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berobe 映画雑感

「 映画 」と「 本 」の感想

 

 

 

「 ミステリー 」残りの2冊。

 

 

 

「 ミステリ・トランスミッター

謎解きはメッセージの中に

 

斜線堂有紀

 

ミステリー短篇集。

 

全5編で「 サブタイ 」にある通り “伝える” がテーマ。

 

 

「 ある女王の死 」

 

ヤミ金業界の女王と 言われている 老女、榛遵葉( はしばみ じゅんよう )が 事務所にて 腹を刺され殺害される。

 

その現場、応接室のテーブルには ある程度 対局が進んだらしい

「 血塗れのチェス盤 」が載っており、警察は その対戦相手が 犯人だと推測する。

 

警察が 事務所にあった 金庫を開けると 中には…

15歳の榛遵葉

彼女は チェス盤を前に “ある賭け” をしようとしていた……。

 

 

「 金貸し 」と「 チェス 」にまつわる ミステリー。

 

悪辣で 生き馬の目を抜く ヤミ金業界の話なんですが、

 

遵葉の「 心情描写 」や ドラマの展開が巧かったし、

金庫の中身も 気になったりで グイグイ読めましたね。

 

読んでいくうち ミステリー色が 薄れていくんですけど、

 

最後に アレや コレが繋がって 最終的に ちゃんと ミステリーに

着地してました。

 

ミステリーと ドラマ性、共によくて すごく面白かったですね。

 

 

 

「 妹の夫 」

 

宇宙での「 単独 長距離航行 」に挑む パイロット、荒城勉

( あらき つとむ )。

 

は 最初の「 長距離ワープ 」が間近に迫ったころ、地球にいるを見るための「モニター」で「 が 男に殺害される 」ところを見てしまう。

 

しばらくして その男が “妹の夫” だったと思い出すが、名前だけは出てない。

 

「 長距離ワープ 」後、地球では 7年が経過。

 

地球との連絡の際、担当のフランス人の通信官に「 妻を殺した犯人 」を伝えようとするが 翻訳機が故障していたため うまく伝えられず……。

 

 

言葉が通じない相手に どうやって「 犯人 」を伝えるか、というような話。

 

「 言葉が 無かった時代 」を舞台にした 短篇ミステリー、

『 人類最初の殺人 』上田未来 )を思い出しましたね。

 

翻訳機の技術が発達したため 外国語の勉強が 必須ではなく、

英語も ほぼ ダメ?っぽいので 結構 ヤキモキ。

 

それは 主題なんで いいんだけど、最後のアレは 厳しいような

気が…。

 

 

 

「 雌雄七色 」

 

売れっ子脚本家元妻が生前に残した、虹に なぞらえた7色

セットの手紙に綴った 言葉。

 

元妻の最終的な 脚本家への “想い” とは……。

 

 

「 虹 」に 雄と 雌があるんですよね。

 

本作は、

 

「 赤、 橙、 黄、 緑、 青、 藍、 紫 の7色の手紙を

順に使って相手に気持ちを伝える 」

 

という触れ込みの「 手紙セット 」が出て来て、

 

元妻の息子が残した「 7色手紙 」のうち、最後の「 紫 」だけを読み、あとは 脚本家が「 順番通りに読む 」…という構成です。

 

元妻の心情描写は 相変わらず巧いし「 雌雄の虹 」のくだりも 効果的だったけど、“コレ” は 今年で 3度目なんですよね…。

 

悪くは なかったものの 最初に読んだ “コレ” が すごく良かったのもあり 新鮮さは あまりなかったです。

 

 

 

「 ワイズガイによろしく 」

 

1960年代の ニューヨーク。

 

スペリオ 一家( ファミリー )に所属する、誰も信用しない

ギャングスタの シャックス

 

は 倉庫襲撃の前日に「 ジュークボックス 」から「 声 」を

聴く。

 

シャックスは「 君の味方だ 」という その「 声 」に従って計画を変更し、襲撃を成功させるが、のちに 前の計画通りだと 惨事に巻き込まれていたと知る。

 

シャックスは 前にも「 声 」に助けられていて……。

 

 

1作目『 ある女王の死 』の「 遵葉の名前の由来 」もそうだけど、こちらも シャックスの「 トマトグレービー 」(ソース)の「 サイド・エピソード 」が 話に深みを与えてましたね。

 

という事で ドラマ性はあったし、ミステリーの要素も あったんだけど「 話 」としては ちょっと直球すぎたかな。

 

 

 

「 ゴールデンレコード収録物選定会議予選委員会 」

 

「 無人宇宙探査機 ボイジャー号 」に載せる、地球の情報を

地球外知的生命体に届けるための ゴールデンレコード。

 

その レコードに入れる「 写真 」を決めるための 予選会議が

行われる事に。

 

選ばれた 12名の委員会メンバーで 最初に指名された 日本人、

御竈門玖水( みかまど きゅうすい )は 事もあろうに 手塚治虫の漫画『 リボンの騎士 』を推すのだった。

 

委員長の 科学者:カール・セーガンは 当然 それを却下、次の人の出番となるが 玖水は その「 写真 」に ある指摘をする……。

 

 

「 サブカル 」や「 熱いオタク 」の描写が好きなので 玖水

「 漫画愛 」も オモシロかったです。

 

ミステリーとしては 少々こじつけ気味ではあるんですが、

ユーモア系なんで あまり気にならなかったですね。

 

あと、イイ話(?)も 入っているのも良かったな。

 

ちなみに、委員長の カール・セーガンは 映画『 コンタクト 』(97年)の「 原作 」を書いた実在する人でした。

 

私は 読後に それを知りましたが それを知っていれば もう少し面白く読めたかもしれません。

 

 

 

という事で、面白かった( オススメしたい )のは

 

『 ある女王の死 』『 ゴールデンレコード収録物選定会議~』

 

ですかね。

 

 

 

「 帆船軍艦の殺人 」  岡本好貴

 

本格ミステリー。

 

「 鮎川哲也賞 」受賞作品。

 

 

 

1795年、イギリス。

 

身重の妻を持つ ネビルは、フランスと戦っている 人員不足の

イギリス海軍に「 強制徴募 」され、戦列艦・ハルバート号の

「 水兵 」に就かされる。

 

出航して しばらく経った 新月の夜。

 

夜間当直のため 甲板の右舷で 座り込んでいたネビルの近くに

いたが 殴打によって殺される事件が起こる。

 

艦長から 事件の調査を任された ヴァーノン海尉だったが、

 

事件発生時は 真っ暗で 人の動きもなく、さらに 凶器と思われる 大工長の「 金槌 」のあった場所が 水兵が入れない 士官たちの区画だったため 難航。

 

そんな中、ネビルは「 ある計画 」に誘われ……。

 

 

 

帆船軍艦という「 特殊な場所( 環境 )」での殺人を描いた

ミステリー。

 

 

前半は「 帆船 」の説明や 海軍のアレコレの描写に かなりのページが 割かれているので 人によっては チョットつらいかも。

 

一応、各「 マスト 」「 帆 」「 ヤード 」の図も 載ってはいるんですが、帆船に 馴染がないので 想像しづらかったですね。

 

まあ、私は こういった「 専門知識 」が 他の作品の楽しみに

繋がる時があるので こういうのも キライじゃないですけど。

 

実際、この間の『 ドラキュラ / デメテル号最期の航海 』の鑑賞

においては 楽しみの幅が 広がりましたし。

 

他にも「 大砲発射 」なんかも 詳しく説明していて いろいろと興味深かったですね。

 

フランス艦隊との「 戦闘 」場面では「 砲弾の直撃 」のほか、

 

「 砲弾で 吹き飛んだ 木片が 人体に刺さる 」描写も 描いていたりと「 戦争モノ 」としても よく出来ていたし、

 

ネビルを軸にした「 話 」自体も 面白く読めました。

 

 

「 ミステリー 」としては 最初の事件の トリックが「 設定 」をうまく活かしていて すごく良かったですね。

 

ただ、選評にも 書かれていたけど、あっさりした説明描写なので カタルシスが 弱いのが 残念。

 

最期のヤツも いいトリック( 好き )だったけど、描写や 情報の不足で 納得感は チョット低めだったかな。

 

 

 

という事で、「 話 」と「 本格 」それと「 マメ知識 」としても 面白く読めました。