今月 読んだのは…
本格ミステリー
「 方舟 」 夕木春央
連作ミステリー
「 彼女は逃げ切れなかった 」 西澤保彦
ノンフィクション
「 美術泥棒 」 マイケル・フィンケル
の3冊。
まずは ミステリー2冊から。
「 方舟 」 夕木春央
本格ミステリー。
柊一( しゅういち )は 従兄を連れて 大学時代の友達との
集まりに参加、主催者である 裕哉( ゆうや )が 山奥で見つけたという「 謎の地下建築 」を 参加者7人で見に行く。
だが「 地下建築 」の発見に時間がかかり、道に迷ったという
3人家族の 矢崎一家と共に「 地下建築 」に 一泊する事に。
だが朝方に 地震が発生、動いた大岩が 出入口の「 鉄扉 」を塞いだため 10人は 閉じ込められてしまう。
大岩を動かすためには 誰かひとりが ここに残らなければならないと分かるが、
「 地下3階 」を 満たしている水の水位が 急速に増え始めた
ため、一週間という タイムリミットも発生。
「 地上に出るには 誰かが犠牲に… 」そんな事実が 目の当たりになった直後、首を絞められた裕哉の死体が発見され……。
今年 ギリギリ間に合った…。
メフィスト賞作品『 絞首商会會 』は「 ドラマ性 」があったので( 話が良かった )コレも そんな感じと思っていたんですが、
人物描写は 最小限に「 閉じ込められ & 殺人 」まで サクサクと進むなど、以外にも「 ミステリー重視 」の傾向。
「 サスペンス 」や「 脱出アレコレ 」も ほぼ無く、
ページ数も「 300ページ弱 」と 比較的 コンパクトで、
個人的には「 まあまあ ロジック( パズラー )寄り 」の作品でしたね。
その内容も「 なぜ 殺したのか 」のほか、“残る人” が減るのに
「 なぜ 殺せたのか 」というのもあって 強く興味を覚えたし、
さらには「 首切断 」という ケレン味もあったりと 楽しい内容でした。
「 手掛かり 」関係も しっかりあって「 納得感 」(フェア感)も ありましたし、「 動機 」関係も しっくりきましたね。
まあ、寝る前とかに 軽く推理したものの「 ミスリード 」に
がっつりハマってしまい、「 真相 」には カスリもしませんでしたけど。
その “3人目” での「 ミスリード 」に 疑問を覚えたのですが、
ちゃんと「 あからさまな( デカい )ヒント 」があって 少し
ヘコみました…。
という事で「 本格 」だけでなく ミステリーらしからぬ(?)
「 オチ 」も 好みのヤツで 面白く読めましたね。
と、ここで オマケの「 方舟 」話。
旧約聖書『 ノアの方舟 』って シュメール人の『 ギルガメシュ叙事詩 』の「 方舟エピソード 」が 元ネタ( ほぼ そのまま )なんですよね。
『 旧約 』の 陸地の有無を探るため「 ハトと カラスを放つ 」
くだりも『 ギルガメ 』からなんですが、
両者を比べると「 ハトと カラスの扱いが逆 」で『 ギルガメ 』では カラスが帰ってこなかった事で「 陸地があると知る 」事になっています。
ちなみに「 バベルの塔 」の モデルも シュメール人の建造物、
「 ジグラット 」と いわれていますね。
「 彼女は逃げ切れなかった 」 西澤保彦
「 全5話 」の 連作短篇・ミステリー。
60歳の元刑事、纐纈古都乃( こうけつ ことの )を主人公に、
亡き弟の娘で 今は養女の 刑事・纐纈ほたる や
古都乃の親友で 居酒屋の店主、刻子( ときこ )、
「 特殊能力 」を持つ 双子の小学生姉妹が織りなす「 ドラマ 」と「 奇妙な事件 」を描いた内容。
感想から言うと「 イマイチ 」でした。
一番ダメなのは「 姉妹の特殊能力 」。
姉の方は「 その人の頭に浮かんだ “映像” を見る事ができ、
カメラにも 写せる 」
妹の方が「 自分と同じ動きを 人にさせる事が出来る 」、
というものなんだけど、取って付けたような「 特殊設定 」で
ほとんど「 事件解決 」には関わらないんですよ。
あと、古都乃と 刻子の親友で 急死した 孝子( たかこ )と
亡き弟の エピソードもあるんですが コレも 消化不良 気味。
「 奇妙な事件 」は 悪くないし「 古都乃たちの おしゃべり 」も 著者らしいから いいとしても、
くだんの姉妹や「 孝子の話 」で 紙幅が裂かれているため
「 事件 」部分が 少々 弱いんですよね。
その事件も 各々の「 勘違い 」や「 思惑 」、そこから来る
「 行動 」が ゴチャゴチャ絡む( ドタバタ系? )、
単に「 ややこしくした 」感じで 納得感も 薄かったです。
( ベタに「 事件 + 特殊能力 = 真相 」の シンプル構成で
よかったと思う )
著者も いろいろと キビシイとは 思うけど、
近年の長篇『 パラレル・フィクショナル 』や ちょっと前の
『 スリーピング事故物件 』は まあまあ 面白かっただけに
ガッカリでしたね。
第一話「 彼女は逃げ切れなかった 」
車が 女性を「 ひき逃げ 」したのを 目の前で見た 古都乃。
その車は 直後に 事故って停止するが、その車のトランクから
「 女性の死体 」が見つかり……。
「 事件 」は魅力的だったし「 真相 」( オチと言うべきか )も 好きだけど、ゴチャゴチャが強く ムリヤリ感もありましたね。
もう少し 細部が描かれていれば また違ったかも。
第二話「 男は ごまかし切れなかった 」
相談のため 先生と 会う約束をした男が 次の日に 自殺。
相談を受けた 先生には 家に強盗が入り、妻が殺されていた過去があり……。
ヒントの「 コンビニ事件 」のくだりが 弱かったり、
ムリヤリ挟み込んだ「 姉妹の活躍 」も 空回り気味だったりと
全体的に パッとしない内容。
第三話「 ふたりは 愛し合いきれなかった 」
「 アパートで 女性を刺した 」と通報してきた男。
だが、供述は曖昧で すぐに 殺していないことが判明。
その男は 過去にも「 身代わり 」になろうとした事があり……。
興味を そそられる「 話 」なんですが、 コレも ヘンに ややこしくて 読み進めづらく、スッキリしないんですよね。
まあ「 ブラック・ユーモア 」の ミステリーとして読めば 結構 面白かったですけど。
第四話「 誰ひとり戻り切れなかった 」
ホストクラブに通う女性が ホストの男に 殺された事件。
その女性は 夫がいない時 頻繁に ホストを自宅に 連れ込んで
いたらしい。
刻子の居酒屋に来た 元ホストの男も その女性に 誘われて自宅に行ったことがあるという。
元ホストの男は その時の「 奇妙な出来事 」を話し始める……。
一応「 伏線 」は あったし「 犯人 」も良かったんだけど、
「 特殊能力 」を ムリヤリ組み込む 内容だったし、
アッチの方の「 動機 」も 弱かったりで しっくり こなかったです。
第五話「 それは 彼女が逃げ切れなかったから 」
「 空き家 」で 男性が焼死した事件。
その男性の車のドラレコには、女性が「 空き家 」に入った後に出火し、男性が その「 空き家 」に 飛び込んでいく映像が残されていた。
その「 空き家 」の焼け跡からは「 人骨 」が見つかり……。
「 謎の女性と 男性の焼死 & 人骨発見 事件 」に、
「 各話 」で ちょこちょこ語られた、亡くなった 古都子と 刻子の親友、孝子の話が絡んで来る内容。
「 事件 」は 悪くないんだけど、人物関係の ゴチャゴチャが やっぱり足をひっぱるんですよね。
孝子のエピソードも 思ったより フツーだったし。
という事で、推せる部分が「 西澤保彦らしい作品 」しかないので オススメ度は 低いです。