残りの1冊。
「 13・67 」 陳浩基
香港を舞台にした「 警察モノ・連作ミステリー 」。
近年、面白そうな本が バンバン出るんで「 長めの作品 」に
なかなか手が伸びないんですよね。
一応、数年前から「長め作品を読む」を目標にしてたんですが、
いざとなると( 特殊設定や 手軽な方に目が行き )手が出ずに
読めずじまい…。
( コレとは別に アレとか ソレとかも 読めてないけどね )
さすがに 溜まる一方なのは バランス的に 後々 しんどくなると思い、意を決して まずは コチラに挑戦。
基本的に「 海外ミステリー 」は ほぼ諦めてるんですが
「 華文ミステリー 」だけは 気になるんですよね。
ちなみに ページ数は 上下2段(「 段組 」と呼ぶみたい )の
「 480頁 」くらいと まあまあのボリューム。
あと「 島田荘司 推理小説賞 」受賞作品の『 世界を売った男 』の方は 読んでます。
〔 そっちより 寵物先生( ミスターペッツ )の「 VRモノ 」、
『 虚偽街頭漂流記 』の方が 好みで 面白かった 〕
タイトルは 2013年~1967年の意味で、
タイトル通り「 時代を遡る 」構成になってます。
主人公( = 探偵役 )は 「 香港警察 」に所属、
卓越した推理力を持ち「 天眼 」と呼ばれている クワン。
それと、クワンを師匠と慕う ローも 中盤までは 主人公側の立ち位置のキャラかな。
ミステリーとしては「 本格 」要素もあるし、
少々「 現実離れ 」の感もあったけど 刑事モノらしい仕上がり。
個人的には ある程度 “盛ったヤツ” ( 密室とか 連続殺人とか )が 好きなので 若干 物足りなさはありましたね。
それでも「 話 」自体は 良かったし、「 返還前 ~ 返還後 」の香港の世相や 情勢、黒社会( マフィア )関係も 興味深く、
「 社会派 」としても 読み応えがあり 面白かったですよ。
最後の「 メビウスの輪 」のような「 ねじれた円環 」の終え方にも しみじみきましたね。
2013年「 黒と白のあいだの真実 」
豊海グループの総帥が殺された「 強盗殺人事件 」。
肝臓がんで 昏睡状態の 特別捜査顧問・クワンの病室に
被害者家族と 関係者を集めた ロー警部。
PCと 装置を使った クワンの「 脳波 」測定による
「 YES 」「 NO 」の意思疎通で クワンから 事件解決の
助言を受けるというが……。
書斎にあった「 スピアガン 」を使った 強盗殺人、
「 YES 」「 NO 」による クワンの疑問の提示など、
一番「 本格 」らしい内容。
他の作品と ちょっと浮いてると思ったら「 あとがき 」によると 元は コンテスト用の作品でした。
2003年「 任侠のジレンマ 」
大規模な「 麻薬取締 作戦 」の指揮を 任されたものの 失敗に
終わった ロー警部補。
しばらくし、表では「 芸能事務所 」を抱える マフィア、
「 洪義聯 」のボス、左漢強( さ かんきょう )の 女性タレントが 襲われ 歩道橋から落とされる動画が 警察に送られてくる。
すぐに 現場に向かうが 痕跡はあったものの 遺体などは なかった。
タレント同士の いざこざから端を発した、左に「 洪義聯 」を乗っ取られて 分家した「 興忠禾 」による犯行とも 思われたが……。
「 芸能界 と 黒社会 」「 昔カタギの マフィア 」の内容で
面白く読めてたんですが、
「 真相 」が あまり好きじゃない系統だったんで 最後の方で
少し冷めてしまいました。
1997年「 クワンのいちばん長い日 」
「 捜査情報室 」の課長を務めている クワンの退職の日。
違法入国した 中国マフィア2人組を捜査中、「 洗浄剤 」を
使った 未解決の「 硫酸爆弾 事件 」が またもや発生。
そこに 検査のため訪れていた病院から 凶悪な囚人、
石本添( せき ほんてん )が脱走したとの報告が来る……。
「 囚人の脱走 」という サスペンスフルな内容。
「 石本添の脱出 」のくだりが「 本格 」っぽかったり、
「 石本添の居場所 」が いろいろと スゴかったりで
「 ミステリー 」としても 面白かったですね。
興味深かったのが、緊急部隊が マシンガン「 MP5 」と
ショットガン「 レミントンM870 」を車両に 積んでいた事。
本書の説明によると 90年代初頭、犯罪の凶悪化に 対抗するため「 防弾チョッキ 」と共に 常備するようになったようですね。
香港の「 黒社会・犯罪者・刑事の アクション映画 」では
フィクションらしい ハデな銃撃戦があったりしますが、
もしかすると 若干の「 リアルさ 」も あるのかも…?
1989年「 テミスの天秤 」
「 嘉輝(かき)ビル 」に 身を隠している、凶悪な犯罪者の
石兄弟の弟、石本勝( せき ほんしょう )と その仲間2人。
ビル北口の弁当屋で 張り込む 刑事・ローのチームは 弁当を買いに来た 仲間2人を うまくやり過ごす。
だが 2人が部屋に戻って早々に 石本勝たちが動き出す事態に。
ローのチームの 隊長・TTは 待機命令を無視し 石たちを追う
選択をするが……。
チョット強引な点も 感じられましたが「 張込み 」に緊張感もあって こちらも 面白かったです。
あと、ビル内での 銃撃戦では ジョニー・トー 監督の
『 ブレイキング・ニュース 』(04年)を思い出しましたよ。
1977年「 借りた場所に 」
「 香港廉政公署 」調査主任の イギリス人、グラハム・ヒルの
息子が誘拐される。
刑事捜査部の捜査指揮官である クワンが ヒル宅に赴いて捜査に
あたるが……。
「 誘拐モノ 」だけど・・・で、チョットがっかり。
ただ、当時の香港警察の「 汚職 」や「 賄賂 」の現状を知る事が出来たのは 良かったのかな。
( こういった情報を知っていると「 映画鑑賞 」の際、
作品内に 入り易くなるんですよね )
1967年「 借りた時間に 」
「 工場の労働争議 」から拡大した 反英・反政府の「 暴動 」と
「 テロ活動 」が 起こっている 香港。
大家の雑貨店を手伝っている、その日暮らしの貧しい “私” は
ある日、隣の部屋に住む男と 仲間たちによる「 爆弾テロ計画 」を聞いてしまう。
その翌日、雑貨屋で その内の ひとりの男が 警官に暴言を吐き
逮捕される。
その時 男が落とした「 メモ 」を見た私は 奇妙な点に気付き、雑貨屋によく来る “いい警官” に 部屋で聴いた「 テロ情報 」を教えるが……。
「 反英 」「 反政府 」「 左派 」活動、「 英中の対立 」、
「 政府寄りの警官と 弾圧を受ける市民との 深い溝 」…
など、社会派強めの「 爆弾サスペンス 」な内容。
( 調べたら「 六七暴動 」と呼ばれてるみたい )
「 反政府デモ 」など チョット前の( もう10年経ってるが )「 雨傘運動 」を思い出して「 繰り返してるなぁ 」と思ったんですが、「 あとがき 」にも それっぽいこと書いてましたね。
そんな「 社会派 」な内容ですが「 エンタメ性 」も 一番あって 楽しく 読めましたよ。
という事で「 刑事モノ 」としては オススメできそう。
映画好きとしては「 香港映画 」を よく観る人に 読んでもらいたい作品かも…。