残り、小説2冊。
「 ゴリラ裁判の日 」 須藤古都離
人間ドラマ ならぬ、ゴリラ・ドラマ。
「 メフィスト賞 」受賞作品。
アフリカ、カメルーンの 動物保護区。
「 類人猿 研究所 」の研究者と、彼らから 手話を教えられた
母ゴリラの教えにより「 人間の言語 」を理解し「 手話 」も
使う事が出来る メス・ゴリラの ローズ。
「 群れ 」で 暮らしていた ローズだったが、ある出来事を
切っ掛けに 研究者の「アメリカ 行き」の提案を受け カメルーンを離れて アメリカの動物園で 暮らす事に。
だが ある日、柵の内側に落ちた 子供を助けるため、ローズの夫が 撃たれて 死んでしまう。
ローズは 動物園を 訴えるのだが……。
気になっていた作品。
てっきり バチバチな「 裁判モノ 」だと思っていたら、
始まってから ほどなく、裁判をすっとばして 陪審員のくだりになり、すぐ「 敗訴 」。
その後は カメルーンでの「 群れ 」&「 研究者たち 」との暮らしを描いた「 過去 」の話になるんですが、コレが 結構 長かったですね。
ゴリラたちの 森での生態は 興味深く読めたし、
唯一「 コミュニケーション能力 」がある ゴリラ・ローズの
「 群れでの 孤独 」も なかなか 切なく、
「 人間に 翻弄される 」ローズを 描く事で「 打算的な人間 」が 浮かび上がるところも 良かったんだけど、
「 意義あり!」とか「 くらえ!」(?)を 期待していた身と
しては 少々 拍子抜け。
まあ、アメリカに行ってからの あの展開は 楽しかったけど。
そんな事で 少しガッカリ しかけたんですが、
後半、ついに 訪れた「 裁判 」展開では、“アメリカらしい人物” の登場も 相まって 気持ちも 持ち直しましたね。
ちゃんと アメリカの裁判らしい「 くらえ! 」からの(?)
「 逆転裁判 」( さしずめ「 逆転のゴリラ 」)もありましたし。
裁判後の「 言葉は使えるが 対話はできない 人間 」みたいな
“その後” の くだりは チクっと 心に刺さったけど…。
「 黒猫を飼い始めた 」
2冊目も「 長篇 」だと 読了小説が 2作品と 少ないため、
作品数が多く、気にもなっていた コチラを選択。
全ての「 話 」の 一行目が「 黒猫を飼い始めた 」から始まる
アンソロジー。
著者26人による、各話 数ページ、ジャンルは 様々な
「 ショートショート 」26編。
会員制読書クラブ「 メフィスト・リーダーズ・クラブ 」の
「 ショートショート企画 」を 書籍化したもの みたいです。
という事で 一応、『 ゴリラ裁判の日 』と「 メフィスト 」繋がりだったりします。
あと、そういう事で 意外と ほのぼの系は 少なく、サスペンスや ミステリーの話が多かったですね。
読んだことある作家も多いけど、
一応 メインとしては 「 未読 」&「 若手 」の作家です。
26作品と多いので 簡単に 紹介&感想。
感想に関しては 特に 記述がなければ 概ね「 普通 」くらいです。
ちなみに 作品の順番は「 公開順 」です。
「 妻の黒猫 」 潮谷験
「 別居している妻を殺した 男 」に「 猫 」が絡む サスペンス。
「 別居 」設定が 上手く活かされていましたね。
最後は 直前の あのセリフで 締めた方が良かったな。
「 灰中さんは黙っていてくれる 」 紙城境介
「 黒猫を飼い始めた 」という小学生、灰中さんの家に行った
クラスメイトたち。
お開きになった後、ひとり 火登( 主人公 )だけが 灰中さんに 呼び止められて……。
ミステリー部分は 悪くなかったけど、
「 長篇 」の 序盤みたいな内容で 物足りなかった。
関係ないけど 本書、名前に フリガナがないんですよね。
なんで「 火登 」の読み、音訓どっちか 気になります。
「 イメチェン 」 結城真一郎
「 キャラ付け 」した 地下アイドルの リーダーの女性。
「 黒猫を飼い始めた 」というが、どこにも見当たらず……。
「 アイドルの苦悩 」から来る 不穏な空気に 心が ザワつく
作品。
途中で “気付いた” けど、それにより さらに 不穏さが増してね…。
何とも言えない( 少し笑えて 少しコワい )オチも 好みで面白かったな。
「 Buried with my CAAAAAT.」 斜線堂有紀
「 猫と共に 閉じ込められた 男 」の話。
「 シュレディンガー 」的な感じかなと予想するも 全く違った。
まあ、主人公の考えは 正しかったわけだけど。
「 天使と悪魔のチマ 」 辻真先
いけ好かない お嬢様・里佳に 彼女・千万(ちま)との デートを潰された 智樹。
さらに 里佳は 飼い始めた 黒猫に “チマ”と 名前を付けていた
ため 智樹は……。
気に食わなかったのは…の方であった…でいいのかな?
「 逆だった 」(?)が しっくりこず、個人的に イマイチ。
「 レモンの目 」 一穂ミチ
みさと が暮らす マンションのベランダに 現れるようになった 黒猫。
ある日、黒猫のリボンに「 メッセージ 」が 括りつけられていて……。
これは 面白かった。
余韻が残る、はっきりさせない オチも イイ。
「 メールが届いたとき私は 」 宮西真冬
ずるい男と ずるい女( 弱い人間 )。
どうせ進展しないんだから ヤって 終わらせれば よかったのに…。
内容は ともかく、せっかくの「 猫 」の存在が 薄めだったのは 少し もったいない。
「 メイにまっしぐら 」 柾木政宗
中年男の作家が 飼う猫、メイの「 ヤキモチ 」の話。
タイトル通りの「 デレデレ 」の内容なんですが、
すっかり ダマされましたよ~。
「 猫度 」も高かったしで とても良かったですね。
オススメ作品。
「 ミミのお食事 」 真下みこと
ちょっとした違和感、その正体に 結構 少し ゾクっときた。
でも 最後は 前向きにしてほしかったな。
「 神の両側で猫を飼う 」 似鳥鶏
まさかの「 異世界モノ 」。
その「 設定 」、猫っぽさを 想起させる「 癒し と 破壊 」も
イイんだけど 締め方も 良かったね。
「 黒猫の暗号 」 周木律
「 黒猫を飼い始めた 」という ダイイング・メッセージ。
こちらも 着眼点が素晴らしかった。
「 真相 」は まあまあくらい でしたが。
「 スフィンクスの謎かけ 」 犬飼ねこそぎ
気になっていた作家。
こちらも 別の形を使った「 猫 ダイイング・メッセージ 」。
ちゃんとした「 犯人当て 」の内容になっており、
小粒ながらも「 本格度 」も 十分あって 面白く読めました。
他の作品も 俄然、読みたくなりましたね。
「 飽くまで 」 青崎有吾
「 飽き性の男 」を描いた「 ノー猫 」の サスペンス。
誰かやるとは 思っていましたが、実際 読んでみると
「 ノー猫 」で書くのは 勇気がいりますね。
「 猫飼人 」 小野寺史宜
会話劇。
ちょっと前に読んだ 京極の『 虚談 』を思い出す内容でした。
「 動揺 」を見せる セリフがあれば もっと驚けたかな。
個人的には 好きな作品ですね。
「 晦日の月猫 」 高田崇史
著者作を 読んだのは『 QED 百人一首の呪 』以来。
( もう 1冊 読んだような気もする )
唯一の「 時代もの 」で、それに合わせた「 猫の使い方 」が
上手かったです。
程よく “しんみり” する「 話 」も 良かったな。
「 刀を躱す 猫 」は 絵面が 面白くて 笑えたけど。
「 ヒトに関するいくつかの考察 」 紺野天龍
「 吾輩は猫である 」っぽい?話。
「 人間観察 」、「 中二病な猫 」など オモシロ要素はあったけど、中途半端な感じが 否めない。
「 ミステリー部分 」も 不発気味だったりで すごく残念な作品でしたね。
もっと「 猫の心情 」( タイトル通り「 考察 」)の描写が 読みたかったな。
「 そして黒猫をみつけた 」 杉山幌
「 バイト帰りに猫を拾った 」大学生の話。
なんか パッとしない話だった…のは「 猫の使い方 」が ダメだったからかも?
「 ササミ 」 原田ひ香
「 特売日に 猫のエサ用の ササミを買う女性 」の話。
地味ながらも どう進んでいくのか わからないで話で 結構
面白く 読めました。
最後は 後味が悪いんだけど、すごく しっくりはきましたね。
読み終えた後だと「 書き方 」の 上手さが わかります。
犯人当て ショートショート 「 キーワードは黒猫 」
森川智喜
「 殺人予告 」を受けた男の 心当たりのある人物は 2人。
男は 殺されたときに「 ダイイング・メッセージ 」として 使うために 黒猫を飼うが……。
タイトル通り、犯人当て。
殺される前提の「 猫を使った ダイイング・メッセージ 」は
バカっぽくて 良かったし、話自体も 面白かったけど、
肝心の「 犯人当て 」が 先の『 黒猫の暗号 』、
『 スフィンクスの謎かけ 』と比べると 薄め。
「 冷たい牢獄より 」 河村拓哉
「 捕らえられ、牢獄で 猫を飼うよう 命令を受けた “人殺し” 」の話。
詳しくは書けないけど、とても 面白く読めましたね。
最後は 猫を連れて…してほしかったな。
「 アリサ先輩 」 秋竹サラダ
まあまあ ヒドい話。
もっと ちゃんとした 理由・目的だったら…とは 思ったものの、
今の時代らしくは あったので まあ、納得。
「 登美子の足音 」 矢部嵩
家族皆で 猫を飼い始めた。
初めての ペットに戸惑っている 私は 猫を飼っている 幼馴染の 文字子に 相談するが……。
猫を巡る「 ミルクボーイ の コント 」みたいな 話。
このまま スーッと 終わるのかなと思っていたら
もう ひとくだりあるのが 嬉しい、楽しい、面白い。
( ページ数も 他より多い )
本書で 一番の「 掘り出し物 」作品。
「 ホラー好き 」に オススメ。
「 会社に行きたくない田中さん 」 朱野帰子
「 妻に出ていかれた、“変われない” おじさん 」の話。
始めは「 呆れた 」けど 時代に取り残された姿を見ると
「 憐れ 」な気持ちも 湧きますね。
ハッキリ言いつつも ちゃんとかまってくれる 部下の 優しさが
心に 沁みるな。
「 ゲラが来た 」 方丈貴恵
三名の推理作家による リレー小説、「 第一話 」を 担当する
一井は 無責任な「 不可能犯罪 」を 多く 盛り込んでいた。
「 第二話 」担当の 二瓶( 主人公 )は それに手も足も出ず、
さらに複雑にし、「 メタ視点 」も入れ「 第三話 」の担当に
丸投げする事に。
その自身の原稿の「 ゲラ 」に目を通していた 二瓶は、一週間前に 起こった 一井の「 事故死 」が「 実は 殺人だったのでは…」と考え始る……。
てっきり ブラック・コメディ要素がある「 本格っぽい 」
ミステリーだと 思っていたら、
まったく 違った様相を見せる 展開( オチ )で 驚きましたよ。
コレ系も 好きなので 面白かったですね。
「 独り暮らしの母 」 三津田信三
田舎の母 から「 黒猫を飼い始めた 」と メールが届いたが…
という 友達S の「 体験談 」……。
フワフワと 澱の様に 積み重なっていく「 ちょっと変… 」が
気持ち悪い。
後半のアレには ゾワッと来たし、最後も 現実的なヤツと思っていたので まさかの「 オチ 」にも 震えましたよ。
それほど 読んでませんが、三津田作品の中でも 傑作の部類に
入る作品なのでは…?
取り敢えず「 ホラー( 三津田 )好き 」は 読んでほしいですね。
最後、
「 黒猫はなにを見たか 」 円居挽
一週間前「 密室状態 」で 殺された 教授。
恩師の教授が 家に招き入れていた 野良の黒猫を 見つけた
私は「 殺人の証拠になるかも 」と その黒猫を飼い始める。
そんな 私に “ある博物館”の館長が 接触してきて……。
「 ミステリー( 本格 )」、「 猫 」、「 オチ 」と 三拍子
そろった、最後に ふさわしい話で とても 面白く読めましたね。
特に「 オチ 」は見事で その鋭さは 本書で 一番だったかも。
よくよく考えると ツッコミどころが あるんですが、
「 ミステリーな世界観 」なので 気にはなりませんでしたね。
まあ、猫に関しては まあまあヒドい扱いでは あったので
オススメは しづらいんですけど…。
という事で、「 ショートショート 」なんで 気になる作品が
あったら サクッと 読んでみてください。