今月 読んだのは…
本格ミステリー
「 黄土館の殺人 」 阿津川辰海
特殊設定・連作短篇ミステリー
「 忍鳥摩季の紳士的な推理 」 穂波了
時間と歴史を巡る 短編集
「 嘘と正典 」 小川哲
の3冊。
今月は バランスがよかった。
まずは「 ミステリー 」2冊から。
「 黄土館の殺人 」 阿津川辰海
本格ミステリー。
『 館四重奏 』シリーズ3作目。
内容云々の前に この暑くて 集中できないに時期に「 約600ページ 」は 失敗でした…。
12月31日。
小笠原は 世界的アーティスト、土塔雷蔵( どとう らいぞう )を殺すため 土塔家が集まるという「 荒土館 」へと向かうが、
地震発生による 土砂崩れで 道が寸断されてしまい「 館 」まで行けなくなってしまう。
復讐を諦めかけた 小笠原だったが「 土砂の向こう側 」にいた
人物から「 交換殺人 」を持ち掛けられる。
それを受けた 小笠原は「 交換殺人 」のため町へと戻り 旅館
「 いおり庵 」に 相部屋で宿泊することになるが、その同室者は
探偵を自称する男だった…。
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土塔家の長男、黄来( こうらい )と結婚するという、元探偵の飛鳥井( あすかい )から手紙を受けて「荒土館」へと向かう、
田所( たどころ )と 探偵・葛城( かつらぎ )と 三谷の3人。
しかし「 館 」を目前して起きた 地震による 土砂崩れで 道が
寸断されて 葛城だけ 町側に取り残されてしまい、彼だけは 町に戻ることに。
一方、崖に囲まれる形で建てられた「 荒土館 」側で 孤立状態となった 土塔家の面々と 飛鳥井、田所と 三谷。
そんな中、翌日に「 館 」の中庭に立つ「 銅像 」が掲げる剣に突き刺さった状態で 雷蔵が発見され……。
「 町の旅館〈 いおり庵 〉での 小笠原による殺人計画 」と、
「 土砂で閉じ込められた 荒土館で起こる 連続殺人 」の構成。
こういうのは だいたい交互に書かれがち(?)ですが、本作の方は 第1部で「 小笠原の殺人計画 」、
次の 第2部で「 荒土館の殺人 」と、はっきり分かれています。
そこらへんも 気になるところですが「 地震 」(余震)という
予測できない災害が 絡んで来るのも ポイントになってます。
「 話 」の方は「 うじうじする探偵 」が やっぱりノレませんでしたね…。
(「 あとがき 」によると「 災害の中でも 力強く立ち上がる人の姿を 名探偵に仮託して 」いるとのこと )
そういう意味では 第1部の「 倒叙モノ 」展開が コメディな趣があって 面白く読めたかな。
「 本格 」としては「 雷蔵殺害 」の “最初のヤツ” が ケレンが
ありつつ 納得感( 再現できそう感 )もあって良かったですね。
まあ、“後の方” では 納得感は薄まって※ しまいましたけど…。
( ※ 片方だけじゃ、上手くいかなそうなんだよな )
気になっていた「 死体の出現 」も 結局は アレで( 家族なら
気付きそうな気が… )ガッカリ。
まあ、○○を前面に打ち出した、という事らしいので(?)
それなりに 受け入れてはいますけどね。
その他、気になるところが 結構 あったんですが、
( 読者としては 範囲を どこまで広げて 考えればいいのか
わからないんだよね… )
「 伏線・手掛かり 」に関しては “気を使っていた” ので 悪くは
なかったです。
あと、比較的「 犯人 」が わかり易い方だと思いますが、
こちらの方は 特に 不満は なかったですね。
というか「 要素の多さ 」を踏まえれば ちょうど 良かったの
かなと。
そもそも「 本格 」なので “怪しい” だけでは ダメですし。
( まあ、フツーに殺した方が リスクが少なったような…
とは 思ったけど )
という事で いろいろ書いたけど、好きなトリックはあったし
「 雰囲気 」も 良かったりで 総じて楽しくは 読めましたね。
「 忍鳥摩季の紳士的な推理 」 穂波了
「 超常現象 」設定( 特殊設定 )の 連作短篇・ミステリー、
全4話。
ちなみに、最初の3話は『 小説推理 』が初出、最後の4話目が「 書下ろし 」となっています。
暑いので 軽めに読めそうな、ページ数が多くない作品からの
選択。
…ということで あまり期待は していなかったんですが、
「 昔の 西澤保彦 作品 」( チョーモンイン・シリーズなど )を彷彿とさせる 設定&内容で すごく好みでした。
さらに「 超常現象 」自体にも 少し突っ込んだ 設定が加えられていたり、
「 現象の発現 」や「 動機 」を巡る「 ドラマ 」も ちゃんとあったのも 良かったですね。
摩季と 先生のミステリーらしい「 師匠と 弟子?の やり取り 」も イイ雰囲気。
「 本格 」としても「 手掛かり 」が 自然かつ、巧みに描写されていて 納得感がありました。
まあ、そこは「 浅読み派 」として「 手掛かり・伏線 」の提示が “ちょうど良かった” ってのも ありますが。
あと、短篇ということで「 SF 」「 ミステリー 」寄りで
「 物語性 & キャラ 」 が薄めなところは 人を選ぶかも。
何にしても 個人的に 総じて 満足度は 高かったですね。
総ページ数が「 280ページ弱 」と少なく 手に取りやすいので「 SF( 少し不思議 )系・本格ミステリー 」が 好きな方に、
あと フツーに「 エンタメ・ミステリー 」として オススメしときます。
第一話「 白銀のループ 」
親戚の結婚式を 前乗りして スキーを楽しみ、その後 ペンションに泊まった 忍鳥摩季( おしどり まき )と 先生。
しかし夜になって ペンション2階に「 空間と 空間が繋がる 」
“空間のループ” が発生、1階へ降りたり 外へ出ることが 出来なくなってしまう。
その「 空間のループ 」は 入り口と 出口がある「 一方通行 」になっており 通り抜けることは 出来るが、
不安定なため ランダムに「 空間ループが途切れる 」事があり、
さらに「 ループの途切れ 」の時、ループの間に 物体があれば
「 切断される 」ことも判明。
とりあえず 様子をみることにした 面々だったが、翌日の朝
「 入り口 」の非常階段で 切断された「 従業員の下半身 」が、
「 出口 」である倉庫で「 従業員の上半身 」が発見される。
「 空間のループ 」を使った 殺人を疑う 摩季と 先生だったが
「 途切れ 」の予測はできないはずで……。
という「 超常現象を利用した殺人 」の内容。
「 2階から出られなくなる 」という状況には 西澤保彦の
『 幻惑密室 』を思い出しましたね。
ページ数の兼ね合いか、描写が少し弱いのが 残念なんですが、
「 手掛かり・伏線 」の作り方が うまく、
「 トリック 」自体も ちょっと厳しい感じはあったものの 納得感は 高かったです。
第二話「 月夜のストップ 」
「 超常現象 調査士 」の資格を取った 摩季は「 館内の時が止まる現象 」を調査するため 先生と共に 土岐家に赴く。
高所から飛び降り 意識を失っている 土岐一葉( とき かずは )が 起こしていると思われる「 ストップ現象 」を調査中、
「 天蓋ベッド 」で眠る 一葉が「 複数の矢 」に射られて 殺される事件が起きる。
部屋には 摩季たちが居た事ことから「 ストップ中 」に 殺人が行われたと思われるが、
「 ストップ中の30分 」は 館内の物体は 人を含めて「 動かすことはできず 」、「 外からも 侵入できない 」のだった……。
この回から「 超常現象 調査士 」、警察の「 超常現象 対策室 」
という設定が加わり「 超常現象が 当たり前に起こる 」世界観になってます。
話の方は「〈 時間が止まる館 〉で 起こった 衆人環視の殺人 」の内容。
「 動かせない ”天蓋カーテン” の壁 」「 複数の矢 」と ケレン味
が 強めなんですが、
「 設定 」が ガチガチで「 手掛かり 」関係も わかり易かったりと「 解けそう感 」も 強めなんですね。
まあ、私は ダメでしたけど…。
第三話「 怪物とコントロール 」
マンション駐車場で起こった、刃物を使った 男性の殺害事件。
犯人、綿部善一( わたべ よしかず )は すぐに逮捕されたが、
供述では「 僕は 怪物になっていた 」と発言。
後に 綿部の車に乗っていた 彼の5歳の娘、ましろに「 読んでいる絵本の内容を 近くの人に 再現させる 」特殊能力があり、
綿部の殺人も ましろが読んでいた 絵本「 木こりと怪物 」を
綿部と 被害者が再現したものだったと 判明するが……。
「 絵本再現現象と それによる殺人 」という内容。
今回は「 本格 」は 少々弱めかな…と思いきや しっかり練られていましたね。
まさか あの「 やり取り 」が 伏線だったとはな~。
「 絵本の内容の再現 」という設定も 独自性があったし、
ましろの「 能力の発現 」のドラマも 切なかったりで、
先に2話より ケレン味はないけれど 面白かったですよ。
第四話「 私と彼のタイムリープ 」
入院している 父を見舞うため 離島へとやって来た 摩季。
だが、病院で 父と対面中「 女性の飛び降り 」に遭遇、しばらくして「 病院へ向かう前 」に時間が戻っていた。
しかも どうらや その事を認識しているのは 摩季と 女性を落とした犯人?だけらしい。
3回目の「 タイムリープ 」、ある事情を知った 摩季は この
「 現象 」を 先生に打ち明けるのだが……。
みんな大好き(?)「 タイムリープ 」の話。
この話は「 SFドラマ 」の傾向が強い内容になってます。
それでも「 動機 」と「 顛末 」は 好みのヤツだったし、
読後には “2つに掛かっている”「 タイトル 」に ジワジワ来たりで 読後感も 良かったです。
まあ、ちょっと強引な展開も 見受けられましたけど。