残り1冊、ノンフィクション。
「 美術泥棒 」 マイケル・フィンケル
訳 : 古屋美登里
恋人と共に「 総額20億ドル 」の価値があると 言われるほど
の「 美術品群 」を盗んだ ステファヌ・ブライトヴィーザーの
ノンフィクション。
いろいろ候補があったけど 今年は「 ダリ 」とか鑑賞したんで
「 美術モノ 」を チョイス。
ちなみに 著者が書いた ノンフィク『 トゥルー・ストーリー 』は ジョナ・ヒル主演( フィンケル 役 )で 映画化されてます。
盗んだ美術品の数が とても多いので、てっきり かなり昔の話かと思っていたら、
恋人:アンヌ・カトリーヌとの 初の窃盗が 1994年と、
そんな昔の話でもないんですよ。
内容は ブライトヴィーザーの「 美術品の窃盗( 犯行 )」と
その「 顛末 」の他に「 恋人・カトリーヌや 母親との関係 」、
あと「 ブライトヴィーザーの心理分析 」の話なんかも。
ノンフィクションなので 淡々と進むのだと思いきや、
本書は 彼への インタビューで 詳しく 話を聴いており「 心情 」や「 犯行の手口 」も 細かく 描写されていて
「 ドラマチック 」かつ「 スリリング 」な 読み心地。
ノンフィクだけど やけに「 小説っぽい 」書きぶりで 普通の
フィクション小説のように 読めましたね。
読む前に 気になっていたのが「 どうやって 盗ったのか 」
なんですが、これが なんてことない カトリーヌを「 見張り 」に立てて「 人がいない時に 盗む 」なんですよ。
田舎の美術館だと 資金がないので 警備にも お金をかけておらず ( お金があったら 他の美術品を購入する、とも )
来館者も 少ないので 理解できるんですが、
有名なところも 客がいなくなった タイミングを見て 盗んでるんですよね。
まあ、危ない橋を渡っているのもありましたが。
盗みを行った国は フランス、ドイツ、スイスなど 数か国に渡り
その作品数も 250点 以上と 膨大。
使った道具は「 スイス製・アーミーナイフ 」( ヴィクトリノックス社のアレ )と バッグなど 入れ物。
バッグが無い場合は 服とかに隠してるんですが 盲点なんでしょうか、
隠すのが上手いってのもありますが 不自然なのに 気付かれないんですよ。
ちなみに、見張り役の カトリーヌ抜きの「 単独 」でも 盗みをやってます。
その カトリーヌと出会ったのが ブライトヴィーザーが19歳の時、彼の「 両親の離婚 」の 数か月前。
両親の離婚後は 母親と アパートでしばらく 暮らしたあと
一軒家に移って 母親、息子、カトリーヌの 3人暮らしに。
( 結婚していたころは「 裕福な家庭 」だったが
離婚により フツーの暮らしに )
その家の「 屋根裏 」が 2人の部屋で そこに 盗んだ美術品を飾っていました。
美術品窃盗の目的が
「 売って お金にする 」( 時価の3%~10% での取引 )や
「 身代金 目的 」、「 取引で使う お金変わり 」ではなくて
単純に「 所有するため 」なんですね。
なので 盗まれた美術品が 出回らず 捜査が難航したりも。
ちなみに、本書は「 誘惑するヘビ 」 が 木に絡んでいる
「 アダムとイヴ 」の「 象牙の像 」の窃盗から始まって、
最後も その「 アダムとイヴ 」の像で 終わっているんですが、
像の「 ヘビの誘惑 」と ブライトヴィーザーの
「 美術品の誘惑 」が重なって オチっぽくなってました。
「 犯行 」よりも 興味深かったのが ブライトヴィーザーの
「 心理分析 」。
(「 犯罪心理 」好きなんですよね )
「 窃盗の衝動を抑えられない 」なんかは 割りと よくある
心理状態(?)なんですが、
最後の方、“ある事” が切っ掛けで「 美術品の扱いが 雑になる 」( 手段が 目的となる )ところは 興味深かったですね。
専門家たちによる いろんな 見立てが あったけど、
個人的には「 子供 」( 未熟 )というのと「 ナルシスト 」の
意見に 概ね 納得かな。
ちなみに、盗むモノが なんでも いいわけではないので
「 窃盗症 」( クレプト マニア )ではないみたいだけど、
個人的には その要素も 少しあるような気もしましたよ。
あとがきの「 出版のための覚え書 」によると、
「 書籍 」を大量に盗む 書籍蒐集家に 付けられる「 蔵書狂 」
( ビブリオ マニアック )と、
ブライトヴィーザーの「 大量 美術品窃盗 」は「 分類 」としては同じ、と指摘する声も あるようですし。
あと 個人的には「 芸術作品を観て 動悸や めまいを起こす 」、
「 スタンダール 症候群( シンドローム )」※ が載っていたのが チョット嬉しかったですね。
〔 ※ ダリオ・アルジェント 監督、 娘・アーシア 主演の
『 スタンダール・シンドローム 』(96年)で知った。
本書によると 正式には 認められて いないみたい 〕
窃盗の他に「 カトリーヌとの関係 」という「 恋愛譚 」でも
あるんですが、
母親が「 知らぬふり 」をしていたり、ついには…したりと
母親の息子への「 愛情 」( 甘やかし )の要素もあります。
後半の 母親が絡んでくるところは「 母性 溢れる 」展開で、
尚且つ ミステリアスな様相を見せており、
むしろ、ブライトヴィーザーが 捕まったあとの「 謎 」の方が
深かったりします。
ちなみに、母親 及び カトリーヌは インタビューには 応じていません。
読み終わって 映画化してもいいんじゃないの、と思ったら
実際「 映画化権 」も売れたようです。
もしかすると「 映画 」で 観られる日が来るかもしれませんね。
〔「 ドキュメンタリー映画 」の方は 作られたが
アレの影響か(?)「 お蔵入り 」みたい 〕
最初に書いたように「 小説 」っぽく読めるし、ページ数も
「 訳者あとがき 」まで含めても「 300ページ弱 」、
本編「 約270ページ 」も「 章 」が多くて 空白が結構あったりと 分量も 少なめなので
「 ノンフィクション 苦手、 ツマラナそう… 」という人でも
手を伸ばしやすいと思います。
個人的には そこらへんも含めて オススメ出来る感じですね。
おまけで 小ネタ。
( ノンフィクは トリビアがあるのも いいんだよな )
1962年の映画『 007 ドクター・ノオ 』に出て来る
『 ウェリントン公爵 』の肖像画。
この時、この肖像画は 盗まれていて ギャグとして ココで使われている。
1907年、ピカソは 詐欺師の ジェリ・ピエレに 50フランで「 ルーブル美術館 」から 2体の「 古代の小さな石像 」を盗むよう依頼。
ピカソは 自伝の中で『 アヴィニョンの娘たち 』の モデルに
この石像を使ったと打ち明けている。