残り 「 本格ミステリー 」 2冊。
「 鴉 」 麻耶雄嵩
本格ミステリー。
弟・襾鈴( あべる )の「 半年間の失踪 」と その後の「 死の理由 」を
探るため 「 地図にない村 」に赴いた 兄・珂允( かいん )。
珂允は その理由を偽り、村の西に住む “小長”・千本家 に 滞在、
襾鈴が “庚”( かのえ )の名で 村を支配する 大神様の「 近衛 」になっていた事を知るが、
大神様を 祝う「 薪能 」( たぎぎ・のう )が「 鴉の襲撃 」で中止になった
翌日、
西を治める “長”・菅平の次男、遠臣( とおおみ )が 殺される事件が起こる。
“殺人を犯した者” には 大神様の “罰” として 腕に「 痣 」が現れるというが…。
┋
大神様に反抗し 「 錬金術で “金” を創ろうとしていた 」
野長瀬( のながせ )の、半年前の自殺( 密室だった )を 殺人だと
考えている 少年・橘花( きつか )。
今回の 「 遠臣殺し 」が 「 野長瀬の件 」に 関係していると考えた
橘花は 噂好きの啄雅( たくまさ )、頭の回転がいい 朝萩( あさはぎ )と 共に 「 遠臣殺し 」の下手人を探るが……。
あと 端折りましたが、銘探偵・メルカトル鮎も 出てきます。
麻耶雄嵩は 人を選ぶ( 癖 が強い )作品が多いんですが、
本作も まあまあ現代だけど 「 山に囲まれ 電気もない村 」が舞台と、かなり非現実的な設定※で 人を選びそうです。
( ※ 非現実的な設定
「 本格ミステリー 」は ある意味「 ファンタジー 」なので 程度問題と言えそう。
私は 「 読むからには 楽しむ方向で 」との考えなので 些細な事柄は 基本 スルーしてます )
ですが 話自体は 「 土着宗教が支配する山村で 起こる事件 」 と、
よくある 内容・展開で 結構 とっつきやすいですよ。
その事件に
「 珂允( かいん )の弟、襾鈴( あべる )の “死の謎” 」、
「 大神様、村 の秘密 」、 「 村の 東と西の対立 」などが 絡んできます。
それと 「 カイン と アベル 」 から分かるように、「 兄弟の確執 」の要素もありましたね。
その「 兄弟 」に関しては 合間に入る「 ある兄と弟の話 」 が
どう本筋と 繋がるのかが かなり気になりました。
あと、橘花たちの 「 少年探偵団 」的な活動も 読んでいて 楽しかったですね。
まあ、後半は 著者作品っぽい・・・な展開に なってましたが。
「 ミステリー要素 」としては 「 殺人 」、「 大鏡様 」、
「 殺人者の腕には 痣が現れるに なぜ人を殺したのか 」、
「 人形 」、 「 謎の声? 」、 「( 1つ足りない?)五行説 」…と多め。
で、諸々の「 真相 」ですが、個人的には 「 大鏡様 関係 」は かなり
良かったです。
特に 「 村からの脱出 」が “アレ”※ に 絡んでくる ところには やられましたね。
( ※ “アレ” 先月 読んだばかりなのに まったく思い至らなかった…。
あと、某「 ネタバレ・ブログ 」で 伏線に 気づかなった事も 判明… )
ですが 「 兄弟 」の方は 「 確執の顛末?」自体は 良かったけど、
アンフェアっぽく※、強引なのが 残念。
〔 ※ 「 カインと アベル の名前 」から 逆転発想させた “手掛かり”…
みたいな感じ?
著者らしいんだけど、説得力がなかった… ( 伏線あった?) 〕
あと タイトルにもある 「 鴉( の襲撃 )」が 特に何もないのも。
たぶん、何かしらの意味はあるんだと 思うけど…。
その他、詳しい説明がないのも ありましたが、そっちは 気にならな
かったです。
という事で 「 話 」は 結構 好きだし、「 本格 」としても 少々思うところは ありましたが、 面白く 読めましたね。
( 「 麻耶雄嵩 好き 」ってのも 大きいが )
ですが 「 村の秘密 ( トリック的な部分 )」は かなり 良かったけど、
強引な部分があったし、「 ページ数 」( 上下二段の 350頁 )なんかも
鑑みれば、オススメし難い作品 ですね。
( 評価が 低め なのは よく理解できる )
それでも 98年の「 本格ミステリ・ベスト10 」で 1位の作品なので、
「 本格好き 」は( 余裕があれば ) 読んでおくってのも いいかも…?
「 揺籠のアディポクル 」 市川憂人
本格ミステリー。
治療を受けている 少年タケルと 「 左手が義手 」の少女・コノハ、
2人だけが 暮らしている 無菌病棟「 クレイドル 」。
だが、大嵐により 貯水槽が落下、「 一般病棟 」へ通じる 唯一の通路が塞がれ、
さらに 担当している 柳先生、若林看護師とも 連絡が取れなくなってしまう…。
翌日、目を覚ました タケルは 廊下に 「 血の付いた メス 」が落ちているのを発見、
そのまま コノハの部屋「 9号室 」に向かうと 胸を刺された コノハの
死体があった。
人の出入りが 限定されている「 無菌病棟 」の状況から タケルは
ある人物が犯人だと 推理をするが……。
著者作品の 単発作品としては 『 神と さざなみの密室 』を読んでます。
その 『 神と… 』が 「 社会派要素 強め 」の作品だったので 少し
心配していましたが、
本作は 著者らしい「 伏線多め 」の「 本格ミステリー 」で、
「 エンタメ 」としても 普通に 楽しめました。
本作は 展開を知らない方が 楽しめると思うので、ザックリ紹介。
内容としては
「 無菌病棟で 起こった 事件 」を巡る 「 青春&難病・ミステリー 」 で、
「 冒頭の モノローグ 」と 2つの「 幕間 」を挟んだ 「 三部 」構成です。
「 PART:1 」( 一部 )は、「 いろんな説明、紹介 」のほか、
「 タケルと コノハの 関係性の構築( ドラマ )」、
「 大嵐到来と コノハの死 」、「 タケルの推理 」と、
全体ページの ほぼ半分を 占めるだけあって 多めの展開。
ミステリー的には 「 IDキー 」と「 虹彩認証 」の存在、
「 貯水槽により 塞がれた 唯一の通路 」など、心惹かれる
内容になってます。
最後には 「 以外な展開 」を 見せるんですが、
いろいろと気になる描写が あったので、まあまあ 予想通り。
その後も 結構「 予想通り 」なんですが( 私は 思い至らなかったけど ) それは 著者も “織り込み済み” なんですよね。
幕間 「 Interlude(1) 」は、
「 無菌病棟に タケルが来る前の コノハの話 」。
「 ちょっとした事件 」が 起こりますが、これが 本編と どう繋がるのか 気になる パートでした。
ちなみに、この事件自体も ちゃんと「 本格 」でしたよ。
「 PART:2 」( 二部 )は
「 タケルが 謎解明に 奔走する 」パート…かな。
「 謎が深まる 」展開ですが、淡々と進むので 若干ダレるかも。
私は 「 アディポクル 」の意味が分かる事による 「 SF要素 」?の追加で、かなり 持ち直しました。
ちなみに タイトルの「 アディポクル 」の意味を 敢えて 調べずに
読んだんですが、個人的には 正解でしたよ。
もちろん “それ”自体は 知ってはいましたが、英語表記だと
分からないもんです。
一応、「 アディポクル 」の意味が気になる人向けに
本書からの引用を 「 カッコ内 白字 」※で 載せておきます。
〔 ※ アディポクル 「 死蠟 」( しろう )/ Adipocere。
死体が腐敗せず、脂肪酸と 金属イオンとの結合により 蠟状となる
現象。 または その死体 〕
幕間2 「 Interlude( 2 )」は 補足的なパート?
地味な話ですが コレがあるのと ナイのでは 説得力( 納得力 )が違い
ます…たぶん。
最後の「 PART:3 」で 真相が分かるんですが、
個人的には 「 アディポクル 」を 上手く絡めた 素晴らしい真相でした。
そこへの持って行き方も 上手く、「 なくなっている 」場面では
ちょっと 鳥肌が立ちましたよ。
正直、かなり強引( トンデモ強め )では あるんですけど、
「 アディポクル 」の使い方が凄くて 許しちゃうんですよね。
そのためか 「 苦手な顛末 」も すんなり受け入れてました。
個人的には 「 あのトリッキーな使い方 」に 衝撃を 覚えたし、
「 伏線 」自体も 良かったので 「 本格としての評価 」は 高めの作品でしたね。
こちらも 少々強引な点がありますが、『 鴉 』よりは ススメやすいです。