7月 読書 残りの 2冊、
「 ラブクラフト全集4 」 と、「 パライゾ 」。
「 ラブクラフト全集4 」 H・P・ラブクラフト
ホラー 長短編集。
ラブクラフト作品は 「 ホラー映画 」で 原作や モチーフとして
度々使われているので、
前々から 一冊は 読んでおきたいと 思ってたんですよね。
で、今回 『 全集 』から 選んだのは 『 4 』。
その ラインナップ は
「 宇宙からの色 」
「 眠りの壁の彼方 」
「 故アーサー・ジャーミン と その家系に関する事実 」
「 冷気 」
「 彼方より 」
「 ピックマンのモデル 」
「 狂気の山脈にて 」
の 7作品。
この 『 4 』を 選んだ 理由としては、
リドリー・スコット監督 『 プロメテウス 』の 元ネタ とも いえそうな
「 狂気の山脈にて 」 が 読みたかったから。
それと、中島京子の短編集 『 妻が椎茸だったころ 』 の1編、
『 蔵篠猿宿パラサイト 』に 出てきて 興味を 覚えた、
「 宇宙からの色 」も 入っていたのも 選んだ 理由の ひとつ です。
その「 宇宙からの色 」は 今月末に
映画 『 カラー・アウト・オブ・スペース 遭遇 』 との タイトルで
ニコラス・ケイジ主演で 公開 されます※。
( ※ 雑誌記事で 知りましたが、制作したのは イライジャ・ウッド が
創設した会社 「 スペクター・ヴィジョン 」。
ニコケイ主演の 『 マンディ 地獄の~ 』(18年)も そうでしたね )
一番 面白かったのが その 「 宇宙からの色 」。
貯水池の 調査員が 「 焼け野 」と呼ばれる
「 植物が 生えていない 荒涼とした土地 」の事を アミ老人 から聞く。
それは ガードナー家の 果樹園に落ちた「 隕石 」が発端の話
だった…
という内容。
『 猿宿 』 が 「 石の話 」 だったので、こちらも 「 石( 隕石 )の話 」かと思っていたら 少し 違っていて、
宇宙から来た 正体不明の 「 奇妙な色 」にまつわる 恐怖譚 でした。
最初は ちゃんと 教授たちが 「 隕石 」を 調べるという、
科学的な展開に 驚く。
今作以外 にも 「 科学的な アプローチ 」が なされている作品が 多く、
それが 「 スケールの大きさ 」 や 「 未知の恐怖 」に 繋がっていましたね。
その「 隕石 」 には
「 可塑性があり、 熱を持ち、 反応として 光 を発し、徐々に 小さく
なる… 」 などの 性質が あるんですが、
結局 よくわからないってのが 不穏 でね…。
隕石の中心部に 「 描写することが “不可能な色” 」 を見つけ、
「 採取するため ハンマーで 叩くと、破裂し 消滅する 」 くだり の
“あっけなさ”も 超・不気味。
その 「 色 」も、普通なら 何かしらの表現で 喩えそう ですが、
それすらない ので 想像力を 掻き立てられます。
その後の 「 果樹の豊作 と 味の変化 」、
「 ちょっと 形が 変わった 動物、昆虫、植物が 出現し…」 を 経て、
「 ガードナーの土地と 家族に 異変が 起こる 」展開も、
変異が ジワジワ迫って来る様が 感じられて イヤ~な雰囲気。
後半の 「 動植物の “灰色” 」 と 「 奇妙な色 」( “見た事がない色” )の対比も ゾワゾワ したし、
それでいて 幻想的?な 最後も 印象に 残りましたね。
映画での 「 色 」の表現が 気になります。
「 狂気の山脈にて 」
南極大陸の調査に 向った 探検隊 が、「 巨大な山脈 」を発見。
その奥には 「 巨大な 石造都市 」があり、そこにあった 「 彫刻壁画 」 から、
「 宇宙から来た 生命体( 旧支配者 ※ )が 地球に生命を
もたらし、支配していた 」事を知る… みたいな話。
( ※ 旧支配者 との 表記だったが、“古のもの” と呼ぶ方が
一般的 みたい )
「 クトゥルフ大系 」の基盤 といえる 内容…で いいのかな。
「 南極の調査をするな 」との 警告のための 手記 なんですが、
これを 読むと 逆に 調査したくなりそう…。
基本は 「 調査・探検 譚 」なので、エンタメ性は 思ったよりも 低め。
「 調査の過程 」が かなり詳細に( ドキュメントのように )書かれて
いますが、
そのせいで ツッコミ箇所も 強調される感じを 受けましたね。
探検の最後の方も 「 巨大・白ペンギン 出現 」 で、
緊張感も あまり 湧かず…。
ただ、「 石造都市 」を 支配していた?のが “アレ” で、
“オチ” にも 効いていたのは 良かったですね。
でも、個人的には 先に 調査しに行った、レイク分隊の「 全滅 」 が
読みたかったな~。
地球に 「生命を 創った 」※ 旧支配者 は、
( ※ 食料のため。 脅威にならない限り 基本、ほったらかし )
「 植物的な要素 」を持ち、「 樽っぽい体型 」 で 「 膜状の翼 」があり、
「 五芒星 ( ヒトデ形 )の頭部 」という 外観※。
( ※ 「 古のもの 」で 画像検索 すれば 多くの イラストが 見れます )
「 体も 強靭 」で、空だけではなく、「 宇宙も飛べる 」…と 高スペック。
あと、「 部屋の 中央に 物を寄せ、壁には “壁画を書く” 」 という、
「 芸術指向な 性質 」も 持っているんですよね。
その 旧支配者 は クルウルウ( クトゥルフ )の末裔 と戦い、
新大陸を 盗られたり ( 最後は 和戦… )、
ゼリー状の 奴隷生物・ショゴス の反乱を 押さえたり、
「 甲羅で覆われた 菌類生物 」 ミ=ゴ の襲来を受けたりと
意外と 苦労してるのが 可笑しかったです。
しかも 地球に 長く 暮らすうち、超重要な 「 生命創造 術 」や、
「 宇宙飛行 術 」を 失っちゃうんですよ…。
そんな ダメになっていく? 旧支配者を さらに 追い込んだのが
地球環境の変化 による 「 氷河期 」ってところも チョット切ない…。
映画 『 プロメテウス 』とは 「 生命創造 」( 創造主 )の共通点は
ありますが、
それよりも 「 植物的な要素 」も持つ 旧支配者の 「 胞子による 繁殖 」
から
『 コヴェナント 』 での 「 黒胞子を 吸った事で 誕生した ネオモーフ 」が想起 され、
逆に 「 宇宙からの色 」の
「 “奇妙な色” に 汚染された 井戸水 」による 「 生物の変容 」 と、
『 プロメテウス 』の 「 黒い液体 」による 「 人間の変容 」が 似ていると
感じましたね。
本来、リドリー ( ダン・オバノン?)が 描きたかった エイリアン は、
『 エイリアン DC版 』 での 「 人間の “エッグ” への変容 」場面 から
窺えるように、
「 理解できない ( 人知を超えた )生物 」 なんですよね。
『 2 』 では 理解しやすい 「 女王による 産卵 」と 普通になった のは
個人的には 残念 です。
あと、旧支配者( 創造主 )も 思ったほど
「 完璧じゃない 」( 意外と ダメダメ )ってのも 共通点 といえるの
かも…?
「 冷気 」は、
「 ある “病気” のために 部屋を 冷やしている 博士 」の話で、
オチは 何となく 読めるものの、回りくどい 表現?による
「 最後の1行 」は インパクトがありましたね。
この 「 冷気 」 は、
ラブクラフトの オムニバス映画 『 ネクロノミカン 』(93年)の 一編
として 金子修介監督 が 「 映像化 」 しているんですよね。
ちょっと 興味を 覚えますが、結構 脚色されている様なのが 気がかり。
ちなみに 他の二編の 監督は それぞれ ブライアン・ユズナ、
クリフトフ・ガンズ ( 『 ジェヴォーダンの獣 』(01年) 結構 好き )
です。
あと、この映画の 小説版、『 小説ネクロノミコン 』 もあります。
「 ピックマンのモデル 」 は、
「 気味の悪い 作品を 描く 画家、ピックマン 」の話で、
結構 有名な作品 みたいです。
一見、「 普通のオチ 」 ですが、「 写真の内容( “描写” )」を 思うと
“ゾワッとくる” 構成に なっているんですよね…多分。
初ラブクラフト作品 でしたが、総じて 面白かったです。
個人的には 「 科学的な視点 」を 盛り込んでいる ところが
良かったですね。
ただ、訳のせいか、原文のせいか、チョット読みづらかったな。
「 パライゾ 」 阿川せんり
不条理・人間ドラマ の連作短編。
「 青春小説 」を得意とする作家 らしいので、不安もありましたが、
好みの 設定と 話 で 面白かったです。
突然、多くの人間 が 「 鳥の様な形で 圧縮され 」、
ねじれた 「 黒い塊 」(「 黒い グズグズ 」)になる。
その「 黒い塊 」は 魚のように ビタンビタン と飛び跳ね続けていた…。
「 黒い塊 」に “変わらない者” も いたが、彼ら には ある “共通点” が…。
という 設定で、「 10の エピソード 」があります。
「 帯 」には 「 ディストピア小説 」と ありましたが、
ほとんどの人間が 「 黒い塊 」になるという、
実質的に “人類が滅びゆく” 状況 なので
「 終末 小説 」の方が 適切な気がします。
終盤も それっぽい内容 だったし、
人が多かった 場所は そこらじゅう 「 黒い塊だらけ 」( 服などは 残る ) になり、
電車は脱線、火事も起きている様は まさに 「 地獄絵図 」 だったしね。
「 地獄 」と 言えば、今作の「 元ネタ 」( モチーフ )は、
この間 少し 書いた
キリスト教の 「 携挙 」〔 終末時、敬虔な信者は 身体ごと 神の元へ 〕
でしょうか。
タイトル からは 某漫画の 有名なセリフ?「 “ぱらいそ”さ 行くだ! 」
を 想起するし。
気になる “変化しなかった者” の共通点、
○○ ( 何となく わかると思うが 一応 伏字 ) は 最初の話で
あっさり 判明。
( 一応、ミステリーっぽい感じでは あった )
その ○○ に至った 経緯や、「 黒い塊 禍 」の前後の話 を、
「 心理ミステリー 」、「 人間ドラマ 」、「 社会派 」など、いろんな要素を
織り交ぜ、描いています。
テーマ としては 「 罪 」だと思いますが、
“贖罪” などで 「 安易に答えを 出していない 」のが
( “ひねくれ者” としては )好感が 持てましたね。
ほとんどの話が 「 皮肉な結末 」なのも 良かった( 好みだった )な~。
特に 面白かったのを 紹介。
「 夢 」 は、
「 常に 記憶が 朧げ 」 で、そのため 現実感が薄く、
「 現実と 夢を 混同しがち 」な イラストレーター男 の話。
その都度、日記や 手帳で 現実を 取り戻している この男は、
「 黒い塊 禍 」の中でも 緊迫感や 切迫感は 皆無。
小説や 映画の知識で ちょっとした 「 サバイバル生活 」や
「 黒い塊の 調査 」をするという、 緊張感のない展開 なので、
「 このまま だらだらと 野たれ死ぬ 」のかな?…と思いきや
終盤、この男が 「 何を 忘れ “続け” ているか 」 が わかるんですよ。
しかも それが ○○ じゃなく、根源的な…なので 読んでいる こちらも
気が滅入りましたね。
「 愛 」 は、
「 黒い塊 禍 」が起きた後の世界で
「 病気の愛犬 を 救おうと 奔走する 」 男の話。
男は “ある場所” から 急いで 家に戻るんですが、
家の中の 「 黒い塊 」はそのままに、
真っ先に 体調が悪い 愛犬の元へ。
動物病院に 電話をするも 誰も出ず、 車に乗せ 病院に向うも
道路で 車が折り重なっている 惨憺たる 状況で 断念。
「 大きなカート 」 に 載せて なんとか 病院に たどり着くも、
他のペットと 「 黒い塊 」がいるだけで 医者は おらず…。
結局 家に戻り 看病する事になるが、電気も 水も止まり…というのが 前半の流れ。
徐々に 弱っていく 愛犬を心配する 男の「 心情 」と「 後悔 」、
そんな男を 「 心配し、気を遣う 」 愛犬の姿に グッとくる…のですが、
この男、○○○○○○ なんですよ…。
人間とは 「 単純で 複雑 」。
なのに、ひとつの面 しか 見てない( 見れない )んだよな~。
でも、「 人間を ゴミ 」と言っていた この男 にしても、
「 人は 社会インフラ 」( 獣医、電気・水の管理 運用 ) とは 気づいて
いなかったわけですが…。
「 他者を ないがしろ 」にすれば、
ゆくゆくは それが 「 インフラ ( 社会 )の崩壊 」として 跳ね返ってくるんですね。
( というところは 紛争国の話 「 約束 」で 描かれている…のかな?
今の日本も 少しずつ…な気がしますが )
ちなみに 「 退屈な田舎から 東京へ来た 少女 」の話、「 広い世界 」でも、
少女は 「 人が 娯楽( インフラ )を 支えている 」とは 気づいて
いませんでしたね。
( みんな 「 黒い塊 」になっている 東京は ツマラナイ のだ )
「 愛 」の最後、
男と 愛犬は 「 悲惨な 別れ方 と 死 」を 迎える事に。
その くだりが 「 冷徹な文章 」で 淡々と 綴られている ので、
「 切なさ 」や 「 無力感 」が 強く 湧き上がって来るんですが、
「 ゴミを 踏みつけていた 」 男については それに 「 ふさわしい最後 」でもあり、笑ってしまいましたね。
という事で、
「 シニカル、ブラックな オチ 」が 好きな人は 楽しめる作品 かな?