残りの1冊。
「 オクトローグ 酉島伝法作品集成 」
酉島伝法
SF短篇集、全8篇。
「 創元SF短編賞 」を受賞した 作品『 皆勤の徒 』は 知って
いましたが、( ハードルが 高そうなのもあり )あまり 興味がない作家だったんですよね。
ですが、ちょっと前に公開された 映画『 大怪獣のあとしまつ 』
みたいな話の『 痕の祀り(あとのまつり)』が気になったので 読んでみました。
まずは 簡単な感想から。
読み始めて思ったのは
「 見慣れない漢字を使用した 独特の造語が 読みにくい… 」
でした。
「 字面 」や「 前後の文脈 」から まあまあ 分かりやすいのも
あるんですが、
読み進めないと 意味が分からないものも 多くて、
( こちらの 読解力不足という事もあるのかも… )
頭に「 イメージ 」し難く、結構 ストレスでした。
なので「 独特の世界観 」という事もあって、
「 全300ページ 」くらいなんですが 読み終わるのに 時間が掛かってしまいましたよ。
それでも「 好み 」の内容だったのもあったので 思いのほか
楽しく読めたのかな。
「 環刑錮(かんけいこ)」
「 受刑者(主人公)が “父殺し”の刑罰として
巨大な環形動物( ミミズみたいなヤツ )に変容させられる… 」
みたいな話です。
その「 環形動物化 刑務所(土中)生活 」に、
くだんの「 事件 」や「 記憶や思考の 同調 」みたいな設定が
出てくるなど、「 要素多め 」の内容でした。
初読みって事もあって 結構 読み進めるのに 苦労しましたが、
カフカ『 変身 』や 映画 『 ムカデ人間 』を思わせる(?)
内容は なかなか楽しかったし、
後半は ちょっと意外な展開も 見せたりもするので
「 エンタメ 」として(?)面白かったです。
終盤の「 記憶の力 」(?)により・・・したところは ちょっと感動しましたね。
ちなみに「 人格や 知覚の 他者との同調 」みたいのや、
「 異性物 要素 」は 著者の 特色・作家性みたいで、他作品でも顕著にみられます。
「 金星の蟲 」
「 刷版工場 」で働く 主人公の「 仕事 & 病気?」と「 … 」を描いた話。
「 お腹の調子が すこぶる悪い 」主人公に 身につまされる思いを 覚えましたね。
( 病気の話は 気が重くなるな… )
さらに「 お尻から… 」という「 うわぁ~ 」な展開になるし、
チョットだけ「 不条理っぽい 」描写もあるので こちらの心情も 不安に 苛まれっぱなしでした。
そんな「 仕事 と 症状 」の話から まさかの
「 人類の変容、侵略?」※( ←ネタバレ?白字 )の展開に
ゾワゾワしましたね。
〔 ※ これは 日々の激務や 苦しみ( 異変、異常 )に “慣れた” という 意味合いかな )
個人的には「 ○○モノ 」としてもですが、「 不条理モノ 」
としても 面白かったです。
あと「 造語 」が少ないので 一番読みやすい作品でした。
「 痕の祀り(あとのまつり) 」
「 倒された怪獣の後始末 」を描いた内容。
ウルトラマンっぽいのがいるな~と思っていたら
企画モノ・アンソロジー、
『 多々良島ふたたび ウルトラマン怪獣アンソロジー 』収録作
でした。
「 怪獣の後始末 」については『 空想科学読本 』でも 少しだけ
取り上げており、個人的に 結構 気になる題材なんですよね。
作風を知らなかったので、てっきり
「( まあまあ、そこそこ )リアル寄り 」だと 思っていましたが、
「 罪を思い出させる 」(ウルトラマンの影響による 審問効果)という「 精神感応 」?みたいなのが 出てきくる、
かなり「 SF色 強め 」の内容でした。
解体後の「 処分方法 」などの説明も なかったので 個人的には
物足りなかったですね。
それでも「 怪獣 と ウルトラマン( 名称は違う )」にまつわる「 謎 」は チョット面白かったかな。
「 橡(つるばみ)」
『 現代詩手帳 』15年5月号の 特集「 SF×詩 」寄稿作品。
「 月面に暮らす “幽霊”( デジタル人格 )の 一部が、
人類が滅びた?地球に帰還する…」という内容。
「 香り 」により「 地球、“人間”が 彩りを取り戻す 」みたいな
話は 良かったけど、
私自身「 詩情的 感性 」が希薄なので 感想としては 普通。
「 ブロッコリー神殿 」
「 莩蓋樹( ふがいじゅ )」という、ブロッコリーみたいな
超巨大な樹木の「 種子 飛ばし 」を、
莩蓋樹の「 視点( 語り )」、
人間の調査隊を「 狂言回し( 邪魔者 )」にして?描いた話。
未知の自然を描いた、まあまあ 地味な話なんですが、
大地のような「 巨大樹 」と そこに住む生物たちの「 生態系 」
が まるで「 ドキュメンタリー番組 」のように描写されており、
「 調査 」する人間たちと 莩蓋樹の攻防?も思いのほか
スリリングだったりで 予想外に楽しめた作品でした。
「 堕天の塔 」
月面での「 発掘作業 」中、謎の光により 穿たれた、
「 超構造体( 積層都市)」を貫く「 竪穴 」。
その穴に落ちた「 作業塔 」は 作業員たちを乗せ、どこまでも
落下し続ける……。
みたいな話。
二瓶勉の 漫画『 BRAME!』が 下敷きのようです。
(『 BRAME! THE ANTHOLOGY 』書下ろし作品 )
そのためか「 エンタメ度 」が高めの内容でした。
個人的には「 落下し続ける 作業塔 」という
「 心がソワソワ 落ち着かない 設定 」に 心を掴まれましたね。
「 不条理系・サバイバル 」っぽい感じでも 楽しく読めたし、
話の着地も 見事で かなり面白かったです。
「 彗星狩り 」
「 機械生物の少年の 成長譚 」。
SFよりも ファンタジー強めの「 世界観 」に思えたし、
ページ数が少ないためか「 成長譚 」としても 胸に響いてこなかったです。
というか、そもそも苦手な ジャンルでも ありましたね。
「 クリプトプラズム 」
書下ろし。
「 市街船 」の上空に 巨大な帯状の物体 “オーロラ” が出現。
「 第二研究班 」所属の主人公は “オーロラ” から採取した
「 分類不能の物質 」を培養してみるが……。
という「 謎の物体 調査SF 」(?)みたいな内容。
あと「 人格 」が コピーできたり、
人工的な肉体に「 人格 」を入れる事ができたり、
体を持たない「 人格 」があったりなどの要素もあります。
そのほか、著者作品に 多く用いられる モチーフも 随所にみられるんですが、
「 話 」自体は 「 ストレートなSF 」になっており 読みやすかったですね。
内容にしても、思いもよらぬ「 結果 」が待ち受けていたり、
チョットだけ「 裁判 」の話?が出てきたりと、予測できない
構成になっており、
「 エンタメ 」としても 十分 読めそうな作品になってます。
個人的には 取り敢えず「 SF らしい SF 」が読めたという事で 「 ホッとした 」作品でも ありました。
という事で 個人的には、
「 ホラー系 」として『 金星の蟲 』
「 エンタメ系 」として『 堕天の塔 』
「 SF 」として『 クリプトプラズム 』
が 面白かったですね。