今月 読んだのは…
本格ミステリー
「 星詠師の記憶 」 阿津川辰海
安部公房「 選集 」
「 安部公房全作品8 」(『 燃えつきた地図 』)
安部公房
華文・本格ミステリー
「 君のために鐘は鳴る 」 王元
の3冊。
だけど『 星詠師の記憶 』は、ほぼ 先月からの 繰り越しなので
実質2冊。
来月も 分厚いヤツを読む予定ので 消化冊数は 少ないかも…。
まずは「 ミステリー 」2冊から。
「 星詠師の記憶 」 阿津川辰海
特殊設定・本格ミステリー。
故郷の村を訪れた、自主謹慎中の刑事・獅童( しどう )。
彼は 隣村の山にある研究所「 星詠会 」に所属する少年、香島
から ある人物に掛けられた「 殺人の容疑 」を晴らすよう頼まれてしまう。
能力を持つ “星詠師” だけが その山からしか取れない 紫水晶 に「 未来の映像を “自身の視点” で記録できる 」という話を訊かされた 獅童が その後に 見せられたのは、
「 星詠会 」の立ち上げの 切っ掛けになった 最初の星詠師、
石神赤司( いしがみ あかし )の “視点” で記録された 赤司が
殺される映像であった。
そこには 赤司の息子・真維那( まいな )が映っており……。
というような「 予知 」を扱った 特殊設定・ミステリー。
「 視点 」設定というところは チョット 西澤保彦チックでも
ありましたね。
本作は「 刑事・獅童による 赤司殺害の捜査 」の現在パートと、
“星詠師”の赤司と その兄、青砥( あおと )の「 石神兄弟 」を描いた 過去パートの構成となってます。
「 被害者視点の映像 」というところが ポイントなんですが、
「 水晶による 未来予知の映像 」( = 特殊設定 )の説明部分が 結構 長いんですよね。
そこに 面倒臭さを 感じる人もいるかも。
個人的には この間読んだ『 名もなき星の哀歌 』(結城真一郎)
みたいに ザックリ設定で いろいろと モヤっとするよりは
ある程度「 設定 」を固めてくれた方が 引っ掛かりが 少なくて読みやすいです。
ミステリーとしては「 容疑を晴らす 」話だからか「法廷モノ」の雰囲気を感じたかな。
少々下世話なところ( このへんも 西澤っぽかった )もあったり
しますが、「 予知映像 」には「 音声 」がなかったり、
事件の夜に「 月蝕 」があったりなど “お膳立て” も イイ感じだったし、
アレコレ推測しながら「 真相 」を探っていく過程も すごく良かったですね。
「 手掛かり 」関係も ちゃんとあったし「 設定 」を活かした
論理展開も 見事。
ちょっとした「 後期クイーン問題 」的な要素が あるところも 個人的には プラス。
ただ、かなり 入り組んでいるので そこは 人を選ぶかも。
ちなみに「 年間ベスト 」で見たような…と思い出して 読後に
調べたら、
2019年「 本格ミステリ・ベスト10 」で「 6位 」の作品でしたね。
という事で「 特殊設定・本格 」が好きなら 楽しめるかもしれません。
「 君のために鐘は鳴る 」 王元
華文・本格ミステリー。
中国語で 書かれた ミステリーの賞「 島田荘司 推理小説賞 」の受賞作品。
著者は 中華系・マレーシア人とのこと。
もしかしたら 軽く「 ネタバレ 」に触れるかもなんで 注意。
2017年に出版された、「 スマート・デジタル 」を取り入れた デジタル時代のミステリー小説『 データコクーン 』。
それから3年後、その著者は妻の自死により断筆を決意する…。
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孤島で目を覚ました 私。
しばらくして 船で 6人の男女が島に渡ってくるが、話しかけても 誰ひとり 私に気付かず、触ろうとしても はじかれてしまう。
私は 6人を追って建物に入り そこで インストラクター指導の
もと「 デジタル デトックス 」が行われる事を知る。
翌朝、2階の「 女性棟 」で ナイフが胸に刺さった状態の参加者が発見される。
部屋の「 窓 」と「 ドア 」、さらに 女性棟へのドアも 施錠されていたため自殺と思われたが……。
というような 一応「 クローズドサークル 」+「 特殊設定 」、さらに…な「 本格ミステリー 」。
個人的には すごく刺さった作品だったけど、
ネット・レビューを見た感じだと「 オーソドックスな本格 」は もとより「 特殊設定 」が好きでも ダメな人が多そうな感じ。
デジタル・デトックスが行われる孤島で 起こった「 殺人事件 」を、島で目を覚ました “存在を認知されない” 私の「 視点 」で
描く内容で、
「 密室事件 」も 結構 魅力的だったし「 水晶に囲まれた蓮池 」や「 男女2つに分かれた 宿泊棟 」など「 雰囲気 」的には 悪くはないんですが、
全体的に「 描写 」が不足していたり、甘かったり、軽かったりで わかり難く、読み進めづらいんですよね。
それでも それなりに 楽しく読めてはいたんですが、
ページ数が「 250頁くらい 」と少ない割に いろいろ足りないのがちょっと ストレスで「 早く読み終わりたい 」気分にもなりましたよ。
肝心の「 推理( トリック )」でも「 イイやつ 」も あったものの「 ダメなヤツ 」( アンフェア )も 多くて、
個人的には ギリギリで「 有り 」では あったけど「 納得感 」としても かなり薄かったので 徒労感を覚えたんですが…
最後の「 真相 」で 一転、いろいろな モヤモヤが晴れて( 著者の意図がわかって )読後は 気分爽快。
( あくまで 個人的には、なので注意 )
というか、こっちの方が おそらく メインだったんでしょう。
島田荘司の「 選評 」※ を読んでも そんな感じを受けたし。
( ※ 島田荘司が コレを選んだのは さすがの慧眼。
『 虚擬街頭漂流記 』の時は 考えがチョット古いような…
なんて思ったけど、しっかり追いついてた )
「 本格 」としても「 たどり着けそうな感じ 」は あったので そっちの満足感も まあまあ ありましたね。
( 一般的なヤツじゃないから 実際に 当てるのは ムリっぽい
気がするけど… )
ネット・レビューでは “あっち” だけで 評価している人がいた
けど、さすがに それは チョット的がズレてるような。
そもそも “あっち” が そのまま アレに繋がって…となる構成なんだし。
あと「 21世紀の 十角館 」※という「 帯 」の惹句も 読んでいる途中は 違うと思っていましたが、
「 十角館 」を「 新本格 」に変えると チョット しっくりきましたね。
( ※「 帯 」に書いてある『 十角館 』に 引っ張られて 本作を読むと 大ヤケドするので 注意 )
という事で 個人的に「 本格 」としては 高評価の作品でした。
それでも 難点が多いのは 確かなので( それには 理由があるが 読んでいて面白いかは また別 )オススメは しづらい感じかな。
変わった「 本格 」も好きなら チェックしてみてくださいね。
最後に 白字で 軽く「 真相バレ 」しときます。
気にはなるけど 絶対に、死んでも 本書は読まないぞって人だけ
読んでください。
ここから…
全ては 亡くなったミステリー作家の「 AI 」( = 私 )を組み込んだ「 自動生成 」で書かれた ミステリー小説だった…というオチ。
描写不足で わかりづらかったり( ヘンなところもある )、
トリックが唐突で アンフェアなのも「 AIが書いたミステリ 」だから。
「 謎 」も「 犯人当て 」ではなく「 なんで文章がヘタなのか 」=「 誰がコレを書いたのか 」の方だと思う。
そういう意味では ネットの低評価も あたっているんですよね。
ちなみに 惹句の「 21世紀 」云々は「 人間が描けていない 」などと 当時 批判されていた「 新本格 」と、
本書の「 AIが書いた 記号的なミステリー 」が重なって見えることから…というのは「 選評 」を読んで気付いた。
…ここまで。