今月 読んだのは…
“頭オカな人間たちの ドラマ(?)” の 連作短篇集
「 俺が公園でペリカンにした話 」 平山夢明
SF・人間ドラマ 短篇集
「 回樹 」 斜線堂有紀
「 おとぎ話 + ( 本格 )ミステリー 」の短篇集、第3弾
「 むかしむかしあるところに、死体があってもめでたし 」
青柳碧人
本格ミステリー、「 マリア & 漣 」シリーズの5作目
「 ヴァンプドッグは叫ばない 」 市川優人
の 4冊。
まずは「 短篇集 」2冊から。
「 俺が公園でペリカンにした話 」
平山夢明
“ブラックな寓意” が溢れる、
「 残酷( 頭オカシイ )・人間ドラマ 」の 連作短篇集。
前に読んだ 多ジャンル・短篇集『 八月のくず 』※と、
( ※ こういうのを「 クズ 」と言うのだよ。
『 箸魔 』は サスペンス・ホラーとして オススメ )
さらに前に読んだ 短篇集『 デブを捨てに 』は 共に 面白く読め、
まあまあ オススメも出来るんですが、
本書は「 平山節 」が かなり強い( セリフの クセが強い )し、
「 かなり汚い 」描写も多いので オススメ度としては低いです。
本書は「 全20話 」の構成で、
ヒッチハイクしながら 旅をする、金がなく “ろくでなし” の
おれ( 主人公 ) が「 頭が オカシイ人 」や「 ヘンタイ 」、
「 その両方( あたオカで ヘンタイ )」のトラブル、厄介事に巻き込まれる……
みたいのが「 各話 」の主な内容です。
全体の雰囲気としては
「 狂った ろ~ど む~び~的 地獄めぐり 」とか
「 狂った 人情 喜悲劇 」みたいな感じでしょうか。
「 頭が オカシクなった 」理由が お金や 心の「 貧しさ 」や
「 喪失感 」だったり、
逆に「 金があり過ぎて 増長、傲慢になる 」など 妙に現実味があって 納得感があるんですよね。
話自体も「 ヒドイ 」のが多く、人物たちに「 憐み 」も感じたりで 地味ながら 全体的に「 滅入る 」内容でした。
それでも 主人公が「 まあまあ善人 」(貧しくても人は助ける)な性質なため 心温まる展開も 結構あるし、
ブラック・ユーモアな「 寓意性 」も 感じられるので
読後感は「 渋くて 苦々しく、空虚 」だったものの、思ったよりは 悪くなかったですね。
何話か紹介。
ちなみに、初出は 全て『 小説宝石 』で、
「 1話 」は 2011年の掲載、後の作品は 2017年から
連載となってます。
3話「 円周率 と 狂帽子 」
疑似・父娘 の「 貧しい生活ぶり 」と「 悲しい 別れ 」、
「 良い頭 」という事で その娘を引き取った 髭の紳士による
「 娘の暮らしぶり 」、共に “狂っていて” 面白かったですね。
ちなみに 結構 イイ話ですよ…たぶん。
6話「 優しさポルノ と 実在ベイビー 」
前半の「 トーチャ( 拷問 )・ポルノ 」展開が 結構 怖かったな。
その後の「 子供の死 の “軟着陸” 」展開(?)が 狂っていながらも「 母親の “想い” 」が胸に迫ってきて ちょっぴり 切なかったり。
個人的には「 狂・悲しい話 」と 好みの内容でしたね。
7話「 わがままは わがまま ぱぱのんきだね 」
ある女の子から「 母親を殺してくれ 」と頼まれた おれが
その家で遭遇する、“背負わなくてもいい”「 贖罪 」 の話。
今どき殊勝な「 考え( 贖罪 )」なんだけど やっぱり迷惑。
「 悪い人がいない 」のに「 オカシくなる 」悲しさよ…。
オチは ドリフですが「 負わなくてもいい 贖罪 」の話は 珍しくもあって 面白く読め、結構 好きですね。
10話「 子供叱るな来た道だものと、こびと再生の巻 」
「 子供への虐待の 連鎖 」を「 SF( 少し 不思議 )」設定で
描いた…ような 内容。
「 虐げられる 子供たち 」の「 謎 」で進む展開は サスペンス
として 面白く、「 真相 」の「 闇っぷり 」も なかなか濃くて かなり好きな作品です。
13話「 ヤトーを待ちながら 」
「 政治色 強め 」( ヤトー = 野党 )の 不条理劇。
その前の 9話「 おまえのおふくろ 地獄で犬とやってるぜ! 」も ある意味「 政治色 強め 」の内容なんですが
あからさま過ぎて ゲンナリしちゃうんですよね。
(「 話 」も 上手く転がってなかったような )
ですが、こちらは「 寓意性 」で 上手く 包み込んでいて
シニカルかつ ユーモアありで 面白かったです。
14話「 五十五億円貯めずに何が人間か? だってさの巻 」
豪華客船で行われる 金持ちヒーローたちによる「 悪者退治 」
…という「 ヒーロー( 金持ち )の傲慢さ 」を描いた内容。
本書は「 映画ネタ 」も 多くあって、この作品にも 悪者・上下( ウエシタ )=「 ジョウ・カ 」=「 ジョーカー 」が 隠されていたりします。
まあ、元ネタ自体『 バットマン 』まんま※ですけど…。
( ※ 金持ちヒーローのひとり、モリコウの名前が「コウモリ」のアナグラム になってたり )
「 悪者誕生 」で締める「 オチ 」も 案外 さわやか、
薄っすら希望も 感じたりもして 悪くない後味。
18話「 チンワク と アイロニックラブンずの巻 」
ネタバレになるけど、まさかの「 金属 愛好者 」という 好みの「 ヘン( フェティッシュ )な話 」で すごく面白かったです。
後半も 予想通りの「 凄惨 」な展開だったし、オチも くだらなかったりで 好きな作品ですね。
「 最終話 」、表題作「 俺が公園でペリカンにした話 」
「 狂人に 関わると こちらの心も 荒む、蝕まれる( 狂う )」
みたいな(?)内容。
心の底に 何とも言えぬ「 澱 」が溜まるような話では ありましたが、前半の おれの 内心セリフ、
「 貧乏が 奪っていくのは 目に見えるものより、
見えないもののほうがずっと多い 」
の説得力に すっかりヤラれましたよ。
人としての「 尊厳 」や「 矜持 」、「 他者への 共感性 」は 往々にして 急にではなく、少しずつ 欠けていくんですよね。
本書は おれが「 人としての 心( 矜持 )を保とうとする 」
物語であったんですよ…たぶん。
まあ、最後は アレでしたけど。
( というか、最初からアレだったのかな )
ちなみに「 ペリカン 」は あまりにも 救いがなく、おまけに
「 すごく汚い 」ので そんなに好きじゃないです。
という事で、一番 面白く読めたのは「 好み 」の要素が大きかった( あと あまり汚くなかった? )
『 子供叱るな来た道だものと、こびと再生 』
『 チンワク と アイロニックラブンずの巻 』
…になるかな。
「 回樹 」 斜線堂有紀
SFドラマ・短篇集、全6篇。
「 読むリスト 」の順番としては 上位ではなかったけど、
ブログ記事で 気になったのと「 気分的に 軽めのヤツを 」
という事で チョイス。
著者は 最近だと「 ミステリー 」の イメージですが、もともと「 純文学 」を書いていたみたいですね。
そのためか「 心情描写 」を 繊細に描写できる作家で、本作でも
「 心の動きを強く感じさせる 」内容でした。
「 SF 」としては「 ファンタジー寄り 」な作品が多く、
リアル寄りな筆致の「 心情描写 」とは チョット合っていなかったかな。
「 回樹 」
女性2人だけの「 ルームシェア 」から 後に 恋人同士になった 律( りつ )と 初露( はつろ )。
数年後、倦怠期中に「 事故死 」した 初露の「 死体 」を盗んだ罪で 律は 取り調べを受けていた……。
恋人の死体を盗んだ女性の「 動機 」と、
突如 出現した 謎の人型の物体「 回樹 」を巡る「 話 」。
恋人同士の「 関係性の変遷 」は やけに リアルな描写なのに、
回樹の「 人型 」とか「 壊せない 」の設定は ファンタジー寄りで しっくりこなかったな。
個人的には もう少し 樹木っぽい方が 回樹の「 生存戦略 」らしさが感じられて 納得感があったかも。
それでも「 律の動機 」は「 ミステリー 」っぽかったし、
「 恋愛モノ 」としての「 ドラマ 」( 心情描写 )も 良かったしで「 話 」としては まあまあ 面白く読めましたね。
「 骨刻 」
“骨に文字を刻む” 技術、「 骨刻 」( ボーン・レコード )を
巡る「 話 」。
作中にも 出てくるけど「 レントゲンの写真 」を レコードに
再利用した「 ボーン( レントゲン )・レコード 」というのがあるんですよね。
たしか どっかで見た、聞いた事はあったんですが※、これまた すっかり忘れてましたよ。
( ※ おそらく、ドラマ『 CSI 』あたりか )
内容としては「 文字・言葉の力 」みたいな、スピリチュアル系の「 話 」で 設定としては あまり 好みではなかったです。
そもそも「骨」って「 破骨細胞 」&「 骨芽細胞 」で 新陳代謝してるので、
骨に文字を刻んでも しばらくすると たぶん、消えちゃうんですよね。
その「骨」と「 スピ系 」が少し 心に 引っかかったんですが、
「 言葉 」の大切さに 気付いていながら「 会話のなさ 」で
関係性が 崩れていく ふたりの顛末、
「 骨刻 」設定を活かした 結末など「 話 」としては 良かったです。
あと「 疑似科学 」が広まっていき「 宗教 」っぽくなっていく過程の描写も リアリティがありましたね。
「 BTTF 葬送 」
傑作映画には「 魂 」が入っている。
2085年、傑作映画が 生まれないのは「 映画の魂 」の量が 一定だからだ……。
というような設定の「 話 」。
一応 書いておくと「 BTTF 」は
『 バック・トゥ・ザ・フューチャー 』の事です。
そもそも「 小説 」だし、「 映画の魂 懐疑派 」も ちゃんといるんだけど、
「 魂の入っていない映画は 駄作 」に関して「 選映画 思想 」を感じて チョット悲しくなりましたね。
著者の「 映画愛 」は 伝わったけど「 話 」としては「 無常 」の考え( 原始仏教 好き )なので イマイチ乗れず。
「 不滅 」
ある日から「 人の死体が 腐敗 および、損壊しなくなった 」
世界。
溜まる一方の 死体は 資産があれば 宇宙船( 葬送船 )で
「 宇宙 」へ、なければ「 地中 」に埋められていた……。
得意な方面なので「 宇宙港 爆破テロ 」の目的も 予測がついたけど「 設定 」としては 一番 好きですね。
事故などで 身体を大きく損傷して( 内臓が 飛び出したり… ) 死んだ場合に どうなるのかなど、気になるところも 多かったけど。
「 奈辺( なへん )」
「 黒人奴隷 」時代のアメリカ。
白人のジョンが営む 酒屋に 黒人のシーザーが 客として現れる。
白人客と シーザーによる 一触即発の緊張感が 張り詰める中、
「 身体が緑色 」の 宇宙人が現れ……。
白人と 黒人が 入れ替わる、人種版『 転校生 』みたいな話。
「 話 」としては 重めながらも「 設定 」が ユーモラスで
筆致も軽く 一番 楽しく読めた作品。
このような 少し クダけた感じの方が 好みですね。
「 回祭 」
書下ろし作品。
「 回樹 出現 」から10年。
高額バイト として 洞城亜麻音( とうじょう あまね )の
身の回りの世話をする事になった 蓮華( れんげ )。
亜麻音の「 悪意を持った扱い 」に 疲弊していく 蓮華は
ある計画のため ボランティアとして 回樹に近づく……。
『 回樹 』の続き。
『 回樹 』同様「 人間ドラマ・ミステリー 」の趣なんですが、
「 愛情は 何処の時点で 生まれるのか 」と、さらに 一歩 踏み込んだ内容になっているのが 面白かったですね。
最後の「 突如 湧き上がる想い 」に 人間の心の複雑さを感じて
しみじみ 来ちゃいましたよ。
どうせなら 本書全編「 回樹 」で 読みたかったかも…と 思わせる作品でした。