今月 読んだのは
「失踪 三部作」の2作目
「 他人の顔 」 安部公房
本格ミステリー
「 忌名の如き贄るもの 」 三津田信三
「シナリオ形式」で書かれた 筒井版 大魔神
「 大魔神 」 筒井康隆
本格ミステリー
「 廃遊園地の殺人 」 斜線堂有紀
の 4冊。
まずは、ミステリーじゃない 2冊 から。
「 他人の顔 」 安部公房
「 失踪 三部作 」の2作目で、『 砂の女 』の次の長編らしい。
ちなみに『 安部公房全作品6 』で読みました。
それには『 砂の女 』も収録されていますが、前に 読んだので 今回は 未読です。
研究所の事故により 顔に ケロイドの傷を負った”男”。
周りの人々の 気遣いや反応に 隔絶や孤独を感じていた “男”は 妻に 拒絶された事から「 自己の回復 」として
「 プラスチックの顔( “仮面” )」の製作を計画するが……。
前に読んだ「 中・短篇集 」(『 砂の女 』含む )が 個人的には
「 エンタメ強め 」の作品が多く、面白く読めた※ので
とりあえず「 失踪 三部作 」くらいは 読みたいと思っています。
( ※『 砂の女 』より 『 密会 』の方が 好き。
不条理ミステリーとして 『 無関係な死 』も面白かった )
本作は「 顔の喪失( 傷 )」という 重い設定ですが、
「 話 」としては「 顔と 個人( の本質?)」、
「 顔と 他者・社会との関係性 」など、哲学的・社会的な要素を持つ内容でしたね。
「 抽象的な表現 」も多く、昔の作品(1964年 発表)らしい 見慣れない漢字もあり、非常に 読み進め難かったです。
テーマ的には 「 人と人の(ディス)コミュニケーション 」
みたいな感じでしょうか。
あと、「 女性( 妻 )への不信感 」も窺えたかな。
そういう事なので、一応「 妻への復讐 」みたいな要素は
あるものの、一般的には?「 エンタメ性 」は “ほぼ無し” で
しょう。
「 不条理 」要素も 特に なかったし。
ですが、個人的には 前半の「 顔( 仮面 )製作の過程 」に
ミステリーで言うところの「 動機 」や「 倒叙 」の趣を覚えたし、
後半の展開に サスペンス的な盛り上がりを 感じたので
「 エンタメ性 」は まあまあ あったかな。
あと、中盤頃から 顕著になる “男”の「 顔 」にまつわる
“くどくど” とした「 述懐 」や、研究者らしい「 考察 」、
その「 変遷・変化 」も 退屈な面は 多々ありましたが、
それでも 興味深く 読めましたね。
“男”の「 仮面による 匿名性と 犯罪 」は 『 透明人間 』を
思わせるし( 作中にも言及がある 今だとネットかな )、
“男”の「 “仮面の成長”によって進む 自分との乖離 」も
なんか『 ジキルとハイド 』っぽかったりと、
「 心理スリラー 」としても 結構 楽しめましたね。
あと、“男”の「 心象 」が 時に ユーモラスに表現されていたりと、意外と 笑えるところも。
特に「 乖離が強まると 嫉妬も強まる 」ところは 切なくも
滑稽でね。
まあ、最後の方は「 結局それかよ… 」な展開でしたが。
〔 “男”自信も 「 他者を何も知らなかった 」、
どころか「 こじらせ 自分本位 」(?)でしたね 〕
あと、「 くどくどしい述懐 」も ちゃんと終盤のオチに
繋がっているっぽく 思えましたよ。
という事で 個人的には「 エンタメ 」としては、
『 砂の女 』や 『 密会 』と 比べると 少々残念な結果でした。
( そもそも「 エンタメ 」じゃないけど )
「 小説 」よりも
66年の「 映画版 」の方が( ケロイドの娘も 出て来る? )
不気味で、不穏で、楽しそうな 予感。
本書とは関係ありませんが、この間「WOWOW」で
鈴木浩介、 有村架純、 林遣都「 出演 」、安部公房の「 戯曲 」を元にした 演劇『 友達 』を観ました。
「 一人暮らしの “男”の アパートに 9人の男女が 押し寄せて
来るが… 」という(「 ホーム・インベーション 」みたいな )内容ですが、
“男”の 意見や提案が 「 全て 多数決で否決 」されたり、
そして「 勝手に 物事が決まったり 」する、
( 民主主義の危うさ?を描いた )不条理劇で 怖・面白かった
ですね。
「 大魔神 」 筒井康隆
タイトルまんま、筒井版の「 大魔神 」。
内容も 普通に「 勧善懲悪モノ 」です。
ページ数は少ないのですが、「 シナリオ形式 」で 書かれているので 小説みたいに読むと 読みづらいです。
ですが「 場面 」や「 人物の対話 」を 頭に「 思い描き 」、
時に「 カット割り 」などをしながら 読むと、
まるで「 映画 」を観ているような気分になりましたよ。
「 話 」自体は 多少の毒気は あるものの、基本 ベタな
「 勧善懲悪・時代劇 」なので 少々退屈なんですが、
最後に「大魔神が暴れる 」のが分かっているし、
「 挿画 」も なかなか イイ雰囲気を出していて モチベーションは 下がらなかったですね。
後半頃には 大魔神が
「 発破により粉砕される 」( 一応、ネタバレ白字 )という
気を揉む展開もありましたし。
ちなみに
「 挿画・扉絵 」は『 無限の住人 』の 沙村宏明
「 カバーイラスト 」は 寺田克也
「 映画ポスター風の 裏カバー 」は 菅原芳人
( 「 特撮系 」を中心とした イラストレーターらしい )
「 表紙・帯(裏) 」は 唐沢なをき
と、えらく豪華です。
メインの「 大魔神 怒る 」は、“悪いヤツら” だけではなく、
“強欲な人たち”も 容赦なく「 踏みつぶし 」( ぺしゃんこ )に遭うのが 愉快、痛快。
一時 パワーアップ?する展開も 以外で良かったですね。
でも、「 大魔神 」とは 別に増える「 人死に 」は なんだか切なかったな…。
という事で 「 筒井康隆らしさ 」は “弱め” でしたが
「 映画 」のように楽しめましたよ。