残りの ミステリー2冊。
「 月蝕島の信者たち 」 渡辺優
本格ミステリー。
著者は『 私雨邸の殺人に関する各人の視点 』の人です。
浮世離れした印象を持つ 天羽(あもう)を教祖とした 新興宗教「 BFH( 善意の和 )」が募った クラウドファンディングの特典、孤島「月蝕島」で行われる「 礼拝施設 見学ツアー 」。
運営側の天羽たち3人と、様々な思いを持つ SNS配信者、
モデル、 学生、 主婦、 会社員、 アルバイト、 唯一「BFH」の事情を知っている 医師の投資家の7人、計10名で 始まった 3泊4日のツアーだったが、
初日から 配信者の塙( はなわ )の 無遠慮なふるまいにより
その場の「 和 」が乱れる事に。
その塙が翌朝に ヴィラ( 宿泊施設 )から離れたところにある
礼拝堂で「 花を散りばめられた 斬首死体 」で発見される。
さらに、明らかに他殺のはずだが クモの巣や ホコリの状態から
礼拝堂への 出入りの痕跡は 見受けらなかった。
携帯が圏外のため そのまま ツアーを続行、ヴィラから離れたドームでの「 個人面談 」が始まるが またしても 殺人が起こってしまう。
「 神や善意を “思い出していない” から殺された 」と考えたり、ツアーに参加できなかった “田中” の存在を疑う者が出るなか、さらに 殺人は続き……。
という「 孤島モノ 」。
『 私雨邸 』が 結構 面白かったから期待したんだけど…
「 話 」は「 ベタなミステリー設定 」という事で フツーに、
楽しくは 読めたんですが 肝心の「 本格 」部分が 弱すぎ。
最初の「 殺人 」のアレコレは あっけないし( そもそも 密室の方は なくてもいいような… )、
後半のヤツも「 伏線 」が 弱くて( アレで 気付けるか?)だったりで 納得感は ナシ。
「 宗教 」設定の絡ませ方も「 “善性” を持たない者 」のところは イイと思ったものの 全体を通してみると 薄いんですよね。
「 動機 」の方も 好きではあったけど 唐突感があったし。
「 息子依存の悩み 」や「 拠り所を求めて… 」などなど、
描かれる「 各人の心情 」なんかは なかなか良くて 面白くなりそうな雰囲気だったんだけどな。
各人の思惑から「 動機 」が 浮かび上がる…みたいのも 無かったし。
あの人の「 秘密 」も 空回り気味でね。
でもまあ「 信じる・信じてしまう・信じたい 」というテーマの話しては まあまあ だったと言えるかも?
( “何か” を信じているという意味では 誰もが 信者なんだね )
という事で 個人的には イマイチでした。
「 盟約の少女騎士( スキャルドメール )」
陸秋槎
中世ファンタジー・ミステリー。
「 建国戦争 」の末、火の神を信仰する「 エルドゥリア 」と
海の神を信仰する「 ゼーラント 」に分かれた ヴィグリド大陸。
ゼーラントの長子・アーシュラは、国王が エルドゥリアから
王妃を迎えたのを機に 王宮を出て 湖畔にある「 離宮 」へと
移り 女性だけの「 騎士団 」を設立していた…。
┇
王都での「 新緑祭 」が近づくころ、騎士団のサラは 怪しげな
「 住人の “入れ替わり” 」の情報を得る。
サラたち騎士団が 元の住人と 入れ替わっていた「 賊 」を捕らえに行くが 追い詰められた賊は 各々自死を選び 全員死亡。
さらに 賊のひとりは「 七短剣の聖女 」なる言葉を発していた。
新たな情報から「 賊 」がいる荘園に 踏み込んだ 騎士団だったが、またしても 賊たちは死を選び……。
「 本格 」を書いている 陸秋槎、出版が「 星海社 FICTION 」という事で「 新本格カーニバル 」だと思っていたら フツーのヤツでした…。
あと、上の あらすじでは「 ミステリー 」を強調してますが、
実際は「 信仰の違う国同士の 王位継承を巡る 」話が主軸で
ミステリー色は 薄め。
作品の傾向としては「 ラノベ 」というか、若者向け( ヤングアダルト )っぽい感じで、陸秋槎らしく(?)ほぼ「 女性だけ 」しか出てきません。
ちなみに、最初の方で 主要人物たちが「 美少女イラスト 」で
紹介されていました。
内容の方は「 中世風 」の世界を舞台とした ファンタジーなんだけど、魔法とか そういうのは 一切ナシ。
あと「 殺人が起こった事で 王女の立場がピンチに! 」みたいな ミステリー的な展開もナシ…。
そういう事で「 王位継承 」を巡る「 策略 」や「 綱引き 」という「 政治サスペンス 」の話だと思ったんですが、
そこも「 宗教の違い 」や「政略結婚」なんてのはあるものの、思ったより 淡泊。
その割に 登場人物が多く、かつ「 設定 」も 細かく描写されている( 情報量が かなり多い )ため「 話 」が なかなか進まず、
読んでいて 気持ちも 上がりませんでしたね。
基本 いい人ばかりと、比較的「健全」な内容なのも 地味にキツかったり。
「 前半 」の終わり頃に「 戦闘 」と「 “七短剣の聖女” の謎 」が出て来たので「 話 」も進むかと 思ったんですが、また もとの調子に戻るんですよ。
それでも「 後半 」の展開は それなりに 盛り上がったし、
「 終盤 」の アノ展開にも 正直、ワクワクしましたけどね。
つうか「 アノ展開 」を 後半に 持ってきてほしかったな。
そうすれば 中途半端な「 締め 」にならずに済んだのに…。
あと「ミステリー」の方、「 七短剣の聖女 」の謎( 真相 )※は 意外性があって 個人的には “好みのヤツ” でしたよ。
( ※「 あの解釈 」でいいのか 確信が持てず ネットで確認 )
という事で「 シリーズ 」として 続くのであれば あれでもいいと思うけど「 単発 」では 消化不良という感想かな。
まあ、個人的には「 七短剣 」の真相が オモシロかったので
取り敢えず「 これで ヨシ 」という事にしときましたけど。