残りの「 本格ミステリー 」2冊。
「 私雨邸の殺人に関する各人の視点 」
渡辺優
本格ミステリー。
タイトルの「 私雨邸 」は「 わたくしあめ てい 」と読みます。
ちなみに「 私雨 」とは
「 ある限られた地域にだけ降る にわか雨 」の事のようです。
渡辺優 作品は『 ラメルノエリキサ 』を読んでますね。
( 内容 ほとんど 覚えてない )
その『 ラメルノ 』が( たしか )「 本格 」じゃなかったので
期待はしていなかったのですが、こちらは「 本格 」でした。
ネットで知り合った 雨目石昭吉( あまめいし しょうきち )
から 孫たちとの集まりに 招待された「 ミステリ同好会 」の
会員・二ノ宮( にのみや )は、先輩の 一条 と共に 山奥にある「 私雨邸 」を訪れる。
その夜、雨の影響で 起こった「 土砂崩れ 」により
「 クローズドサークル 」状況になったことに 歓喜する 二ノ宮 だったが、次の日の夜に「 昭吉が 殺害される 」事件が起きた事で さらに……
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「 私雨邸 」を撮影して すぐに 帰る予定だった「 雑誌編集者 」の 牧(まき)。
だが そこに 足を挫いた男、水野が 現れたため そのまま 雨目石家の食事に参加する事に。
さらに「 土砂崩れ 」が起きたため 帰れなくなってしまう……
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祖父・昭吉の 期待に沿えない、孫の 梗介( きょうすけ )。
時に “内なる声” で 悪態を付く 梗介は「 クイズ感覚 」で事件に
首を突っ込む 二ノ宮 たちに 嫌悪感を覚える……
ミステリー・マニアの大学生、二ノ宮。
昭吉の孫、杏花(きょうか)の同級生だった 牧。
昭吉の孫、梗介。
基本、この3人の視点で描かれる形で 話は 進行するんですが、
この 彼らの率直な「 心情 」の描写が すごく 良かったですね。
不謹慎かつ、上から目線の ミステリー・マニア:二ノ宮 も
最高( 最低 )で良かったけど、
個人的には 表面的に フワッと軽い性質を “演じている” 梗介が 抱える「 祖父への わだかまり 」や「 冷めやすさ 」の心情描写に 心惹かれましたよ。
あと、コレは 最後の「 心情 」とも上手く繋がってましたね。
「 本格 」としては「 あらすじ 」からわかる通り
オーソドックスな「 クローズドサークル 」もの。
「 謎 」としては「 密室 」、「 手形のない凶器 」、
「 ダイイング・メッセージ 」などで、
3人の情報(手掛り)を統合して 読み解いていくのが 特徴的。
そこから生まれる「 ミステリー的な雰囲気 」も ワクワクしましたね。
ですが、終盤の「 推理 」展開は かなり良かったものの、
「 真相 」の方は 思ったより「 論理ガチガチ 」って感じでは
なかったかな。
あと、しっかり フォローは入っていたけど、一部 拍子抜けするところも。
それでも 総じて「 本格度 」は まあまあ高いと思いましたね。
「 その謎を解いてはいけない 」 大滝瓶太
全5話の構成( 連作 )の 本格ミステリー。
「 タイトル 」と「 遠田志帆 ※の カバーイラスト 」から
何となく「 都市伝説 」や「 オカルト 」、「 忌まわしい因習 」系の ミステリーかと 思っていましたが、まったく違いました。
まあ、最初のは 一応、「 因習モノ 」ですが…。
〔 ※ 少し前に気づいたけど、この間 読んだ
『 名探偵のはらわた 』の カバーも 遠田志帆 だった。
ちなみに『 はらわた 』の表紙は 作中映画の「 美少女化 」した 殺人鬼のひとり、向井鴇雄。( 読み終わった後 気付いた )
主人公の はらわた( 男 ) が表紙だと「 絵にならない 」ので
美少女化・殺人鬼 にしたんでしょうね 〕
「 作品の方向性 」としても、
探偵が「 黒マント装束 」で「 右目が翠色 」、さらに 名前も
暗黒院真実( あんこくいん まこと )という設定から、
「 キャラ( ライト系 )強め 」かと 思ってもいたんですが、
「 パロディ的 な 要素 」は あるものの、こちらも 少し 違ってました。
なんにしても「 タイトル & カバー 」から受ける印象とは
「 真逆 」だとは思うので「 タイトル 」に惹かれて 手に取ると
人によっては “ヤケド” するかもしれません。
軽く「 設定バレ 」すると( といっても 読んですぐ わかるが )
暗黒院は「 コスプレ探偵 」で「右目の翠眼( 邪眼 )」も
カラコン、いわゆる「 中二病 」の探偵です。
彼の助手、高校生の 小鳥遊唯( たかなし ゆい )も 左目が
「 翠色 」なんですが、こちらは生まれつきの オッドアイ。
小鳥遊の方は その「 いかにも フィクション的 」な「 苗字 」と「 オッドアイ 」により 悩んでいて…みたいな感じですね。
もう少し 突っ込んで書くと「 他者による カテゴライズ 」や
「 自己アイデンティティ 」、「 思春期 特有の悩み・拗らせ 」( 普通でいたい、いたくない )要素がある…でいいのかな。
これらの説明から わかる通り「 イタい 」内容なんですが、
(「 自分の好きな モノ を貫く 」話でもあるが )
個人的には クスッっと「 笑える 」ところが 多くあったし、
「 ミステリーの雰囲気 」自体も 悪くなく、
「 人間、青春ドラマ 」的な部分も 意外と 深かったりで、
肝心の「 本格 」部分の 納得感が “低め” に感じたものの、
面白くは 読めましたね。
何となく ドラマ『 トリック 』( 堤幸彦 作品 )の 空気を感じたかな。
ただ「 笑える箇所 」の ほとんどが「 中二病 」的な描写なので
「 中二病 」的な「 ネタ、ワード 、立ち振る舞い 」を知らないと まったく 面白くないかもしれません。
第一話「 蛇怨館の殺人 」
「 採石場 巡り 」で迷ってしまった、探偵・暗黒院真実
( 本名:田中友治 28歳 )と 助手の 高校生・小鳥遊唯。
ふたりは ひょんな事から 過去に 曰くのある「 蛇守家 」が住む「 蛇怨館 」に 泊まらせてもらう事になるが、翌朝 蛇守富雄 が 死体となって発見される。
その死体は「 蛇の祟り 」を模したかのように「 手足 と 頭部 」が切断されていた。
暗黒院
「 解放するぞ…… 真実を見通す 我が翠色の魔眼をな……! 」
いかにも「 短篇 」ってな感じの内容で、
「 暴いちゃいけないモノ 」を暴く 暗黒院の活躍(?)は
ある意味 一番 オモシロかったですね。
ですが、この後の「 話 」は「 暴き 」が 少々「 おさえ目 」になっていて チョット残念でも ありました。
第二話「 いるんだろ?出てこいよ 」
「 麻雀探偵 」の著者、一色緑(いっしき みどり)の行方不明。
小説家・一二三( にのまえ ふみ )から 彼女の捜索の依頼を
受けた 暗黒院は、麻雀をしながら 情報を得るため 小鳥遊を含めた3人で 一色緑の 編集担当、中平の タワマンを訪れる。
が、そこには 突っ立っていた 編集者・本場( ほんば )と、
雀卓に 伏せた格好の 中平の死体があった。
その卓には「 緑一色 」聴牌、「 発 」待ちの 十三牌が 並んでいて……。
ここから シリアスな要素も 少し 加味。
「 コメディ的な部分 」も 面白かったんですが、
「 小説を 読み始めた者 」と「 小説を 書き始めた者 」、
両者の「 軌跡ドラマ 」が すごく 良かったですね。
ただ、「 動機 」は チョット弱かったかな。
ちなみに 一二三 も「 コスプレ 」キャラで、レギュラー入りもします。
第三話「 どちらが主人公を殺したか? 」
「 助教が殺される 事件 」が起こる。
被害者の爪から DNAが採取されたが、容疑者は 双子であった。
「 双子のうち どちらかが 犯人 」という、ミステリーらしい
内容ですが、こちらも 天才・双子の「 ふたり で ひとり 」の
箇所が 読み応えありましたね。
この回から 出てくる、暗黒院の ライバル?で、
白いタキシード & シルクハット で 片眼鏡( 怪盗キッド 風 )の 白日院正午( はくじついん しょうご 本名:鈴木寛信 )が
かなり ウザいんですが、
個人的には 一番 好きな キャラでも ありましたよ。
「 コスプレ 」キャラが 計3人になり 渋滞気味ではありましたが。
白日院の 口癖、「 ○○・ディテクティブ 」は 使ってみたいかも…。
第四話、第五話
「 黒歴史について語るときに 我々が語ること 」( 前後編 )
廃墟で発見された「 画鋲まみれの 黒猫の死体 」と
「 春 」の文字。
小鳥遊唯の 同級生で、探偵部「 虚無の闇 研究会 」の 天野川
から「 黒猫事件 」の捜査協力を依頼された 暗黒院。
現場に向かった 暗黒院たちは そこで 新たな「 黒猫の死体 」と「 夏 」の文字を発見する…。
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二年前、小鳥遊と 天野川は スクールカースト上位の女子、
長野( ちょうの )の「 上履き紛失 事件 」を解決。
二か月後、ふたりは 長野から いつも一緒にいる 綾野(あやの)の “ダサいあだ名” の出所の相談を受けるが……。
「 黒猫事件 」に「 小鳥遊と 暗黒院の 出会い 」や
「 イケてない 天野川 」等の エピソードが 盛り込まれている
「 青春 」要素が 強めの内容。
ちなみに「 事件 」の方には「 密室殺人 」があります。
( 一応、「 読者への挑戦状 」もあり )
最後は まさかの「 格闘ゲーム 」展開?※ ですが、
個人的には「 格ゲー 好き 」なので かなり 楽しかったですね。
( ※『 KOF 』 あと、ウメハラ の 名言もあったり… )
という事で まとめると、思っていたのとは 全然 違いましたが
個人的には 楽しく読めましたね。
ですが「 ネット・レビュー 」は かなり低め。
おそらく、かなり「 人( 年齢?、趣味趣向?)を選ぶ 」作品
だと思われるので、
読むときは「 タイトル 」同様、注意した方が よさそうです。