読書3 米国の“毒物学”ノンフィクション 「 毒薬の手帖 クロロホルムから タリウムまで~ 」 | berobe 映画雑感

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「 映画 」と「 本 」の感想

今月 読書3

 

 

「 毒薬の手帖 クロロホルムから タリウムまで

捜査官は いかにして 毒殺を見破ることができたのか

 

デボラ・ブラム

五十嵐加奈子

 

 

1920年頃の 「 ジャズ・エイジ 」と 呼ばれた 狂騒時代の アメリカ で

「 毒物の研究 」と 「 毒物事件の捜査 」に 尽力した

法医学者・チャールズ・ノリス 毒物学者・アレグザンダー・ゲトラー

 

2人業績を 当時の「 監察制度 」や 「 法毒物学 」、「 アメリカ社会 」と共に描いた ノンフィクション。 ( 舞台は 主に ニューヨーク )

 

 

メインの目次は

 

第1章 「 クロロホルム 」 1915年

第2章 「 メチルアルコール 」 1918~1919年

第3章 「 シアン化合物 」 1920~1922年

第4章 「 ヒ素 」 1922~1923年

第5章 「 水銀 」 1923~1925年

第6章 「 一酸化炭素 パート1 」 1926年

第7章 「 メチルアルコール パート2 」 1927年

第8章 「 ラジウム 」 1928~1929年

第9章 「 エチルアルコール 」 1930~1932年

第10章 「 一酸化炭素 パート2 」 1933~1934年

第11章 「 タリウム 」 1935~1936年

 

 

本書は 上記のように 「 毒物モノ 」で、「 科学モノ 」の ノンフィクション。

 

それらも 興味深く 読みましたが、

 

「 禁酒法 」や 注目を浴びた「 事件 」、「 出来事など 」から

「 米国社会の変化 」を 描いている 内容も 面白かったですね。

 

米国でも 話題になったようで、「 ドラマ化 」も されています。

 

 

 

19世紀 初頭までは 「 死体から 毒物を検出する事が 難しかった 」

ため 証拠が無く、多くの場合 “毒殺犯” は「 無罪放免 」でした。

 

ですが 「 基本元素 」や 「 化合物 」を 「 単離・同定 」する方法が

発見された事で、

新たな「 毒物 」の発見や 「 毒物の検出方 」の研究が 進みます。

 

「 金属毒 」の検出が 可能になった事で
検出が難しい 「 植物毒 」( 有機化合物 = アルカロイド )の使用が 増えたってのが 恐ろしいですね。
 
アメリカにも 「 薬 」や 「 原料 」として 「 近代的な毒 」が 広まるが、
「 毒物学 」は まだまだ 未開の分野で…という ところから 始まって
ます。
 
 
 
各章ザックリ紹介。
( かなり 削ったが長い…ので、興味がある方は どうぞ )
 

 

 

第1章 「 クロロホルム 」(1915年)

 

釈放された 「 腸チフスのメアリー 」 が 条件を破り※ 料理人として

働き始めた 1915年。

 

( ※ 再び 隔離されるが、すでに 25人が発症、2人の死者がでた )

 

「 孤児や 老人が暮らす施設で 人を殺した 」と 出頭してきた

職員の男、フレデリック・モース

 

モースは 「 片付け 」と 称して 施設長から 「 殺人 」を 指示された。

最初は 「 ヒ素 」で試すが 相手が 長く 苦しんだため 「 クロロホルム 」を 使い始めた…と 説明。

 

捜査が行われ、疑わしい証言も出ますが、

死体から 「 クロロホルム 」が検出※できず ( 証拠が出ず )、

結局( 扱いに 困り ) モースは 精神病院に…。

 

( ※ 死体から 「 検出 」

最初の被害者から 「 ヒ素 」を 検出しようとしたが、日頃から

患者に 強壮剤 として 「 ヒ素 」を与えていたので 証拠にならない )

 

ところが 「 クロロホルム 」の検出、確認方は すでに 確立していました。

 

実は この頃 「 検視官 」は 「 選挙で 選ばれていた 」んですが、

これは 支援者への ( 政治絡みの )“褒美” で、「 医学の知識 」は

必要なかったんですね※。

 

( ※ 「 杜撰な検死 」や 「 葬儀屋との癒着 」があった )

 

その後、モースを 移住元の オーストリアへ 「 強制送還 」しようとするんですが、モースは 病院を脱出し、そのまま 行方不明に…。

 

この事もあって 「 監察制度 」の 改革が 進む事になります。

 

 

「 クロロホルム 」の「 麻酔効果 」は、

科学者の ジェームズ・ヤング・シンプソン が 「 もっと良い 麻酔薬を 」と、自分助手を 実験台にして 発見。

 

麻酔のほか、鎮静剤や 睡眠薬などにも 使われましたが、

「 死亡事例 が発生した 」事で 使用停止に。

 

 

昔のドラマ などで( 今でもある? )

「 クロロホルム を嗅がせて 気を失わせる 」描写が ありましたが、

 

それが「 ウソ 」※だという事を 知っている人は 多いと思います。

 

〔 ※ 吸わせるのに 時間がかかる…等々。

あと、「 焼灼性 」( ヤケドさせる )も 持ってますね 〕

 

ですが この時代、

実際に 「 クロロホルム 」を使って 気を失わせる 強盗※が 結構いた

みたいですね。

 

〔 ※ クロロホルム強盗

「 染みこませた布 」で嗅がせたり の他、 飲み物に 混ぜたり

 

新聞( タイムズ紙 )の見出しにも なったようです 〕

 

 

近年でも 知らずに マネを したのか わかりませんが、

「 クロロホルム 」を使った事件はある みたい。

 

なので、あの描写を 「 ウソ 」というよりも 「 ドラマの 誇張 表現 」とか、

 

「 クロロホルムは 体の良い “麻酔薬マクガフィン” 」 という方が

適切な気がしましたね。

 

 

 

第2章 「 メチルアルコール パート1 」 ( 1918~1919年 )

 

ここから 「 監察制度 改革 」により 監察医務局長に 任命された

法医学者・ノリス と、 新たに 採用された 化学者・ゲトラー 登場。

 

 

「 禁酒法 制定 」が近づくなか、

飲酒者たちは 「 密造 」の準備をしていた みたいです。

 

「 密造酒 」( メチルアルコール )の製法を 超・簡単に 説明すると…

 

「 木材を 密閉容器に入れ、摂氏204度で 熱し 」、

そこから 「 蒸発して できた液体を 蒸留 」、

 

さらに 「 その液体を 蒸留する 」 と

「 純粋 メチルアルコールが 分離 」 されます。

 

「 簡単な工程 」よりも、「 木材が原料 」の方に ビックリ です。

 

 

その 「 メチルアルコール 」は、

「 穀物( エチル )アルコール 」より 「 代謝が ゆっくり 」なため、

体内分解により 発生する 「 ホルムアルデヒド 」

 

「 ギ酸 」( ネット調べ 蟻酸。 アリから発見 )が 長く 体内に止まり

それが 「 失明 」や 「 死亡 」に 繋がったみたいです。

 

 

この年は 「 スペイン風邪 」※も 流行していますが、

「 第一次世界大戦 」にも 参戦( 17年に 参戦 )してるんですよね…。

 

( ※ マスクだらけ。

劇場も 全ての窓を 開けていなければ 営業停止 )

 

 

という事で、「 マスタード・ガス 」※についても チョットだけ 書かれて

いました。

 

「 硫黄 」と 「 化学物質 」を混ぜ 発生させる 「 硫酸ガス 」( 糜爛ガス )の事で、

 

接触すると「 失明 」や「 皮膚の表面と 奥の ヤケド 」(水疱ができる)、

吸入すると 「 肺の 血性水疱 」になる…と、 悲惨な状態に。

 

( ※ 「 マスタード・ガス 」

ドイツ軍が 製造、使用し、英軍も 分捕って 使用した。

 

フランスは 「 塩素 」と 「 一酸化炭素 」を 結合させた 「 ホスゲン 」

導入、

アメリカも 「 塩素 」と 「 ヒ素 」を 組み合わせた 「 ルイサイト 」を開発 )

 

 

第3章 「 シアン化合物 」( 1920~1922年 )

 

昔の「 ミステリー作品 」で よく見かけた、

アーモンド臭 がする 毒物( 青酸カリ )で おなじみ(?)。

 

もともとは 「 節足動物 」の「 分泌腺 」から 発する 「 有毒物質 」で、

それを 「 シアノバクテリア 」( ラン藻 )が取り込んで 広まったらしい。

 

 

ドイツの画家が 顔料として 生み出した 「 プルシアンブルー 」

 

それに 「 酸性溶液 」を混ぜて 熱し、発生した 気体が 凝集した 液体「 青酸 」「 シアン化 水素酸 」 )。

 

気体「 シアン化 水素 」 で、

 

“白い粉末” にしたのが、

「 シアン化 カリウム 」( 青酸 カリウム )

「 シアン化 ナトリウム 」( 青酸 ナトリウム )

 

 

摂取すると 「 ヘモグロビンと 結合 」して 体内を 巡り、

「 細胞の エネルギー産生 」を 阻害。

 

「 酸素不足で 細胞が死滅 」する事で 痙攣状態や 窒息状態に

なります。

 

( 急性中毒の場合だと 2~5分で 亡くなるようだ )

 

この 「 シアン化 水素 」は 冶金( 金属の精製 や 合金の製造 )など、

いろいろと 使われていましたが、

 

室内などの「 燻蒸消毒 」にも 使われていて、

「 消毒後の換気が 不十分 」だったり、「 漏れたり 」で 死亡事故も

起こったようですね。

 

 

1920年に 「 禁酒法 」が制定 されますが、ご存じのように

「 密造酒 」が作られたり 「 もぐり酒場 」が 生まれたりと グダグダの

状態。

 

「 工業用アルコール 」※を 蒸留して 作った “ジン”の味を 誤魔化す

ため

「 ベネットカクテル 」、「 ジン・フィズ 」、「 サウスサイド 」といった

カクテルが生まれた みたいです。

 

 

〔 ※ 「 工業用アルコール 」( 「 変性アルコール 」 )

 

「 エチル( 穀物 )アルコール 」に 「 メチルアルコール 」などの

“毒” を加え、飲めなくした ( 変性 させた ) アルコール。

 

この「 変アル 」から “毒” を なるべく取り除いて 売るのだが、

その「 毒抜き 」の度合いは まちまち… 〕

 

 

 

第4章 「 ヒ素 」( 1922~1923年 )

 

「 ヒ素 」は 鉱物によく含まれている 半金属毒。

 

昔から よく使われている「 毒 」ですが、使われているのは

酸素が 結合した 「 亜ヒ酸 」( 三酸化 ヒ素 )。

 

食べ物や 飲み物に 混ぜると ほとんど 味がしなくなり

他の症状と 間違えられたりもするので 「 人気が高い毒物 」でした。

 

用途も 「 殺鼠剤 」、「 殺虫剤 」、「 塗料 」、

「 肌用ローション 」( 肌が白くなる )など 沢山あり 入手も 容易。

 

しかし 「 体内に 蓄積しやすく 」、「 検出方法も 多い 」ため

結構 リスキーな「 毒 」でも あったみたい。

 

 

「 禁酒法 」により ギャングの 「 違法アルコール 商売 」も 生まれ、

その事で 抗争も 勃発。 ( ラッキー・ルチアーノの 名前が出てきた )

 

「 禁酒法令の廃止 」の話も 出始めます。

 

 

第5章 「 水銀 」( 1923~1925年 )

 

「 水銀 」は 液体のような 金属※。

 

( ※ 『 T2 』T-1000っぽい 感じ。

「 水銀・体温計 」を 割ってしまい、見た事がある人も 多い? )

 

 

触ると 球体で 散らばる事から、錬金術師たちは 「 クイックシルバー 」と 呼んでいたようで、

 

「 ローマ神話 」の俊足、メルクリウス から 「 マーキュリー 」

名付けられました。


 

“球体” なのは 「 表面張力が 強い 」からで、

そのため 容易に体には 吸収されません

 

昔は 「 下剤 」として 飲む人が いたようですが、大半は 排出された

ようです。

( 多くは 時間が経ってから 「 腫瘍 」ができたみたいだが… )

 

 

しかし 「 塩素原子 」が結合した 「 塩化第二 水銀 」

 

“塩分を含む 液体” は 生体組織に 吸収されやすい 傾向を持つ 」 ため、「 体 」に 吸収されやすく、作用も 速い。

 

「 水や アルコールにも 溶けやすい 」ようです。

 

 

ちなみに この「 塩化第二 水銀 」で 亡くなった 事件として、

ハリウッド女優の オリーヴ・トーマスの 「 死亡事故 」を 取り上げて

います。

 

 

第6章 「 一酸化炭素 パート1 」( 1926年 )

 

1920年代に 起こった 「 自動車ブーム 」のため 「 自動車 事故 」が

増加。

( 州の 免許制度は 1922年からで、それまで 免許は いらなかった )

 

自動車からも 毒である 「 一酸化炭素 」が 排気されますが、

メインは 「 車 」※ではなく 「 ガス 」の方。

 

( ※ 「 車 」の方は 「 アンチノック剤 」として ガソリンに 添加されて

いた、 「 テトラエチル鉛 」の くだり。

 

これも 興味深いが 割愛。

「 WIKI 」によると 「 テトラエチル鉛 」を巡る 日本の動きは早かった

ようだ )

 

 

この当時 「 照明 」は 「 ガス灯 」なんですが、

そのガスの 主成分は 「 一酸化炭素 」と 「 水素 」

 

そのため 「 ガス漏れ 」( ガスは コンロなどでも 使用 )での

「 中毒死 」や、「 引火による 爆発 」が 結構 あったみたいです。

 

先の 「 シアン化合物 」( 青酸 )や、この「 一酸化炭素 」

 

酸素よりも 「 ヘモグロビンとの 結合力 」が強い※ため、酸素は

追いやられます。

 

( ※ 一酸化炭素の 「 ヘモグロビン との 結合力 」は

酸素より 200倍強いと 言われているようだ。

 

ちなみに 結合した 「 一酸化炭素 ヘモグロビン 」 は、

「 カルボキシ ヘモグロビン 」といいます )

 

 

「 一酸化炭素 」の場合の 「 初期症状 」は 眠気や 意識障害など

ですが、

時代がら 「 アルコール中毒 」との誤診も 多く、手遅れになる場合も

多かったようですね。

 

 

第7章 「 メチルアルコール パート2 」( 1927年 )

 

「 禁酒法 」が制定されて 数年経ちましたが、

「 飲酒運転の 逮捕者数が 約10倍になる 」 など、

 

以前より 大胆に 酒を飲む人が 増え、「 密造酒 」による 「 失明 」※

「 亡くなる人 」も 全然 減らず。

 

 

( ※ 「 メチルアルコール 」による 「 失明 」

 

肝臓での分解時に 生成される 「 ギ酸 」 が、

「 ギ酸塩 に 弱い 」 視神経や 網膜に ダメージを 与える。

 

「 脳 」の「 視覚領域 」にも ダメージを 与える様だ )

 

 

「 毒性の高い酒を 飲む方が悪い 」との 「 禁酒派 」※と、

「 反禁酒派 」の対立も 生まれ、

 

「 毒性を高めた 工業用アルコールは やり過ぎだ 」との 意見も

出始めます。

 

( ※ 禁酒派 「 反酒場連盟 」

パート1では 「 女性キリスト教 禁酒同盟 」の名もあった )

 

 

この「 章 」で興味深かったのが、

 

映画化された 小説、『 郵便配達は二度ベルを鳴らす 』 の題材に

なった、

妻の ルース・スナイダーと、愛人・グレイによる 「 夫殺害 事件 」、

「 アルバート・スナイダー殺害事件 」

 

2人「 雑な 偽装工作 」や、

裁判での 「 罪の擦り付け合い 」( 「 ルース 対 グレイ 」 )が 面白い

です。 ( 結局2人とも 死刑判決 )

 

注目された 裁判で、映画監督 D・W・グリフィスも 傍聴したようですよ。

 

ちなみに 処刑時、「 作家と偽り 見学室に入った 」 カメラマン

「 電気椅子に 掛けられる ルース 」を 写真に 撮ってます…。

 

 

第8章 「 ラジウム 」( 1928~1929年 )。

 

予想通り、科学捜査・ノンフィクション本 『 科学捜査ケースファイル 』 で 紹介されていた 「 ラジウム・ガール 」の 話 でした。

 

あと、「 ウラン 」から 「 ラジウム 」を発見した キュリー夫人 も。

 

 

「 ラジウム塩 」の投与により 腫瘍が 小さくなった事が判明、

 

「 ラジウム 」は 「 体に良い 」とされ、飲料や 肌クリーム、石鹸などの

製品に 使われていました。

 

 

その「 ラジウム塩 」「 亜鉛化合物 」から 「 発光塗料 」が 生まれ、

「 時計の文字盤の塗装 」に 使われる事に。

 

その 文字盤塗装・作業員の 女性たち

 

「 筆先を “舐めて” 整えていた 」 ため 「 ラジウム 」を 体に 少しずつ

取り込んでおり、やがて「 病 」( 骨折や 貧血 )に 倒れます。

 

 

「 ラジウム 」は 構造的に 「 カルシウム 」に 似ているため、

摂取すると 一部は 代謝されますが、ほとんどが 「 骨 」に 蓄積

 

蓄積した 「 ラジウム 」が発する

「 アルファ線 」( 放射線 「 ラジウム 」の半減期は 1600年 )

 

「 骨質 」を破壊「 骨髄 」にも ダメージを与えます。

 

「 顎の骨 が腐れた 」り、「 白血病になった 」りと 酷い状態に なりますが、

「 米国 ラジウム・コーポレーション 」との 裁判も 酷く、気が滅入りますね…。

 

 

1928年は 「 大統領選挙 」が 行われています。

 

共和党の ハーバート・フーヴァー は 「 禁酒法 」には 「 賛成 」で、

民主党の アル・スミス は 「 反対 」。

 

フーヴァーの方には 「 白人用と 黒人用の 学校統合 」

 

スミス の方には 「 密造酒組織から 資金提供を 受けている 」などの

ウワサが 流れていたみたい。

 

…って 今年の「 選挙戦 」と 変わらんな…。

 

結局、大統領に 選ばれたのは フーヴァー ですが、

 

「 毒性アルコール 」による 死亡は 依然として 多く※、

「 禁酒法 」に うんざりしている人も 多かったみたいです。

 

( ※ 「 毒でも飲む 」 という、アルコールの怖さも 垣間見える。

実際、大酒飲みは 何でも 飲んでいたが… )

 

 

第9章 「 エチルアルコール 」(1930~1932)

 

「 お酒も 毒 だから 適量飲めよ 」って事でしたね。

 

 

「 ラジウム・ガール 」の件 で 「 ラジウム 」の 危険性が 広まったかと

思いきや それほどでもなく、医師ですら 知らない人も。

 

ですが、億万長者の 実業家※で、「 テニスの全米チャンピオン 」でも

あった、エベン・M・バイヤーズ が 亡くなった事で 動きが出ます。

 

( ※ 1929年に 株の大暴落 「 ブラック・チューズデー 」が起こったが、その影響を 感じさせないほどの 金持ち )

 

5年前、バイヤーズは 左腕を負傷。

 

なかなか 治らなかったため、あらゆる医師に会い

ピッツバーグの医師 から ラジウム入りの飲料、「 ラジソール 」

薦められます。

 

1931年末 までに 「 ラジソール 」を 1000本以上 飲んだ

バイヤーズ「 骨 」は ボロボロ で、

 

32年に 亡くなる時には 体重は 42キロ まで 落ち

呼気には 「 ラドンガス 」※が 含まれていました。

 

( ※ 「 ラドンガス 」

「 ラジウム 」崩壊時に 発生する ガス。

「 ラジウム・ガール 」たちも 吐き出していた )

 

 

バイヤーズの友人たち政治家に 働きかけたため、

ようやく 「 米国食品医薬品局 」(「 FDA 」)が 警告を出すんですが、

 

市民労働者( 「 ラジウム・ガール 」 )の時は 動かなかったってのが

やるせない…。

 

 

あと、密造酒・「 ジンジャー・ジェイク 」による 被害も ヒドイ。

( 「 歌 」で 歌われたほど )

 

「 ジンジャー・ジェイク 」に 加えられた 可塑剤・「 リン酸 トリクレジル 」が、

「 変性アルコール 」と結合し 神経毒・「 有機リン酸 エステル 」を形成

 

この酒により 「 麻痺 」を 訴える患者が 大量発生し、

「 ジェイク・ウォーク 」と呼ばれる 歩行障害を 起こす人も出るんですよ。

 

ちなみに この「 有機リン化合物 」から 「 サリン 」が作られます。

 

 

第10章 「 一酸化炭素 パート2 」( 1933~1934年 )

 

タバコの喫煙では 「 一酸化炭素 」も 吸っています。

 

ゲトラー「 血中の 一酸化炭素の 量 」( 飽和度 )を調べたところ、

 

田舎の人の 「 血中一酸化炭素 飽和度 」は 「 1%未満 」、

車の排気ガスの影響を 受けている 街路清掃人は 「 3% 」、

ヘビースモーカーは 「 8~19% 」、

 

との 結果が出てました。

 

( 「 ネット調べ 」だと、「 血中の一酸化炭素の 半減期 」は

3~4時間 程度らしい )

 

ちなみに 「 致死量 」としては 血中飽和度は 「 50~60% 」が多い

みたいですが、 「 30% 」で 死亡したケースも。

 

 

1932年の 「 大統領選挙 」では ルーズベルトが勝利。

 

「 憲法修正18条( 禁酒法 )廃止 」が 決議 されますが、

正式に 終了させるには 「 憲法改正( 修正 )」が 必要。

 

その「 修正案( 21条 )」は 米国・48州中、4分の3 に あたる

36州が 批准しなければ 立法化 しないんですが、

 

各州が 議会を招集し、採決を進めているなか 「 禁酒法 」が緩和
されて、 4月に 「 ビールを 合法化 」してるんですよね。
 
その時 ニューヨークに 出荷、供給された 「 合法ビール 」は
すべて 消費されたらしいですよ。
 
 

「 禁酒法 」は 12月5日に 廃止になりますが、

「 第9章 」での 生命保険会社の 数字によると、

 

1930年初めの 「 アルコール依存症による 死者数 」

「 禁酒法 」前(1920年)より 600%増加した みたいですね…。

 

第11章 「 タリウム 」( 1935~1936年 )

 

この頃になっても 「 有害物質への規制 」は ほとんどなく、

 

「 米国食品医薬品局 」にも 「 最低基準の安全を決める 」権限すら

なかった ようです。

 

毒性のある「 タリウム 」が入っている 「 脱毛クリーム 」も 売られ
そこそこ 流行。

 

「 消費者運動の活動家 」が 警告を発するのですが、

 

女性雑誌( 『 ヴォーグ 』 )に 効果を絶賛する 広告が 載っていたため、

女性たちは 購入し続けたみたいですね。
 

 

その「 タリウム 」は 「 カリウム 」と似た 原子構造のため、

「 カリウムチャネル 」※を 通って 「 細胞核 」に入り込みます。

 

( ※ 「 カリウムチャネル 」

「 WIKI 」調べによると、「 細胞膜など 」にある、受動的に イオンを

透過させる 「 イオンチャネル 」の一種 で、

 

「 カリウム・イオン 」を選択的に 通過させることで 細胞機能を維持

しているようです )

 

 

「 カリウム 」は 細胞内の「 体液バランスを 維持 」しますが、

「 タリウム 」は 「 細胞の代謝 」を阻害します。

 

高濃度の場合は 「 嘔吐 」、「 震え 」、「 息切れ 」の症状が現れ、

30時間で 死亡。

 

特徴的なのが 20日以上生きのびた( ゆっくり進行した )時に

現れる 「 脱毛症 」。

 

先の「 脱毛クリーム 」でも 「 抜毛 」被害があり、

 

「 顎 」に クリームを塗った女性の頭髪が「 ほとんど抜けた 」( 禿げた )事例も。

 

あと、「 失明 」した女性も いたみたいです。