ミステリー2冊「 エレファントヘッド 」、「 ミノタウロス現象 」 | berobe 映画雑感

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「 映画 」と「 本 」の感想

残り ミステリー 2冊。

 

 

 

「 エレファントヘッド 」  白井智之

 

特殊設定・本格ミステリー。

 

 

 

ストーリーすら「 ネタバレ禁止 」みたいらしく「 情報ゼロ 」状態で読んだんですが、読み終わって( というか 途中で )

 

「 こりゃ 知らない方が 面白いよな 」と、心の中で ひとりごちましたよ。

 

なんで 他の方 同様、当たり障りない範囲で 紹介 & 感想を。

 

 

 

「 プロローグ 」から 衝撃的でしたね。

 

ですが、意外過ぎる「 序章 」では あったものの、

その後 始まる 精神科医・象山( きさやま )の話は、

 

象山の性質や「 行動原理 」含めて「 いつもの 白井 調 」で、

 

『 名探偵のいけにえ 』に 少々 物足りなさを覚えていた身としては まさに「 おかえり 」くらいの感覚でしたよ。

 

しかし、その後は “エログロ” な「 スラップスティック 」を経て

「 少し 不思議( SF )」な展開に 突入、

 

小林泰三 を思わせる、その「 奇抜で 危うげな 設定 」に

「 SF+本格 好き 」として すごく盛り上がりましたね。

 

 

かなり ゴチャゴチャする展開( でも しっかり読んでおかないと… )なんですが、

 

象山の ピンチ( 回避 )の連続が “いろいろアレ” で 読んでいて ニヤついてしまいましたね。

 

 

あと、個人的には 象山の行動原理とか “アレ” に『 ジョジョ 』吉良吉影を想起しました。

 

 

あの「 オチ 」※も すごく「 象山に 合っていて 」良かったです。

 

 

( ※ コレ系のオチ、実は 結構あって、

 

私は “飛行機アンソロジー”『 死んだら飛べる 』で 読んだ、

E.C.タブ『 ルシファー! 』を思い出しましたよ )

 
 

で、「 問題 」なのが 先にちょっと触れた「 エログロ 」。

 

個人的に 白井作品の「 エログロ 」には 慣れてはいますが

平山夢明 とかも読んでるし )アノ所業は さらに斜め上で チョット 引きましたよ…。

 

 

「 話 」のベースも( ヒドくて )イイんですが、

 

「 謎 」自体も すごく魅力的なんですよね、書けないけど。

 

白井作品は「 伏線 」を 無理クリに ねじ込む傾向があるけど

今作は さほど 不自然さは 感じなかったな。

 

(「 話 」自体が オモシロいってのも その要因の ひとつか )

 

 

「 伏線 」や「 推理 場面 」が 多いので 読んでいて楽しく、

 

「 伏線 」の多さの割りに「 解けそう感 」は あまりなかった

んですが「 納得感 」や「 満足感 」は 高かったですね。

 

あの「 真相 」も 十分 推測できそうでしたし。

 


 

という事で 全て 読んでいるわけでは ありませんが、

 

個人的には 白井智之の「 長篇 」の中では 1番の作品でしたよ。

 

 

 

 

「 ミノタウロス現象 」  潮谷験

 

SFファンタジー( 特殊設定 )・ミステリー。

 

 

ある日、オーストリアに “牛頭の怪物” が現れ、それを機に

世界中で 一日数件ほど 神出鬼没な「 怪物の出没 」が相次ぐ。

 

世界は パニックに陥るが、その怪物が「 思ったよりも 大したことがなかった 」ため パニックは 沈静化……

京都の眉原市。

 

今の秘書、羊川( ようかわ )に推されて 女性市長になった、

就任2期目の 利根川翼( とねがわ つばさ )。

 

前もって「 議会で重要な報告をする 」事を伝えに来ていた

革新党・岩緑( いわみどり )が議会を欠席、姿も見当たらなくなってしまう。

 

そのまま議会が 開かれるが、突如 議場の中央に 牛頭の怪物

出現。

 

避難後、子供を助けるため 議場に戻った の前に 怪物が姿を

現すが 清流会の清城( せいじょう )が射殺。

だが、それは「 怪物に 偽装させられた 」岩緑だった……。

 

 

 

『 時空犯 』が「 本格 」としては 少々弱かったものの 内容

( SF )としては すごく面白かったんで、

 

今回は『 あらゆる薔薇のために 』を 読もうと思っていたんですが オモシロそうな設定に 興味を惹かれて コッチを 先にしました。

 

 

「 市長が 主人公 」という事で「 古い政治 」のアレコレや

 

市議会の議題で 牛頭の怪物の出没に かこつけた「人気取り」、

 

「 利益誘導の政策 」※の話が出て来たりと「 社会派 」要素が まあまあ強めの内容。

 

 

( ※「 民営化主義 」。

ちょっとした「 ショック・ドクトリン 」でもあった )

 

 

「 話 」としては「 設定 」を活かした「 殺人 」は起こるものの 紙幅を多く占めるのは「 怪物出現の謎 」。

 

ですが、この「 謎 」が「少し 不思議」で「 ファンタジック 」

( オカルティック? )、

 

さらに「 なぜか 怪物は あまり強くなかった 」りと、

 

「 特殊 」とはいえ かなり独自性のある 設定だったので 楽しく 読み進められましたね。

 

まあ、逆いえば「 これじゃない感 」を覚える人も 多そうですけど。

 

 

「 ミステリー 」の方はというと「 本格っぽさ 」は あったし、それっぽい「 伏線 」もあったけど  そっちは弱めだったかな。

 

ですが、これは 後半に どっと情報が出揃う「 話 」のせいも

あると思うんで 気にはなりませんでした。

 

 

〔 情報が「 出揃った 」後、ちゃんと考えれば「 犯人 」及び

「 殺害方法 」は 当てられる…かも。

 

まあ「 犯人 」の方は …で 予想はつきますけど 〕

 

 

そもそも( 2作しか読んでないけど )著者は「 話を転がす 」のが上手い人だと 思うので、

 

そっちより「 設定 」の面白さの割りに ページ数が「240頁」と 少なめ、ボリュームが 不足している方が 残念でしたね。