残りの「 ミステリー 」2冊。
「 赤虫村の怪談 」 大島清昭
「 怪談 + ラヴクラフト 」な ホラー・ミステリー。
一応、『 呻木叫子( 怪談 )シリーズ 』になるのかな。
前作『 影踏亭の怪談 』と、本作の後の
ノン・シリーズ?『 地羊鬼の孤独 』は 読んでます。
こちらを後にしたのは もう一冊「 ラヴクラフト 」を読んだ後に 読みたかったからです。
異国の神「 苦取( くとる )神 」を信奉する
中須磨(なかすま)家の隠居、権太( ごんた )の遺体が、
聖域の森にある「 天狗銀杏の木 」の上に “引っかかった状態” で 発見される。
その時、雪が積もっていたが、銀杏がある広場や そこに至るまでの小道に「 足跡 」はなく…。
4か月後、今度は 権太の息子、真守( まもる )の遺体が 火災が起こった「 石蔵 」の中で 発見される。
「 石蔵 」は 内側から 閂( かんぬき )が掛かっており 始めは 自死と思われたが 遺体に 鈍器で殴られた跡が あったため、殺人の可能性も 浮上。
村では それぞれ 位高坊主( いだかぼうず )、
九頭火( くとうか )という妖怪が起こしたと言われ…。
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「 のっぺら坊 系 」の妖怪 無有( ないある )に興味を覚えた
「 怪談作家 」の 呻木叫子( うめき きょうこ )は、その妖怪譚が伝わる「 赤虫村 」へ 取材に向かう。
赤虫村には「 顔を黒く塗りつぶす 」無有の他、
「 神隠し 」を起こす 位高坊主、「 火災 」起こす 九頭火、
「 嵐、竜巻を知らせる( 起こす?)」黄色い雨合羽の 蓮太
( はすた )の怪異譚があった……。
『 影踏亭 』の方は 連作短篇でしたが、こちらは 長篇です。
「 ホラー 」的には「 怪異 」より「 妖怪・民俗学 」色の方が 若干 強めな感じかな。
ですが「 体験談 」は多く、「 UFO系 」の話もあり、
さらに “人死に” も 結構多めで 堅苦しさはなかったですね。
まあ、「 妖怪・民俗学 」に関しては 個人的に 好きって事もありますけど。
そういえば、すっかり失念していた「 河童除けの呪文 」※も
ありましたよ。
〔 ※「 河童除け 」
「 ひょうすべよ 約束せしを忘れるるな
川だち( = 泳ぎが上手い )おとこ うぢは すがわら 」
“ひょうすべ” は、見た目は 猿っぽいけど、ざっくり言えば
「 河童(水)属性 」らしいんですよね。
ちなみに「 菅原道真が 河童を助けた 」という伝承が由来です。
という事で 水辺で 河童に襲われたら コレを唱えるべし 〕
気になる「 クトゥルフ 」要素は くだんの「 苦取神 」のほか
「 欲外 」( よくそと おそらく、ヨグ=ソトース )とか、
「 根黒乃御魂 」( ねくろのみたま = ネクロノミコン )、
等々、上手く「 日本・民俗 」に取り入れていて それっぽい
雰囲気も しっかりありました。
( 村の名前「 赤虫 」も「 アーカム 」の もじりかな )
「 ミステリー 」的には「 呻木の取材 」の他、
温泉旅館の娘、高校生の満瑠( みつる )の「 調査 」、
渡部警部と 越智刑事の「 警察 」パートなどあります。
『 地羊鬼 』のような「 展開で引っ張る 」形ではありませんでしたが、こちらも「 民俗 」視点が 興味深くもあって 読んでいて面白かったですね。
ただ、相変わらず「 本格 」は 弱め。
個人的には「 石蔵 」の方は まあまあ 評価高めだったりしますが、
「 雪 & 禁則地( 祟り )密室 」であった「 天狗銀杏 」と
もう一つの方は イマイチ。
「 祟り密室 」なんか すごく「 ホラミス 」っぽかったので チョット 残念。
総じて「 面白く読めた 」作品でしたが、
『 影踏亭 』や『 地羊鬼 』と比べると パンチ力、爆発力は 弱めかな。
その分は「 クトゥルフ 」で 補っているので それが好きなら
( ある程度 知識があるなら )問題ないと思います。
「 名探偵のいけにえ 人民教会殺人事件 」
白井智之
本格ミステリー。
1978年。
元信者のゴシップによる さらなる脱退者を減らすため、
アメリカ から ガイアナ共和国に移り住んだ、ジム・ジョーデンを教祖とする 新興宗教、「 人民教会 」。
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探偵・大塒崇(おおとや たかし)と 優秀な助手の 有森りり子。
そんな りり子が 大塒に ウソをつき、調査団として 人民教会の
信者たちが暮らす「 ジョーデン タウン 」に行った事を知った
大塒は 帰国しない りり子を救い出すため ガイアナへ向かう。
「 ジョーデン タウン 」に着いた 大塒は りり子を含む 調査団と 再会、そこで「 傷 」どころか「 失った四肢 」も “治る” 奇跡の存在を知る。
大塒は そのまま 調査に付き合う事になるが、調査団のひとりが「 密室 」状態で 殺される事件が起きてしまい……。
『 名探偵のはらわた 』の「姉妹編」みたいな立ち位置の作品。
個人的には 両方とも「 探偵の話 」なので「 名探偵シリーズ 」でもいいかな。
繋がり自体は ほとんどないんで 本作だけ読んでも いいのですが、余裕があったら『 はらわた 』も読んでいた方が 少し感動できるかも。
あと、知っている人も多いと思いますが「 エログロ 無し 」です。
なので 読みやすく、何より オススメし易いですね。
まあ、白井智之の アレを楽しめる 私としては チョット物足りなさも ありましたけど。
内容的には「 多重解決 」という事で 若干「 パズラー寄り 」ですが、
「 大塒と りり子 」、「 人民教会・信者 」などの エピソードも なかなか面白いので「 ガチガチ感 」は 少ないと思います。
特に 信者たちの「 信仰にすがる 」心情が 切実に描かれていて ドラマ性もあったし、
それらが ミステリーにも しっかり絡んでいて 全体的に 上手い構成だと 思いましたね。
「 本格 」としては「 多重解決 」の他に
「 特異な場所 」が舞台になる、「 特殊状況 」系の ミステリー でもありました。
その舞台「 カルト宗教 施設 」で 起こる 殺人事件自体は、特段 珍しくはないんですが、
信仰から生じる「 奇蹟 」を 上手い具合に「 謎 」に 絡ませてくるあたりは 流石でしたね。
「 多重解決 」の推理も それぞれ目的が違っていて そこから
「 探偵の業 」が 浮かび上がってくるところも 良かったです。
ちなみに「 犯罪 」「 宗教絡みの あれこれ 」が 好きなので、
実際にあった「 人民寺院 の 集団自殺 」も 知ってます。
結構前に 放送した「 人民寺院 事件 」を紹介する番組も観ましたし。
そういえば ちょっと前の「 ブランチ・ダビディアン 」※も
面白かったですよ。
〔 ※ 武器を 多数所有している カルト教団、
「 ブランチ・ダビディアン 」の施設を 捜査機関「 ATF 」が 強制捜査。
しかし 初動を誤り 双方に死者が出てしまい、そこからずるずると長期化。
最後は 施設で火災が発生、多くの信者が死亡…みたいな話。
ちなみに この時の「 ダビディアン 」の教祖は 先代の跡を継いだ「 聖書オタクの 二代目 」です。
あと、米国の捜査機関「 ATF 」
( A:アルコール、 T:タバコ、 F:銃火器 )は よくドラマや 映画に 出てくるので 覚えておこう 〕
という事で「 エログロ 」はないし「 本格 」としても 面白いと思うので、白井智之「 初読み 」作品として オススメしたいですね。