしたね。
って事で チョットそれっぽい感じの話…なのかな。
「 大内くんの食卓 」 波木銅
生徒に ウソを吐いた事から 異常な事態に巻き込まれてしまう
専門学校の先生の「 話 」。
「 話 」の展開や「 締め方 」は 好みの内容でしたけど、
いかんせん あまり盛り上がらず 終わっちゃうんですよね。
「 食事 」の場面が 読みたかったな。
「 透明人間 」 潮谷験
ベンチャーで 巨万の富を得て 引退、山小屋に隠遁した男が
殺される。
彼は「 日記 」を書いており、殺された日の記述で 訪問者がいた事が わかっていたが……。
という ミステリー。
こちらも、ショートなんで しょうがないとはいえ、チョット
物足りなかったかな。
ちなみに アレには 気付きましたよ。
「 口にもできないようなつまらない願い事 」
竹本健治
竹本版( もうひとつの )『 猿の手 』。
「 あの後 」よりも 彼の「 願い事 」の方が気になる…。
今でも 小学校に『 猿の手 』って 置いてあるんですかね?
「 『 おやすみ、ずっとそばにいるね 』 」 佐野徹夜
煮え切らず ズルズル、それでも続く 男女の「 恋愛譚 」。
村上春樹の『 風の歌を聴け 』の 一文が 出て来るんですが、
内容も たぶん( 読んだ事ない… )それっぽい感じ…だと思う。
最後の方の「 未来 ウソ 」(?)が 結構 ロマンティック。
って事で 意外と 好きだったり。
「 スリーピング 」 長谷敏司
ひとりで ゲームキャラのデザインしていた「 漫画スタジオ 」の主、福地先生が 発作で亡くなっていた。
「 生成AI 」を使用した デザインを見た チーフと アシスタント2人は そのまま「 生成AI 」を使って デザインを続けることを決める。
事情を知った 取引先により 締切も延長されるが 残りの10枚に 手こずってしまい……。
「 生成AI 」を題材に取り入れた 今っぽい話。
以外にも「 人間味 」が 感じられる内容なんですが、
( 人によって「 学習のさせ方 」に 個性が出るのだ )
それだけではなく「 人の業 」も描いてあったりで 深みもあり 面白かったですね。
「 それでも、やっぱり地球はまわる 」 篠原美季
忠実なのに 何故か 飼い主に 叱られてしまう犬。
だが、子犬の オランジェの方は 叱られないのだった……。
という、犬を 主人公にした「 日常の謎( ミステリー )」。
「 設定 」、風刺の効いた「 真相 」共に 良かったです。
「 替え玉 」 献鹿狸太朗
「 夫の子と ウソを吐いている妻 」の話。
…なんだけど、幾重にも ねじれていて 感想に困る内容。
面白くはあったし「 独特の味わい 」も 感じられたので
「 気になる作家 」にはなりました。
「 探検の思い出 」 三津田信三
同窓会で 山下と 2人きりになった 僕。
その山下から 子供の頃の「 幽霊屋敷の探検談 」の話を振られた
僕は 当時の記憶が蘇り……。
いつもの「 三津田信三 節 」だったけど、結構 スリリングで
面白かったです。
けれど、すごく不気味だった( かなり面白かった )「 前回 」と 比べると チョット残念だったかな。
という事で 個人的に 一番 面白かったのは
「 設定 」が素晴らしかった『 生まれる前から倦まれてた 』。
ホラー系の『 みんなのいえ 』も オススメしたい感じかな。
つうか、全部紹介は ツライ…。