今月 読んだのは…
本格ミステリー
「 牢獄学舎の殺人 未完図書委員会の事件簿 」 市川憂人
本格ミステリー・短篇集
「 ぼくは化け物 きみは怪物 」 白井智之
巷説シリーズ完結
「 了巷説百物語 」 京極夏彦
の3冊。
まあ『 了巷説 』が「 1100ページ越え 」なので
実質 4冊といっていいかも。
つうか『 了巷説 』さすがに 疲れた…。
まずは ミステリー2冊から。
「 牢獄学舎の殺人 未完図書委員会の事件簿 」
市川憂人
本格ミステリー。
「 星海社FICTION 」の レーベル内レーベル?
「 新本格カーニバル 」作品。
高校に通う ミステリー好き少年、本仮屋詠太( もとかりや えいた )は 音楽室で 謎の小説「 牢獄学舎の殺人 」をみつけ、その場で読むことに。
その内容は「 ある高校で起こる 3つの連続密室殺人 」を描いた
本格ミステリーで「 読者への挑戦状 」もあったが「 解答編 」は存在していなかった。
困惑する中 現れた 図書委員の少女に 取り押さえられた 詠太は
その少女、杠来流伽( ゆずりは くるか )から、
アマチュアのミステリー小説家、溝呂木厄藻(こおろぎ やくも)が 解答編のない 多くのミステリー小説を残しており、
謎の人物〈 配本師 〉が その小説を手引書として「 殺人教唆 」を行っている事を知る。
詠太は その「 溝呂木案件 」を調査する「 未完図書委員会 」の司書である 杠と共に 音楽室に 張り込むが なにも起こらず。
だが翌日、学校で「 牢獄学舎 」を模した「 密室死体 」が発見され……。
ネット・レビューの内容から 少々不安を感じましたが 面白かったです。
「 解答編 」がない、未完の本格ミステリー小説の「トリック」を解いた者が それを用いて「 殺人 」を行える。
…という「 設定 」は かなりマンガチックですが 面白いです。
ただ、「 トリック難度の矛盾 」( 犯人が解けるなら 捜査側も
解けそう…など )や「 そもそも 正解はあるの? 」など、
気になる所も 結構 見受けられるんですよね。
特に「 小説と ほぼ同じ場所、状況を捜す 」ところは さすがに
ムリ筋に思え 一瞬 萎えましたよ。
まあ、すぐ 受け入れましたけどね。
市川憂人は「 話 」が面白い作家だと思っているんですが、
本作は “ミステリーのための設定” らしく「 ミステリー寄り 」。
少し「 パズラー 」要素も感じさせる内容でもあったかな。
「 謎 」の方も、
未完小説「 牢獄学舎の殺人 」内の「3つの密室殺人 」
実際に 高校で起こる「 密室事件 」
と、多かったりで ミステリー気分も 高まりましたね。
「 本格 」としては、個人的に「 深読み 」系※ だったかな。
( ※ チョット 古野まほろ に近い感じ?)
そこらへんは 別にいいんですが、人物の行動面で 納得しづらいところがあったり、
「 いろいろ 盛り込み過ぎ、ひねり過ぎ 」かつ「 出来に バラつきがある 」のに 少し引っ掛かりましたね。
あと「 セリフの改行 」が 特殊?で 読みづらい個所も。
と、いろいろあったけど、個人的には「 深読み 」部分や 現実の
方の「 美術室の殺人 」の アレや コレは良かったし、
小説「 牢獄学舎 」の方の「 プール 」の アレも 結構 好きだったりで 満足感は 結構 ありましたよ。
という事で「 設定 」が 大丈夫なら 面白く読めるかも。
「 ぼくは化け物 きみは怪物 」 白井智之
本格ミステリーの短篇集。
全5編。
すべての「 話 」が面白かったですね。
それぞれ 趣向が違っているのも 良かったな。
「 SF要素 」 が強めの作品が多いけど、著者の懸念材料である
「 エログロ 」は “無い” ので「 SF系 」が好きなら 面白く読めそう。
「 本格ミステリー 」としては 相変わらず 少々強引。
ですが、他のよりは 自然な方だった思うし、「 手掛かり 」関係も 良かったので 個人的には 満足度は高めでしたね。
( 伏線・手掛かりの書き方 上手くなってる?)
という事で「 本格 」部分は 人を選びそうな感じですが、
「 話 」や「 オチ 」は 面白いと思うので 個人的には フツーにオススメしたい作品ですね。
「 最初の事件 」
こわくないです。あいつが犯人を突き止めてくれるはずだから。
「 あいつ?」
うちのクラスには名探偵がいるんです。
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独裁政権の共和国。
解放軍に追い詰められた 大佐は テレビを使い「 この兵器は時代の流れを変えるだろう 」と演説する…。
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冬休みに 名探偵になることを決めた 小学生の リョータ。
2月になって ついに コハダの遠足代が盗まれる事件が起きるが……。
あんまり内容を書けないヤツ。
他の作品も そんな感じなので( ネタバレに触れないように )
モヤっとした感想です。
小学生探偵・リョータの件に「 冒頭の事件 」や「○○の脱走」がどう絡んで来るのかが 読みどころ。
主人公が 探偵を目指す小学生って事もあってか 少し 麻耶雄嵩っぽい感じがありましたね。
( あと、“イケてたとき” の 西澤保彦っぽい要素も…? )
「 本格 」としては「 2つの池と その周辺 」の状況が わかり
難く、謎解きに 納得しづらかったのが 惜しい。
それでも「 手掛かり 」自体は 良かったし、何より「 話 」の
構成が 巧いんですよ。
「 タイトル回収 」も見事に キマってましたね。
「 大きな手の悪魔 」
脅威となる生物を滅ぼしてきた 高次元生物が 地球に到来して
伝えてきた「 人類殲滅 」の条件…
地球を「 16のエリア 」に分け、順番に そのエリアから選ばれた 64人のサンプルが「32日間」船内で生活しながら「 知能計測 」を行う。
その知能が 基準以上なら そのエリアは 攻撃はしない。
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エリア9の地域にいる 元警官の 水田時世( みずた ときよ )は
そこで 退職した かつての上司、楠神新平(くすかみ しんぺい)と再会する。
楠神は 2人の退職の原因となった 津野貴美子を サンプルとして「 船 」に送り込む作戦を立てており 彼女も それに同意しているという。
だが、その条件は 時世と 彼女の娘も一緒に サンプルとして船に乗り込む事だった……。
紳士な異星人、“ゴート” による「 地球人 殲滅計画 」に
警察官の頃の 時世が関わった「 津野貴美子の事件 」が絡む
内容。
てっきり「 32日間の知能計測 」を 上手く やり過ごして
「 基準値以上を目指す 」みたいな展開だと 思っていたら 少し 違ってましたね。
前半の「 地球人の抵抗 」部分も SFらしくて面白いんですが、
時世の過去パート「 津野貴美子の事件 」も エゲツなくも ドラマ性があって すごくイイんですよ。
「 本格 」の要素も 当然あるけど、やはりこちらも 全体の
「 構成の巧さ 」( 話の面白さ )が光る内容だったかな。
「 奈々子の中で死んだ男 」
郭町・黒塚で 起こっている “蝮婆”( まむし ばばあ )による
連続毒殺事件。
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黒塚の「 南天楼 」の遊女、奈々子に「 身請け 」の話が出るが、妓夫・四郎から その相手の “裏の顔” を知らされる。
奈々子は 騒ぎに乗じて 黒塚から逃げようとするが失敗し 転落、仮死状態に…。
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奈々子が目を覚ますと 男と交わっていた。
その男は 奈々子が 生き返ったことに 驚いた後、ゲロを吐き倒れ込んでしまい、奈々子も 頭を打って気絶…。
後に その男、ヤクザの栲象( たくぞう )が 死んだと聞かされた 奈々子だったが 彼女の前に 幽霊だという栲象が現れる。
栲象は「 南天楼 」に来る前に 立ち寄った3件の「 楼 」で飲んだ お茶のいずれかに「 毒茶 」が入っていたと推測、
奈々子に その犯人 “蝮婆” を見つけてほしいと 頼むが……。
「 どこで 毒が盛られたのか 」という内容。
「 手掛かり 」関係は 比較的 わかりやすい…と思うんですが
私は ダメダメでした…。
「 真相 」は “まずまず” だったけど、終盤に生まれた「 謎 」に困惑させられてからの あの「 オチ 」には ヤラれましたね。
「 モーティリアンの手首 」
採りつくされた「 モーティリアンの化石 」を 採掘するため
ポスタ島に やってきた「 節足生物 」の ムリロ、シウベラ、
プージャの3匹。
8メートル掘ったところで発見した「モーティリアンの左手首」の化石が気になった プージャの提案で さらに 掘ってみると、
16メートル地点で「 左前腕 」が、さらに 18メートル地点
で「 左腕がない全身 」の モーティリアンの化石が見つかる。
3匹は なぜこんな状態で化石になったのか 推理を始める……。
という、ちょっと変わった設定のミステリー。
少し つっこんで説明すると、3万年が過ぎた「 地球 」が舞台で、モーティリアンとは「 人間 」のことです。
「 本格 」部分よりも 思いもよらない 皮肉たっぷりで ブラックな「 オチ 」が印象に残りますね。
ちなみに レビューを読んで「 わからない人 」がいたのを知り、別の意味で ショックでした…。
「 天使と怪物 」
牧師の元から離れるため カーニバルの「 見世物小屋 」を訪ねた “天使の子”・ホリーと ウォルトの姉弟。
しかし オーナーが ホリーの「 予言 」を気に入らず 断られてしまい、さらには その帰りに ホリーが 事故で亡くなってしまう。
ホリーは カーニバルを出る際、いずれ 小屋に訪れる「 災い 」の「 災いの景色に 含まれるもの 」と「 災いを もたらす者 」の 2通の「 予言の手紙 」を残していた。
2年後、「 見世物小屋 」で働いてる ウォルト。
ウォルトは カーニバルにやってきた 牧師に見つかってしまうが、オーナーは 牧師からの「 ウォルトの買い取り 」を断る。
その翌日、オーナーの 幼い姪が 浴室で「 浴槽につかり、胸を刺された状態 」で発見される。
だが、浴室には ドアと 窓に カギが掛かっていて……。
「 見世物小屋 」と「 千里眼 」を描いた 人間サスペンス映画
『 ナイトメア・アリー 』(21年)と似てると思ったら
「 参考文献 」として 原作小説の方が載ってましたね。
「 本格 」としては ちょっと マニアック気味かも。
そこらへんに 若干の 引っ掛かりを覚えたんですが、最後に判明
した「 動機 」には 愕然としましたよ。
(「 帯 」に書かれた「 心を掻き乱す 」は 伊達じゃなった? )
「 タイトル 」の方も てっきり アレと ソレの事だと 思っていたら コッチの方でね…。
『 最初の事件 』の「 動機 」も好きだけど こっちの方が それよりも 好きかも。
という事で「 エログロ 」は 無いので( エグいのはあるが )
「 本格 」に関係なく 手軽に読んでみてほしいですね。