今月 読んだのは
漫画『 ジョジョ 4部 』の スピンオフ作品の「 小説版 」、第二弾
「 岸辺露伴は戯れない 」 北國ばらっど、 宮本深礼、 吉上亮
“毒殺”・アンソロジー
「 毒殺協奏曲 」 柴田よしき、篠田真由美 他、全8名
1920年頃の米国の 「 法毒物学 」を描いた ノンフィクション。
「 毒薬の手帖 クロロホルム から タリウムまで~ 」
著 : デボラ・ブラム 訳 : 五十嵐加奈子
の3冊。
( 「 毒 」が 続いたのは たまたま です )
初めに 「 漫画・スピンオフ小説 」から。
「 岸辺露伴は戯れない 」
北國ばらっど、宮本深礼、吉上亮
原案 : 荒木飛呂彦
漫画『 ジョジョ 4部 』の キャラ、岸辺露伴が 主人公の
スピンオフ小説、第二弾で、 全4作品。
「 漫画家・岸辺露伴 が 怪異に遭遇、エライ目に遭う 」という
ホラー要素のある サスペンス で、「 特殊能力モノ 」でも あります。
今回は 全4作品で、第一弾『 ~ 叫ばない 』( 全5作品 ) よりも
本数は 減りましたが、総ページ数は 同じです。
という事で、前回は ページ数の関係で 「 状況 」、「 サスペンス 」描写が 少なめで、
個人的には 若干 「 ゴゴゴゴゴ…感 」( 緊迫、緊張の「 間 」的な ヤツ )は 不足気味でしたが、
今作では 一作品の ページ数が 増えた事で 諸々の「 描写 」が
増えており、「 怪異 」場面では イイ感じの 「 緊張の “間” 」 が
ありましたね。
「 露伴の心情 」描写も 多かったし、
「 展開 」も増え 緩急も付き、前回より サスペンスフルな 雰囲気を
感じました。
「 怪異 」としては 前作は 「 怪異ハンター 」・「 戦闘モノ 」色が 強め
の内容 でしたが、
今回 それらは 前作よりも 「 少し 控えめ 」なので、
それを期待すると 少し 肩透かしを 覚えるかも…。
その分、今回は 「 人物 」描写によって 「 ドラマ性 」が 増していて、
「 “想い” を巡る 」 心理・サスペンス( ホラー )的な 趣 が強い
内容に なっていました。
あと、前作は 「 いきなり ピンチ 」な展開を 強く 感じましたが、
今回は 「 ジワジワ 」、「 ゾワゾワ 」を 経て 「 徐々に ピンチになる 」
感じを 覚えましたね。
という事で、個人的には 今作も
「 露伴 」としても、「 怪異譚 」としても 満足できましたよ。
「 幸福の箱 」 北國ばらっど
「 鑑定眼はあるが 人間的には… 」な 古美術商、
五山一京( ござん・いっけい )から、「 幸せの箱 」と 呼ばれている
「 箱 」を “一人で見てほしい”と 頼まれた 露伴。
相手の思い通りには なりたくなかった 露伴 だったが…。
露伴の 「 箱に 没頭する姿 」、その後の 「 興奮する姿 」 が
不気味&面白い 作品。
露伴が “一人” に なってから 終始 漂う、「 幻想・幻惑 」的な 雰囲気も 楽しい。
捻った「 真相 」、「 妄執の 想い( ドラマ )」( 愛の話であった )も
良かったし、
「 能力 」を使った事で 訪れる、「 “不幸” な結末 」も 好み でしたね。
「 夕柳台 」 宮本深礼
露伴は ひょんなことから 住宅地・「 夕柳台 」で 起こった
「 見えない 猿 」の話を聞く。
その「 怪異 」に 興味を 覚えた 露伴は 「 夕柳台 」に 赴くが…
女性から 聞く 「 怪異譚 」と 露伴の「 実地調査 」の 2部構成(?)。
「 怪異譚 」が 思ったよりも 不気味な話で、気分が上がります。
露伴が 「 夕柳台 」へ行く 中盤は 徐々に「 不穏感 」が高まっていく
展開で、個人的には 「 公園 」の描写に ゾクゾク しましたね。
“猿” の…も 「 ジョジョっぽかった 」し、
状況が 「 好転から 再び 暗転する 」展開も 楽しい。
…の 「 無垢?な悪意( 想い )」も 今日的 で、
それが「 序盤の くだり 」にも 繋がってくる 構成も 上手い。
皮肉な オチも 良かったな~。
「 シンメトリー・ルーム 」 北國ばらっど
「 大学の学長の 変死 」を 調べるため、くだんの 大学を 訪れた 露伴。
露伴は そこで この「 新校舎 」を 設計した、
“奇異な格好” の 建築家・土山章平( つちやま・しょうへい )と出会う。
この作品が 一番 「 前作の テイスト 」(「 戦闘モノ 」)に 近いかな。
「 学長の “死の状況” 」が ケレン味たっぷり( 残酷 )なのが イイし、
土山も 超・面白いキャラ でしたね。
前半は 露伴と この土山の 「 会話 」展開で、
土山 の印象が 「 変わった人 」から、ジワジワと 「 ヤバい人 」 なって
くる 流れが イヤでしたね。
“アレ”を 貶される 露伴も 面白く、 しかも ちゃんと 展開に 活かされているのも 良かったな。
「 シンメトリーの部屋 」の「 謎 」?も 不穏感 抜群で、
そこからの 「 ヤバイ 」状況 と、
露伴らしい 「 状況への対応 」が “熱い” です。
徐々に 「 範囲 」が広がったり、全然 好転しない状況も スリリング。
土山の「 悪意ある 意図 」も 切迫感を 煽ります。
でも、最後の…は 原作に あったとはいえ チョット残念 かな。
ですが あの「 記述 」のアイデア※は、素晴らしかったですね。
ちゃんと 「 伏線っぽい 」のも あったし。
( ※ あの「 記述 」
私は 一応、学んでたので “すんなり” でしたが、若干 説明不足な
感じも…? )
「 楽園の落穂 」 吉上亮
希少だが 味が良く、“ある力” が あるらしい 世界最古の小麦、
「 楽園の落穂( おちぼ )」。
露伴は その「 楽園の落穂 」の取材のため、
編集者・移季年野( うつろぎ・としや )と、その 幼い娘 で
「 小麦アレルギー 」を持つ 羊( よう )と共に 「 楽園~ 」を 栽培している 山頂の村へ 赴くが…。
「 書き下ろし 」作品。
「 コミューン系 」の設定からして 「 イヤ~な予感 」がする 作品。
移季の 「 娘の 小麦アレルギーを 治せるかもしれない 」との
切実な願いが 切ないんですが、
同時に 「 イヤな予感 」、「 不安感 」も 増していくんですよ。
その後の 「 楽園の落穂のパン 」を 食べる 移季の 凄まじい 食欲には
そこはかとない恐怖を 覚えるし、( 「 パールジャム 」も 頭をよぎった )
頼りの 露伴も 「 楽園~ 」の・・・し、 村民も・・・だし、
「 何だかヤバイ 」雰囲気が漂う ( 愉快な )展開に…。
後に分かる 「 楽園~ 」の “ある力” も
「 SF系・ホラー好き 」には たまらない “おぞましさ” で、
露伴の「 能力 」が・・・展開も あったりと、かなり 楽しい 内容 でした。
あと、露伴が 「 幼い娘・羊 を守る 」ところは、
かなり “燃える”( 萌える )展開 でしたね。
壮大な「 目的 」( 真相 )も 好みのヤツ だったし、
「 父娘の絆 」、「 娘への想い 」のドラマも 結構 感動しましたよ。
ただ、欲を言えば 「 エンタメ的な 見せ場 」が もう少し 欲しかった
かな。