4月 読書 その1 「 砂の女・密会 」 | berobe 映画雑感

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「 映画 」と「 本 」の感想

今月は

 

作品集 『 新潮現代文学33 砂の女・密会 』 安部公房

本格ミステリー 『 ミステリー・アリーナ 』 深水黎一郎

本格ミステリー 『 人間の顔は食べづらい 』 白井智之

 

の 3冊。

 

最初に 安部公房 から。

 

 

「 新潮現代文学33 砂の女・密会 」
安部公房
 

安部公房 の 作品集で 全7編(?)。

 

「 砂の女 」「 密会 」 は 長編。

 

「 デンドロカカリヤ 」「 詩人の生涯 」「 無関係な死 」

短編。

 

「 赤い繭 」 は オムニバス で、

表題作「 洪水 」「 魔法のチョーク 」「 事業 」 の 4話 構成。

 

「 棒になった男 」 も オムニバス で、

第一景 「 鞄 」、 第二景 「 時の崖 」、 第三景 表題作 の 3話 構成。

 

 

初・安部公房 です。

なんとなく 読む “タイミング” が合いました。

 

昔の小説 ですが 思ったより 読みやすく、好みの作品も 結構 ありました。

 

 

 

「 砂の女 」

 

昆虫採集のため砂丘に やってきた が、砂穴で暮らす の家に

泊まり、そのまま 出られなくなる話。

 

64年の 「 映画版 」 は 観てません。

 

普通に 主人公の男 の描写から 始まると 思っていたんですが、

「 男の行方不明 」「 失踪 」 の話 から 始まるんですね。

 

その “冒頭” が 妙な現実味 を 醸し出していたし、

 

最後の “アレ” にも 唐突に 現実に戻された 気持ちに なり、

軽く 恐怖を 感じましたね。

 

( あと、映画 『 人間蒸発 』(67年 今村昌平 監督 ) を思い出した。 あれは “リアル” から “虚構” でしたが )

 

 

体に 砂が 付いたり、食事にも 砂が入る、「 砂穴の暮らし 」 は

イヤだな。 ( 米を ふるいにかけるのが めんどくせ~  )

 

設定上、場面転換は 少ないのですが、

“男” の心情や もがく様子 は 楽しく、退屈は しません。

 

“女”上の男たち に 文句を 言ったところで 反応が薄いし、

何にも ならないのが 虚しいけど、

それでも 強気な “男” の メンタルには 笑ってしまいます。

 

 

そして 砂まみれの 暮らしで、

“男”「 ゴム装着の 強迫観念 」(?) が治った?のも 興味深い

話で、 ( 言えば 配給 してくれそう )

 

この事で “男”“あいつ” との 関係性や、すれ違い が 垣間見え、

“男” の 心境の変化も なんとなく 分かるんですよね。

 

後半の 皆の前で…の くだり、

“男”「 しかし、外に 出たいからなあ… 」 の 呑気なセリフ が、

バカっぽくて 好き だけど、

 

その後 “男”“女” に マウントポジション?で ボコボコに される

のが 可笑しかったな~。

 

 

気になった 「 部落の収入 」 に 納得するも、

次の “女” のセリフ、

「 かまいやしないじゃないですか、そんな 他人のこと なんか

どうだって!」

 

には 痺れましたね。

 

終盤、「 ラジオ 」の くだり では しんみり しましたが、

“女” は 楽しそうだったし、

 

“ささやかな希望” で 終ってもいる ので、読後は 少し 解放感も

あったかな。

 

あと、脱出の 試行錯誤など サスペンス要素 もあり、

特に 後半の展開は かなり スリリング で、意外に エンタメ度は 高め でした。

 

 

砂穴から 抜け出せず、「 ひたすら 砂を掻く 生活 」 は いろいろと

喩えられますが、

 

( 解説から 借りれば “比喩の装置”

 

私が気に なったのは “男” が読む 新聞の

「 東京五輪、予算でもめる 」 の見出で、

 

( 今作の刊行 は 62年、五輪は 64年。 なんか タイムリーだな… )

 

他の見出しも 多分、地方のことは 書いていない ようです。

 

“忘れ去られた部落” と “現実の地方” が なんとなく 似ていて

少し 物悲しさを 覚えるし、

 

「 砂掻き 」 という 非効率な方法?( 一番 安上り らしいが… )が

“無策な地方” を 思わせ、切なく なります。

 

 

あと、ヒドイ のが 序盤の 「 昆虫( 採集 )マニア 」 の くだり。

 

「 熱中するのは 精神の欠落を 示す 証拠 」、「 極端に 排他的 」 や、

 

「 盗癖の所有者、男色家で あったりするのも 偶然ではない 」 と、

 

時代を 感じる 内容ですが 笑っちゃいます。

 

( Eテレ 『 昆虫すごいぜ!』香川照之 を ディスってんのか~!?)

 

 

あと、“男” が捕まえようとしている のは 「 新種のハンミョウ 」

ですが、

( 『 昆虫すごいぜ!』 でも ハンミョウ やってましたね )

 

ハンミョウの幼虫 は 「 穴に潜み エサが 近づくのを待つ 習性 」

なので、

ハンミョウを 捕まえに 行った “男” が、穴の中に 捕ら( 囚 )われる

という、展開は かなり 皮肉なんだよな~。

 

 

内容としては 思ったより 不条理は 感じなかったかな。

 

難解でも ありますが、特に 気にせず

そのまま 「 脱出 エンタメ 」 として 楽しく 読み( 読め )ました。

 

 

 

「 密会 」

 

朝早く 救急車で運ばれた “妻” が そのまま 病院で 行方不明に

なり、“男”( 夫 )が 妻捜しに 奔走する話。

 

 

「 妻の失踪 」、「 盗聴組織 」、「 囚われの少女 」、 「 “馬”の企み 」 と、

サスペンス・ミステリー要素 が 盛りだくさん で、

 

『 砂の女 』 より こっちの方が好み…かな。

 

「 毎日 手淫男 」 も 出てくるし、「 オルガスム・コンクール 」

あるけど… )

 

あと、“男”「 自身が 盗聴された録音テープ 」 を 聞いて 出来事を

思い出し、

それを 「 ノートに 書き写す 」 理不尽な作業 も 好きだし、

 

「 妻捜し 」全然進まない ヤキモキ感 が また イイんだな~。

 

 

あと、意味深な 「 馬の絵 」 や、冒頭、良く分からなかった “馬” の描写も、後から わかり 驚愕しましたね。

 

 

「 盗聴 」 の そもそもの目的は 良いとして(?)、

 

そこから 手段が 目的化し、ビジネス になり、

さらに 拡大、システム化 する 設定も 面白い。

 

 

『 砂の女 』囚われた“男” は それを 受け入れ( 諦め?)、

希望が 生まれましたが、

 

今作の 「 巨大な病院 」 に 囚われた “男” は、

果敢に 「 脱出 と 救出 」 を 試みたのに 病院に 取り込まれ、

 

絶望を味わう のが 悲しく 切ないんですよね。

 

( でも、患者でもなく、医者でもない “男” にとっては、あの結末は

必然 だったのかも?)

 

 

今作も 難解でしたが、エロが 多めで、SF要素?もあったので

 

普通に エンタメ作品( 「 不条理サスペンス 」、「 素人探偵モノ」 )

として 楽しめました。

 

 

 

「 無関係の死 」

 

“男” が アパートに 帰ると 見知らぬ男 が死んでいたという話。

 

混乱と 驚愕、警察に 疑われるのを危惧した “男” が、

隠蔽( 他者に 死体を 押し付け )を 企む 展開なんですが、

 

ミステリー的な 視点 ( 死斑、犯人の意図 )も 盛り込んでいて、

個人的には かなり 楽しい作品 でした。

 

 

 

「 魔法のチョーク 」

 

貧乏画家の アルゴン君 が チョークで 部屋の壁に 絵を描くと

それらが “具現化” する、ファンタジーな話。

 

“具現化した物” は “日の光” を 浴びると 消える( 壁 に戻る )ので、アルゴン君は 上手い事やろうと するんですが、

 

かなり スケールの デカい話 に なるのが 面白い。

 

他の作品でも 垣間見られる?女性への不信感 が 今作では

顕著に 出てましたね。

 

そして 切なくも 愉快な オチが 素晴らしい。

 

 

 

「 洪水 」

 

労働者「 液体人間 」に なり、人類が絶滅する 話。

 

対策を練るも、その 従事者( 労働者 )も 次々“液体化” し、

労働者不足 に なるのが 暗示的 で、

 

最後、ノア方舟ごと 洪水に 飲み込まれる のが 可笑しい。

 

 

「 鞄 」( 女友達 ) 2人 による、

女の夫 「 “物音を出す” 鞄 」 を巡る 対話劇 で、舞台の台本 の

ように 書かれています。

 

“女性2人の掛け合い” と、シンプル な構成 なんですが、

 

“鞄”「 開けるのか開けないのか 」 の やりとりは 緊張感 が

あったし、

男が演じる “鞄” の 出す音 = “脈絡のない言葉の連なり”

不気味で 面白かったですね。