10月に読んだ本は
本格ミステリー 「 卍の殺人 」 今邑彩
SF 「 失われた過去と未来の犯罪 」 小林泰三
本格ミステリー 「 ネクスト・ギグ 」 鵜林伸也
“密室”・アンソロジー「 鍵のかかった部屋 5つの密室 」
似鳥鶏、 友井羊、 彩瀬まる、 芦沢央、 島田荘司
の 4冊。
最初の2冊から。
「 卍の殺人 」 今邑彩
著者の デビュー作でもある 本格ミステリー作品。
萩原亮子は 恋人の 安東匠 と共に、彼の実家を訪れる。
上から見ると 「 卍 」 の形に見える その家では、
「 安東家 」 と 「 布施家 」 の 二つの家族が 暮らしていたが、
匠の祖母 を頂点に 両家で 競う合うような原理が 働いていた…。
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夜、亮子と 匠は 部屋の窓から 向かいの部屋の窓に 映った
「 男が 女の首を 絞める 」 “影” を目撃するが…。
オーソドックスな 「 本格ミステリー 」設定。
2つの家族 の微妙な関係や、男女の ドロドロな感じは
「 2時間サスペンス・ドラマ 」のようで 古臭かったですね。
まあ、実際 かなり前の作品なので しょうがないんですが。
( ワープロ の 「 パスワード 」 が 「 機密語 」 でした… )
「 犯人 」は 何となく、推測 出来るし、
そこから 「 メイン・トリック 」も 推測は 出来るんですが、
( 似た 感じの作品も あるしね )
以外にも 「 細部 」は わからず…。
でも、それも そのはずで、
“ある部分” が かなり キビしいんですよ。
「 トリック 」や、その 「 見せ方 」( 伏線など )は 良かったのですが、
“ある部分” の せいで 説得力が 激減 しちゃいました…。
と、残念な感じ では ありましたが、それなりに 楽しめた…かな?
「 失われた過去と未来の犯罪 」 小林泰三
ミステリー要素を 期待して 読んだのです、 ほぼ「 SF 」 でした。
身に覚えのない “自分で書いたらしい” パソコンの 文章を 読んだ
結城莉乃。
“それ” が 続いている事から 自分が 「 記憶障害 」に なっていると
考えた 莉乃 は…。
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どこかに 立っている事に 気付いた “わたし” は、
輪郭が はっきりしない 人物に 話しかけ、様々な “物語” を 思い出す。
「 長期記憶 」が できなくなった 人類 が、
取り外し可能な 「 外部記憶装置 」( 半導体メモリ )で 記憶するようになり、
「 記憶障害 」発生後に 生まれた子供は、生まれた時 から
「 外部記憶装置 」で 記憶している という 設定。
2部構成で、第一部 では 本書の 1/3の ページ を使って
「 記憶障害・パニック 」( 「 大忘却 」 ) を描いています。
「 長期記憶 」 が出来ず、「 短期記憶 」も 10分ほどしか 続かない
( 10分後には 全て 忘れる )状態は かなりの 恐怖。
なのですが ちょっとした 笑いも あるのが 著者っぽいですね。
その 「 パニック 」から どうやって 「 持ち直すか 」 が 面白く、
チョット感動的 でも あるんですが、
結城の父 の 「 職場での トラブル 」の展開も かなり スリリングで、
手に汗握りました。
第二部 では、“わたし” が思い出した “物語” が、オムニバス風に
語られます。
面白いのが 「 大忘却後 に 生まれた人 」 に とっては、
「 メモリ 」が “全て” であり、“人格” といえる ところ。
なので 「 メモリ 」を 抜くと、10分後には
「 手続き記憶 」( 体が覚えている 記憶 ) や
「 意味記憶 」( 言語など ) しか 残っていないんですね。
あと、肉体は 死んでも 「 メモリ 」 があれば、それを 他者の体に 入れ、
再生?( 復活?)する事もでき、
その後の “体験” も 当然 その「 メモリ 」に 記憶 されます。
( 短期記憶 が消える前に 他者の「 メモリ 」を 刺すと、記憶が 混ざる )
この 「 メモリ 」 を巡る 「 肉体と 人格 」、「 生 と 死 」の話の中で、
“わたし” は 「 誰か 」 が、浮かび上がってくるんですね。
でも、最初の話が 「 メモリ 」( 人格 )の “入れ替え” に よって起こる
『 君の名は 』 みたいな話で 少々 拍子抜け。
しかし その後の
「 替え玉 受験 」、「 双子に起こった メモリの トラブル 」の “物語” などは、
存在( 実在?)の話 で 哲学的だったし、
「 家族の死と 決断 」の “物語” は 深い愛の話 で、
人間ドラマ としても 面白く、
どれも 何とも言えない結末で 心が グラつきました。
個人的には 「 メモリ を使った “イタコ” 」 の “物語” が
一番 ブラック度 が高く、展開が 最悪( 最高 )で面白かったな。
それらの “物語” から 浮かぶ、「 人格、死、人間 とは 」の考察も
興味 深かったですね。
でも、最後は 規模が 大き過ぎて しっくり こなかったけど…。
「 外部記憶 」 を 簡単に 取り外しできる設定 は 少し 気になりましたが、
「 SF 」としての 完成度は 高く 思えたし、
哲学的な テーマ を 上手く 「 エンタメ 」に 落とし込んでいて 面白く
読めました。