残り、ミステリー2冊。
「 18マイルの境界線 法医昆虫学捜査官 」
川瀬七緒
昆虫&警察・ミステリー。
『 法医昆虫学捜査官 』シリーズの 8作目。
「 顔を潰して 焼く… 」など、身元を特定されないように
被害者を激しく損傷させた死体が「 ゴルフ場 」で発見される。
刑事の岩楯( いわだて )は 犯人が 執拗に 被害者の身元を隠しているのに、人目に 付きやすい ゴルフ場に 死体を遺棄していることに 疑問を持つ。
その捜査に加わっている「 法医昆虫学者 」の赤堀(あかほり)は 死体に付いていた「 腐敗分解 」に関わる “虫たち” の他に
「 キノコ食害 」に関わる “虫たち” を採取する。
赤堀は その「 虫の多さ 」と「 昆虫相 」の関わりから キノコが生えている場所に 死体が置かれていたと 推測するのだが……。
安定の「 シリーズ 」で 今回も面白かったですね。
人気もあるらしく「 帯 」によると「 コミカライズ 」されるみたいだけど、
「 腐乱死体 」とか「 大量のウジ虫 」とか出て来るけど「 絵 」にして 大丈夫?
で本作、作品によっては ドラマ性があったり、チョット趣向が
違うことも あるけれど、
今回も 基本的に「 刑事・岩楯の捜査 」と「 赤堀の 昆虫学アプローチ 」の 2パート構成という、オーソドックスな スタイル。
「 話 」の方は「 身元の隠ぺいのための 過剰な死体損壊 」と
「 発見されやすい 遺棄場所 」の “ちぐはぐさ” と、
死体についていた「 キノコ食害 昆虫 」の謎が軸になる内容。
今回も 終盤、昆虫から( キノコを経て )犯人に たどり着く
過程に カタルシスを感じましたね。
その前の ある昆虫の「 習性 」や「 森での焚き火 」で アレが アレする※ のには 驚きましたよ。
( ※ ネタバレなので 白字 → キノコの「 ツチクラゲ 」。
普段は 胞子で「 休眠 」しているが「 高温 」により活動を開始して 木の根を浸食、マツなどを枯らす。
「 焚き火 」でも 活動を始めるようなので 気を付けよう )
そのまま すんなりと事件解決…とならないところも 良かった。
…ということで「 話 」自体 面白かったんだけど「 昆虫 」その他のマメ知識も 面白いんですよ。
今回でいえば「 キノコ食害 」の昆虫には「 キノコバエ 」や
「 ムラサキアツバの幼虫 」がいたり、
キノコバエの幼虫に 産卵するのが( 要は 天敵 )「 ハエヒメバチ 」だったりとか。
事件と関係ないけど、カメムシ目の「 ヨコズナサシガメ 」が “刺す” のを知れたのも 収穫。
そもそも カメムシだから 触りませんけど。
個人的に「 虫 」系は 結構 平気なので ちょっとした 時間に
名前が出て来た虫を検索して 姿を確認するのも 楽しかったり。
キノコの方も、昔「 原木 」を使った キノコ栽培を 実際に見たことが あるんだけど、
本書によると「 木を切って原木を準備 」したり、その後「 原木を 乾燥させる 」工程があったり、
3年ほどで 原木が ボロボロになったりで かなり大変みたい。
一般的な「 菌床 」の方も( これも 実際に 見たことある )
キノコバエ、ダニ、ナメクジ…と 食害が 多くて 大変そう。
農業って 虫との闘いでもあるな…。
という事で、ドラマ『 CSI 』や『 科捜研 』、あと 虫好きな人に オススメ。
「 赤ずきん、アラビアンナイトで
死体と出会う。」
青柳碧人
連作短篇・童話(特殊設定)ミステリー。
『 赤ずきん 』( 童話 × ミステリー )シリーズの3作目。
モチーフは『 千夜一夜物語 』で「 全4話 」構成。
今月の「 本格 」枠。
前作は「 童話 」という 超・特殊な世界観と ミステリーが
イマイチ 噛み合っていなかった…ような記憶が。
今回は “何でもあり” な世界観に 上手いこと 制約が付いていて 納得感が すごくあった…のに 後半は フツーっぽくなっていてガッカリ。
「 アラジンと魔法のアリバイ 」
最初の妻に 裏切られ 女性を信じられなくなった シャハリアール王 は「 結婚しては その夜に 花嫁を殺す 」を繰り返して その数399人に。
婚礼の夜、400人目の花嫁、シェヘラザードを 殺しに向かった 王だったが、彼女は “謎解き” が好きな 異国の少女・赤ずきんの話を始め…
┇
「 殺人の罪 」で 逮捕された 知人・ナップが呼び出した “指輪の魔人” に 連れられて アラビアへと やって来た 赤ずきん。
その事件は 丘に建つ宮殿に隣接する「 熟成庫 」で ヨロイを着た 大臣が「 甕( かめ )」にいれられ「 黒ヤギの乳 」で 溺死させられた、というものだった。
事件の夜、宮殿の近くでは 池の魚が潰され、畑が荒らされるという、謎の災難も 起こっていたが…。
調査を開始した 赤ずきんは ランプの魔人を使役している アラジンが 怪しいと にらむも、
その頃 彼には 宮殿の北の丘にある 自身の屋敷で「 宴 」を開いていたという アリバイがあり……。
最初は アラジン・モチーフの「 甕と ヤギの乳を使った 溺殺 」事件に 赤ずきんが挑む内容。
「 特殊設定 」とはいえ「 バカ・やり過ぎ 度 」が高め。
それで ありながら「 手掛かり 」が ちゃんとして「 納得感 」も
高いという、楽しくも 本格な「 真相 」でした。
終盤の「 対決 」場面のくだりも よかったりで かなり面白かったですね。
「 アリババと首吊り盗賊 」
赤ずきんが「 空飛ぶ絨毯 」から落ちた先で 出会った 男性、
アリババ。
赤ずきんは そのまま 行方不明の兄を探すという アリババについて行き「 ゴマ 」の合図で 扉が開閉する「 洞窟 」へと向かう。
そこで ふたりは「 餓死 」した アリババの兄の死体を発見することに。
赤ずきんは「 扉を開ける呪文は 簡単なハズなのに… 」と共に
「 首吊りではないこと 」に疑問を持つ……。
アリババ・モチーフの「 出る事ができた 洞窟での 餓死 」と
「 洞窟での首吊り 」を巡る内容。
「 首吊り 」のトリックは シンプルだけど 汎用性が 高そうで
好きですね。
「 洞窟での餓死 」も 特殊設定らしくて 面白かったです。
まあ、わかりやすい「 伏線 」が 多くあったのに 推理はできず、
少々 落ち込みましたけど…。
3・4話は 続けて紹介。
「 シンドバッドと 三つ子の事件 」
「 アラビアの夜に ミステリは尽きず 」
怪魚によって 海に投げ出された 赤ずきんは、沈没してしまった別の船に乗っていた シンドバッドに 助け出され 共に「大鍋」に乗って 漂流することに。
赤ずきんは 助けを待つ間、内務大臣から 依頼させるであろう
「 事件 」を シンドバッドから 教えてもらう。
それは 内務大臣の3人の甥が それぞれ自殺と 結論付けられた
「 施錠された 船室から消失後、海で 死体発見 」、
「 尖塔からの 飛び降り死 」、「 ライオンの檻に侵入 」
という事件だった…。
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一方、王に「 夜話 」を語ることで 延命していた シェヘラザードにも 危機が訪れることになり……。
『 シンドバッドと… 』の方は「 漂流中の推理 」という安楽椅子探偵の趣向。
「 3つの事件 」ということで 期待が高まったものの 肝心の
推理が 今までより雑。
一応「 続きモノ 」と分かり ホッとしたんだけど…
で、後編ともいえる その続きが 最後の『アラビアの夜に…』。
「 真相 」自体は イイんだけど、読者も “すぐ分かってしまう”
「 仕組み 」を 人から訊く構成にしちゃ ダメでしょう。
それにより「 後付け感 」が出てしまい アイデア的には 感心したものの 納得感はなかったです。
まあ、勝手に「 本格 」として読んでる コッチの方が 悪いんだけど。
(「 本格 」書ける人だから そっちを期待しちゃうんだよな )
ということで 最後は「 う~ん 」という感じでは あったけど、
「1話」「2話」は「 特殊設定・本格 」として 良かったので
総じて 楽しめた形では あったかな。
どうせなので『 イソップ童話 』の方も 今年中に 読むかも?