9月に読んだ本、残りの 「 ミステリー 」 2冊。
「 むかしむかし あるところに 死体がありました 」
青柳碧人
「 おとぎ話 」を 題材にした 「( 特殊設定 )本格・ミステリー 」 で、
全5編。
誰もが知る 「 昔話 」で 取っつきやすく、ページ数も 少なめ なので
読みやすい作品でした。
正直 「 本格 」としては あまり 期待していなかったのですが、
「 本格度 」も 結構 高く 感じましたね。
( 2020年 「 本格ミステリ・ベスト10 」で 9位 )
話自体も 面白かったので、総じて オススメ度は “高め” かな。
1篇目 「 一寸法師の不在証明 」
姫ら一行 が 参拝の帰途で出遭った 鬼 を
「 鬼の お腹の中に入り 」 懲らしめた “小人”の一寸法師。
その後、鬼 から 「 打ち出の小槌 」を得た 一寸法師は
それを使い 大きくなり、姫との結婚も 決まる。
┋
鬼 を懲らしめた日、都から離れた村の家 で 起こった 殺人事件。
その家は 「 つっかえ棒 」のため 「 少し 隙間のある 密室 」だった。
そのため “小人だった” 一寸法師に 疑惑が掛かるが、
その時間 彼 は 「 鬼のお腹の中 」に いたのだった…。
という 内容。
「 本格 」なのもあり、書く事( 書ける事 )は 少ないな。
「 ミステリー 」としては 「 チョット気になるかも… 」な ところも
ありましたが、
「 シンプル でありながら 緻密さもある 」 ミステリー構成 で
「 特殊設定・本格 」 として すごく良く 出来ていました。
「 話 」としても (1編目という事もあり )いろいろと インパクトがある
「 内容 」でしたが、
最後の「 …の正体 」( 伏線っぽいのもあった )の おかげで
ほっこりする 終わり方 でしたね。
2編目 「 花咲か死者伝言 」
空腹の白犬は、「 “灰” で 桜に花を咲かせた 」 茂吉爺さん に
“次郎” と 名付けられ 飼われる事に。
しかし わずか 4日後、
茂吉爺さんは 丘の麓で 「 撲殺された 死体 」として 発見される。
その丘の てっぺんからは 死体までは 「 帯び 」のように 花が咲いて
いており、茂吉爺さん の手には 「 ぺんぺん草 」が 握られていた…。
タイトル通り、
「 茂吉爺さんの残した ダイイング・メッセージ 」を 巡る話。
白犬の “次郎” 視点で 話が進む展開は
「 人の “優しさ” と “醜さ” 」が 強調される 形になり、
「 人間ドラマ性 」の高い(?)内容 になってました。
「 茂吉爺さん の性格 」を 活かした エピソードも 説得力があり、
「 丘に 咲いた花 」の くだり は 結構 感動的。
それとは 対照的な 「 真相 」も “好みのヤツ” だったし、
終盤の 「 “次郎” の奮起 」も 印象深く、読み応えのある 作品でした。
3編目 「 つるの倒叙返し 」
借金の取り立てに来た 庄屋を 「 鍬( くわ )」で 殺した
弥兵衛( やへえ )は、その死体を 「 奥の間の襖 」の向こうに 隠す…。
┋
鶴の つう は 弥兵衛に 恩返しをするため 人間の女性に姿を 変えて
彼の家を訪ね、「 反物 織り 」を 申し出る。
つう は 「 織っている間は 中を覗かない事 」という 条件を出すが、
弥兵衛の方も 「 奥の間の襖の 奥を覗かない事 」と 条件を出すの
だった…。
「 弥兵衛 視点 」と 「 つう 視点 」が 交互に展開するという、
「 よくある ミステリー構成 」で 心が躍りましたね。
「 弥兵衛が 疑われる 」展開も まあまあ 緊迫感があって、
サスペンスとしても 普通に 面白いです。
かなり強引 に・・・でしたが、
面白かったので 個人的には そんなに 気にはならなかったかな。
伏線が 若干、気になりましたが ( 「 鍬 」の くだり とか )、
塩梅が難しいので あれで 良かったんでしょうね。
4編目 「 密室竜宮城 」
亀 を助けた お礼として 竜宮城へ 招待された 浦島太郎。
竜宮城は 不思議な 「 ととき貝 」により 海中なのに 空気が吸え、
さらに その中で 海の生物たち は “人の姿になる事” もでき、
ほとんどは “人の姿” だった。
「 宴 」を 楽しんだ 太郎だったが、しばらくして 「 冬の間 」 で
「 殺人( 殺魚 )事件 」が起こる。
その「 冬の間 」の 入り口は 「 かんぬき 」が 掛かっており、
窓にも 「 珊瑚 が張り付いていて 」 開ける事が出来ない 「 密室状態 」
だった。
「 人としての 知恵 」を持つ 太郎は この事件の調査を 頼まれるが…。
タイトル通り 「 密室モノ 」 で、それっぽく 竜宮城 と 「 冬の間 」の
「 見取り図 」も 載っているんですが、
各部屋に 海洋生物の名前が 書かれているのが なんだか シュール
でしたね。
その 「 密室事件 」に 「 謎の闖入者 」 や、「 色恋沙汰 」も 絡んでくる
内容です。
その「 設定 」から、何となく 「 トリックの方向性 」に 見当をつけましたが…そっちかい!と なりましたよ~。
その 「 トリック 」も 素晴らしく、
伏線も シンプルで 「 なるほど 感 」が 半端なかったですね。
( 気づく人も 多そう? )
5編目 「 絶海の鬼ヶ島 」
かつて 桃太郎と お供の獣たち による “大虐殺” が起こった、
今は 「 十三頭の 鬼たち 」が住む 孤島、鬼ヶ島。
┋
島に 「 嵐 」が 近づきつつあるなか、「 ケンカ両成敗 」のため
鬼太 は「 針毛浜の小屋 」に、
鬼茂 は「 鬼見晴らしの小屋 」に それぞれ 閉じ込められる。
次の日の朝、「 鬼見晴らし 」の崖の中ほどの 「 岩棚 」で
「 鬼茂 の死体 」が発見される。
その死体 には 顔が判別できないほど 無数に
「 猿 が引っかいたような傷 」 が残されていた。
さらに 凶行は 続き…。
孤島を舞台にした 「 クローズド・サークル もの 」 で、
もっと いえば 鬼ヶ島版 『 そして誰もいなくなった 』 ですね。
内容と 関係ないけど、
序盤の 「 桃太郎たちの 虐殺 」が結構 楽しかったです。
「 本格 」としては 他の4編より 伏線は “若干 弱め” に感じました。
かなり 重要な・・・については、“それっぽい説明” が あった方が
良かったかも…。
それでも 「 殺鬼事件 」によって 起こる 「 鬼たちの 恐慌 」は
“ベタ” とはいえ 盛り上がる 展開 だし、
「 定番・ミスリード 」も 効いていて 緊張感も 結構ありましたよ。
最後の 「 ○○○登場 」も なかなか 怖い描写だったし、
「 歪 な動機 」も “好み” で、個人的には 十分 楽しめましたね。
あと、ほとんど いないとは 思いますが、
作中に 他の編の “要素” が チョット 出て来るので 最後に
読みましょう。
「 化石少女 」 麻耶雄嵩
本格ミステリー の連作短編 で 全7話( 1~6章 + エピローグ )。
2年生の「 化石オタク 」の “奇人変人” の部長、神舞まりあ と、
幼なじみの 1年生、桑島彰(・あきら )の 2人しか 部員がいない、
名門・ペルム学園 の 「 古生物部 」。
その 彰 は「 “まりあ の父親” の会社 」に 勤める 父親から
「 まりあの お守役 」 を 言い含められていた。
部員数が 少ない「 部 」は、生徒会から 目を付けられ 「 廃部候補 」に 挙がっており、
「 廃部 」を 免れるには “部員数を 5人以上にする” か、“実績を出す”しかなかった。
そんな中、学園で 「 事件 」が起こる。
まりあは 生徒会の しわざと 推理するのだが…。
内容 としては、
“変人・化石オタク”・まりあと、 その “お守役”・彰 の「 関係性 」と
「 古生物部 存続の危機 」を巡る 「 ドラマ 」、
生徒会らの 「 学園の派閥争い 」と、そんな中で 起こる 「 怪事件 」を
描いた 「 学園ミステリー 」って ところで しょうか。
「 2人の関係 」に “影が掛かりそうな感じ” の展開になるんですが、
ユーモアを 交えているので 「 暗さ 」は ほぼ無し。
…と 思いきや、彰 が “従僕”に 気付く 「 第5章 」 あたりから 若干、
不穏な空気が 漂ってきてましたね。
さらに 「 6章 」を 経ての 「 エピローグ 」では…
そういう事もあり、「 話 」的には 結構 面白く 読めました。
「 ミステリー 」としては、毎回 学園で 起こる 「 事件 」を、
「 生徒会を 良く思っていない 」 まりあ が
「 生徒会 ( 会長含め 6人 )を 犯人 」 として 推理する…
と、「 ひねくれたミステリー が 持ち味 」の 麻耶雄嵩作品 らしい
チョット変わった 趣向になってましたね。
「 怪しヤツ ありき で 推理を構築 」する展開は
ミステリー で たまに見かけますが ( 大概 間違った 推理 )、
それが 主人公( 探偵 )ってのが 特徴的です。
その まりあ が考えた トリックや 真相は 「 かなり 強引 」※ なのですが、
1つだけ 「( まあまあ )“強い” 状況証拠 」 があるため、
「 生徒会の犯行の関与 」を 完全には否定できないってのが
面白いんですね。
( ※ 推理が「 かなり 強引 」
「 ミステリー的 」には ホームズの
「 可能性を 消去して 最後に残ったものが 真実 」が 思い出される。
「 終盤の展開 」からすれば、著者は それを ある程度 意識して
いそう…? )
その 強引な「 推理( トリック )」自体は なかなか 面白い発想で、
個人的には ( 世界観も 考慮し )“まあまあ 楽しめた” と 言えるかな。
それでも 「 本格・ミステリー 」 としては “物足りなかった” という
感想にも なるのですが、
この頃に 書かれた 『 さよなら神様 』※、『 あぶない叔父さん 』 を
鑑みれば、
著者の 「 本格の?探偵の?解体 」…みたいのが 垣間見え、
とても 興味深く 読めましたね。
( ※ 『 さよなら神様 』
ミステリー なのに 「 最初に 犯人の名前 」が挙がる 異色作。
2015年 「 本格ミステリ・ベスト10 」 で 1位 )
まあ、オススメ度は ”低め” ですが。