残りの1冊。
「 安部公房全作品8 」 安部公房
タイトル通り 安部公房の作品集の 一冊で、
長篇1本、 短篇5本の 全6作品の構成。
お目当ては「 失踪三部作 」のひとつ『 燃えつきた地図 』。
ちなみに、今まで読んだ 安部公房は 図書館にあった 昔の書籍で、本作も 昭和47年に発行された本でした。
ここまで 古いと 感慨深いものがありますね。
( あまり読む人がいないのだろう、予想以上に キレイだった )
「 燃えつきた地図 」
半年前に失踪した 根室洋。
その妻、波留からの依頼で 彼を捜すこととなった 興信所の探偵の “ぼく” は、調査を続ける中で 波留や 彼女の弟に疑惑を覚え始める……。
若干「 ネタバレ 」に触れてるので 注意。
『 砂の女 』『 他人の顔 』は読んだので これで「失踪三部作」を全て読んだ事になります。
3作中で 本作が一番「 失踪 」らしい話だったかな。
(『 箱男 』も「 失踪 」感が強かった )
それと「 脚フェチ 」描写もありましたね。
本作は「 話 」のベースが「 探偵モノ 」と わかりやすいし、
“黄色いカーテンの女”( 個人的に命名 )の波留や 娼婦・男娼をまとめているヤクザでもある 波留の弟、
「 マッチ箱の謎 」や「 強請り 」など、一見 ハードボイルド調なので とっつき易さも 一番あるかもしれません。
まあ、主人公の “ぼく”の猜疑心が強く 悶々としているなど、
内容自体は いつもの 安部公房 でしたけど。
それと、調査を進めても 失踪者の痕跡すら見つからずウロウロする流れで 思ったよりも「 エンタメ性 」が低め※ でしたが、
( ※『 他人の顔 』よりは エンタメ性は あった )
これはこれで「 失踪者の謎 」が深まる形になっていて また違った面白さになってました。
「 話 」としては「 資格マニア 」の根室洋の失踪が「 謎過ぎ 」で 不穏かつ 不気味。
あまりに唐突なので「 解離性遁走 」っぽい感じを受けたけど、
「 車の整備の仕事 」をやりたかったのかも、なんて印象も持ちましたね。
せっかく「 錨(いかり)」である「 資格 」 をたくさん取って
“ここ” を「 寄港場所( 拠り所 )」にしてたのに 結局 “流されて” しまったのは 寂しいけれど、
上手くやっていけてそうな印象もあって 根室洋に関しては 心配する要素は あまり感じないんですよね。
一方、最後の方の “ぼく”の「失踪」は 何も持たない “徒手空拳” で なんとも 心もとない “船出”。
「記憶喪失」の理由は「 殴られた 」影響※ が強そうだったり、
( ※『 映画版 』だと「 殴打 」の影響を強く感じる )
そもそも 序盤で「 波留の顔の印象がぼやける 」なんて 病気の兆候らしきモノもあったけど よくわかりませんでしたね。
直前に「 クビ 」になった( 社会的な「 錨 」が外れた?)のが やっぱり 堪えたのかな。
その最後の “ぼく”は「 台地 」に「 自分の家がある 」と思っていたりと、失踪者・根室洋と「 同一化 」※ してるように見えるのが 面白かったですね。
( ※『 箱男 』でも そういうのがあったし。
あと、喫茶店の女性と 波留が「 重なる 」ようなところも。
…と思ったら『 映画版 』もそんな演出だった )
喫茶店の男の「 嫉妬うんぬん 」は わからなかったな…。
キャラとしては 後半の田代が メンドクサくて 印象に残りましたね。
そんな田代も ウソをつくことで「 自己を確立 」したり「人との繋がり( 居場所 )を構築 」してたのかも。
という事で 期待したほどでは ありませんでしたが こちらも
面白くは 読めたので 一安心。
ここからは「 短篇 」。
「 無関係の死 」
夕方ごろ 男がアパート2階の自室に帰ると 部屋に死体が。
思案の末に 男は「 他の人の部屋に 死体を移す 」ことを計画
するが……。
コレは『 砂の女 』と『 密会 』の時の書籍で 読んでます。
「 責任を押し付ける 」みたいのが テーマだと思うけど、
「 ミステリー色 」が 結構 強くて「 エンタメ性 」もあるので 読んでいて フツーに楽しいんですよね。
主人公の思考が時に滑稽で「 ブラック・コメディ 」としても
読めるし、「 サスペンス的な味わい 」もあるので 手軽に読む
のに オススメ。
「 人魚伝 」
「 海に沈んだ 廃船 」の サルベージ調査をしていた男が そこで
船に閉じ込められていた 緑色の人魚と遭遇。
その人魚に魅了された男は、新たに アパートを借りて そこに
人魚を連れていく計画を立てるが……。
という「 人魚を監禁する 」みたいな話です。
安部公房は「 犯罪計画を立てる 」流れが 結構 あるけど こちらも そんな感じでしたね。
面白いのが 後半の 思いもよらぬ 少し不思議(SF)な展開。
そこから さらに「 ホラー 」のような様相を見せたり、
終盤の展開や「 顛末 」も( 安部公房らしいヤツで )キレイにまとまっていて すごく面白かったですね。
こちらは「 ホラー・怪奇系 好き 」に オススメできそう。
「 時の崖 」
「 落ち目の ボクサーが 試合に挑む… 」話で おそらく「敗者」や「 競争社会 」みたいのが テーマっぽい。
「 試合に 集中しろよな~ 」と思いつつも ボクサーの「 嘆き 」に 哀愁と可笑しみがあって 面白く読めました。
最後の「 カウントダウン 」の進みの遅さって タイトルから
すると「 ずっと続くヤツ 」のような…。
それと 本作は 安部公房が 自ら監督して「 短篇映画 」になってるみたいですね。
こちらも 気になります。
「 カーブの向こう 」
坂の上の「 カーブの先 」の風景を忘れてしまった男…の話。
『 燃えつきた地図 』の最後の方は コレを 一部改稿したもの。
「 終盤 」以外は ほぼ そのままなので 2度読みの感覚が強くて少し しんどかったな。
『 燃えつきた地図 』は 前段があるんで いろいろと 想像の余地があるけど こちらには ナイため かなり難解。
(『 燃えつきた地図 』と 関連付けていいのかも 迷う。
「 バッジ 」を持ってたから 犯罪や ヤクザ絡み? )
漠然と「 記憶喪失による 逃避 」や「ふと感じる 孤独感 」の話と 個人的に解釈しました。
あと、喫茶店にいる男を “外から見る女” が異質で( 最後まで
素性が まったく明かされない )『 燃えつきた地図 』同様に
不気味でしたね。
「 子供部屋 」
結婚相談所の手引きで会った男女。
男には「 存在しない子供 」がいるというが……。
「 男女の対話劇 」かと思ったら「 妄想 」っぽい流れになり、そこから「 SF 」要素も出て来たりで 面白かったです。
という事で、思いがけず「 短篇 」が面白かったですね。
気が向いたら 他の作品も 読むかも。